西山、初代永世女王に

西山、初代永世女王に

ライター: 渡部壮大  更新: 2022年06月17日

 西山朋佳女王に里見香奈女流四冠が挑戦した第15期マイナビ女子オープン五番勝負。両者は並行して第33期女流王位戦五番勝負でも戦っており、そちらとは挑戦と防衛が逆の立場となるダブルタイトル戦だ。4連覇中の西山にはマイナビでは初となる永世称号の掛かるシリーズとなる。

第15期マイナビ女子オープン五番勝負第1局

 第1局は神奈川県秦野市「元湯 陣屋」にて。相振り飛車の出だしだったが、里見が中飛車から居飛車に戻す展開に。

【第1図は△5九同馬まで】

 大きな駒得で先手勝勢だ。受けに回っても勝ちだが、実戦は▲6六桂△7三銀▲8五桂と最短の勝ちを目指した。実戦は△5七角と形を作ったが、▲7三桂成以下豊富な持駒を生かして即詰みに打ち取った。

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写真:八雲

第15期マイナビ女子オープン五番勝負第2局

 第2局は山梨県甲府市「常磐ホテル」にて。相振り飛車から後手の里見が玉も囲わず早々と端で動いていった。

【第2図は△5二同金上まで】

 ここは後手の猛攻をしのぎ先手が優位に立っている。▲3七銀が壁銀を解消する落ち着いた一手。△4七銀に▲5四桂△5八歩成▲3九玉△6四歩▲8二飛と寄せに出て、先手が押し切った。これで1勝1敗に。

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写真:玉響

第15期マイナビ女子オープン五番勝負第3局

 第3局は神奈川県藤沢市「時宗総本山 遊行寺」にて。相振り飛車となるが、西山の陣形が悪いのを見て、里見が機敏に動く展開となった。

【第3図は△3四飛まで】

 ▲2六歩が積極的な仕掛け。△同歩▲同飛△2四歩▲7九角△4五歩▲2五歩と動いていく。後手は8二の銀が壁で、強く戦えない形なのが痛い。以下も熱戦が続いたが、最後まで後手は壁銀がたたる展開で先手が制した。

第15期マイナビ女子オープン五番勝負第4局

 第4局は東京都渋谷区「将棋会館」にて。相振り飛車から後手の里見が動く展開になったが攻め切れず、先手にも反撃のターンが回った。

【第4図は△2六銀まで】

 次に△3六桂のような手が回ると大変だが、この瞬間は先手の手番。▲2二歩△同飛▲3一角△3二飛に▲6四桂が好手で、△同歩▲同角成と上から押さえる形を実現して寄り筋となった。

 これで2勝2敗となり、決着はフルセットへ。

第15期マイナビ女子オープン五番勝負第5局

 第5局は東京都渋谷区「将棋会館」にて。振り駒で先手となったのは里見。角交換型の相振り飛車から互いに自陣角を打ち合う展開となったが、小ビンから手を作った西山が優位に立つ。

【第5図は▲6六角まで】

 ここで△7八銀が先手の攻め駒を責める好手だった。飛車を逃げれば△6七銀成で角を追えば良い。実戦は▲9二歩と端に勝負を掛けてきたが、△同香▲9三歩△同香▲同桂成△同桂と丁寧に対応し、▲9五香のタイミングで△8九銀不成と飛車を取った。先手陣は4筋がキズになっているため、後手はいつでも攻め合いに転じることができるのが大きい。以下は確実に攻めて、後手が競り勝った。

 フルセットの激戦を制した西山は5期目の女王を獲得し、初代永世女王の資格を得た。昨秋から女流王将戦、女流王座戦、女流王位戦と立て続けに里見に敗れていた借りも返したこととなる。西山が二冠を守ったことにより、女流棋界の戦国時代は続きそうだ。

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写真:銀杏

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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