渡辺、盤石の強さで3連覇 第80期名人戦七番勝負を振り返る

渡辺、盤石の強さで3連覇 第80期名人戦七番勝負を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2022年06月06日

 渡辺明名人に斎藤慎太郎八段が挑戦した第80期名人戦七番勝負。前期と同一カードで、斎藤は2期連続でA級順位戦を8勝1敗と安定した強さで大舞台に戻ってきた。

第80期名人戦七番勝負第1局

 第1局は東京都文京区「ホテル椿山荘東京」にて。先手となった渡辺の矢倉に後手の斎藤は急戦模様。途中、渡辺が香損を受け入れたのが意表の構想で、徐々にペースをつかんでいく。

【第1図は△3七角成まで】

 第1図は玉の安定度に差があり、手番を持つ先手が優勢だ。▲8二銀が決め手。飛車を逃げれば▲7三銀成△同馬▲6五桂がある。実戦は△8二同飛だが、▲7一角△4三玉▲8二角成△7六歩▲7一馬と飛車を奪いながらの攻めが厳しい。快勝で渡辺が好スタート。

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写真:中野伴水

第80期名人戦七番勝負第2局

 第2局は石川県金沢市「金沢犀川温泉 川端の湯宿 滝亭」にて。角換わりから先手の斎藤は早繰り銀、後手の渡辺は腰掛け銀でじっくり迎え撃つ展開となった。

【第2図は▲8六金まで】

 包囲網を築いて後は後手がどう仕上げるかの局面。実戦は△7三桂▲7四銀△5六桂打▲6七玉△4八桂成▲同銀△7七歩成▲同玉△8五桂まで、桂を乱舞させて先手を投了に追い込んだ。渡辺が2連勝。

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写真:生姜

第80期名人戦七番勝負第3局

 第3局は福岡県福岡市「アゴ-ラ福岡山の上ホテル&スパ」にて。角換わりから後手が飛車先を受けない展開で大乱戦となった。手将棋から先手が優位に立っていたが、斎藤の粘り強い指し回しでいつしか形勢は逆転。

【第3図は▲6三飛成まで】

 △5二銀が先手の攻めを防ぐ冷静な一手。以下▲6六竜△4六馬▲5八銀△5四桂で銀を一枚使っても厳しい攻めが続く。後手は攻めに専念できる形で以下は押し切り、斎藤がシリーズ初勝利をあげた。

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写真:金子光徳

第80期名人戦七番勝負第4局

 第4局は山口県山口市「名勝 山水園」にて。相掛かりからじっくりとした展開になるが、第1局に続き渡辺が香損を受け入れる驚きの構想を見せる。

【第4図は▲3八同金まで】

 6三玉が妙に寄せづらく、後手が攻勢を取っている。△4六銀打が俗手ながら確実な寄せ。▲同銀△同金で先手玉に迫っていき、▲7八玉に△5九角と先手玉を追い詰めていく。以下先手も反撃に出たが届かず、渡辺が3勝目。

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写真:夏芽

第80期名人戦七番勝負第5局

 第5局は岡山県倉敷市「倉敷芸文館」にて。角換わりから相早繰り銀となり、後手の斎藤がじっくりと受け止める展開となった。

【第5図は△6九とまで】

 後手のと金が迫っているが、先手はどういった方針で指すか。実戦は▲8二角成△7九とに▲7五歩と玉を広くしたのが好手順。△7八とに▲7六玉と立って、先手玉には詰めろが掛かりにくい格好となった。以下は自玉の余裕を生かし、先手が寄せ切った。

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写真:潤

 渡辺は2期連続の4勝1敗で斎藤を退けた。シリーズを通じて安定した戦いぶりを見せた。今年初めの王将こそ失ったものの、棋王、名人では盤石の強さで防衛を果たした。来期のA級順位戦を勝ち抜き、挑戦権を得るのは果たして誰になるだろうか。

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渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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