里見、最強の挑戦者を退ける

　里見香奈女流王位に西山朋佳女流二冠が挑戦した第33期女流王位戦五番勝負。両者は並行して第15期マイナビ女子オープン五番勝負でも戦っており、そちらは挑戦と防衛が逆の立場だった。タイトル戦ではおなじみのカードだが、西山は女流王位戦には初参加のため、当然本棋戦では初対戦となる。

第33期女流王位戦五番勝負第1局

　第１局は恒例となっている兵庫県姫路市「夢乃井」にて。西山が先手で相振り飛車からじっくりとした展開になる。力のこもったねじり合いが続き、200手を超えても形勢の難しい大熱戦となった。

【第１図は△４四歩まで】

　難解なねじり合いが続く第１図。▲３七玉が入玉を目指す粘り強い一手。以下△２四桂に▲３六桂と合わせ、△１六歩▲２四桂△１七歩成▲３六玉△２七と▲３四歩と進む。形勢はまだまだ難しいが、以下は先手玉が捕まらない形となり、後手の投了となった。大熱戦を制し西山が先勝。

写真：夏芽

第33期女流王位戦五番勝負第2局

　第２局は北海道札幌市「京王プラザホテル札幌」にて。先後を入れ替えて相振り飛車に。

【第２図は△８七歩成まで】

　またも西山が入玉を目指す展開になったが、今度は後手の飛車の位置が悪い。▲７六歩△同銀▲７五歩が厳しい攻め。△同玉は▲４二角が王手飛車になる。実戦は△７五同金としたが、やはり▲４二角とし、△３二飛▲５一角成△３五飛に▲８一飛が厳しく、後手玉は逃げ切れない。的確な寄せを見せた里見が１勝１敗とする。

写真：牛蒡

第33期女流王位戦五番勝負第3局

　第３局は福岡県飯塚市「旧伊藤伝右衛門邸」にて。相振り飛車の出だしだったが、駆け引きの末に後手の里見が居飛車のまま戦う。先手は壁銀が響き、早い動きで後手が形勢をリードする。

【第３図は▲４七金まで】

　第３図は後手が勝勢で後はどう決めるかという局面。△３三玉が激辛の仕上げで、▲１四銀不成△３一角▲２五銀△２四歩▲３六銀と銀を追い返してから△８六歩で安全勝ちとなった。里見が快勝で２勝１敗とリード。

写真：生姜

第33期女流王位戦五番勝負第4局

　第４局は徳島県徳島市「ＪＲホテルクレメント徳島」にて。相振り飛車から後手の西山が強気な動きを見せるが、落ち着いて対応した里見が徐々に形勢をリードしていく。

【第４図は△９二歩まで】

　端の取り込みに△９二歩と受けたところ。先手の勝ち方は色々あるが、▲４六竜がさわやかな決め手。△同角の一手に▲９三角と放り込み、△同桂▲同歩成△同歩▲同香成△同香▲９四桂△同香▲９三銀まで後手投了。以下は△同玉に▲８五桂と打ち、金２枚で並べ詰みだ。

　大熱戦となった第１局を落とした里見だが、第２局以降は指し回しが冴えわたり３連勝。女流王位戦五番勝負では初となった頂上決戦を制した。女流王位は通算８期目、タイトル通算は48期目とさらに記録を伸ばした。

写真：文

注目対局プレイバック

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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