チーム豊島VSチーム広瀬 第5回ABEMAトーナメント~予選Cリーグ第一試合振り返り~

チーム豊島VSチーム広瀬 第5回ABEMAトーナメント~予選Cリーグ第一試合振り返り~

ライター: 紋蛇  更新: 2022年06月01日

 5月28日(土)に放映された第5回ABEMAトーナメント予選Cリーグ、チーム豊島「TMF」(豊島将之九段・丸山忠久九段・深浦康市九段)とチーム広瀬「国士無双」(広瀬章人八段・青嶋未来六段・三枚堂達也七段)の戦いを振り返る。まずは第6局までの結果を見てみよう。

第1局 豊島●-〇三枚堂(第1局はチーム広瀬が先手番。以下は交互)
第2局 深浦〇-●三枚堂
第3局 丸山●-〇青嶋
第4局 豊島〇-●広瀬
第5局 深浦〇-●三枚堂
第6局 深浦●-〇青嶋

 三枚堂がリーダーを破ってよいスタートを切るも、第2局で深浦が止めて指し分けに戻す。第6局まで一進一退の戦いが続き、3勝3敗で第7局を迎えた。

【第7局▲広瀬章人八段-△丸山忠久九段戦】

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 第7局で残る出場回数は、チーム豊島が豊島1回・丸山2回、チーム広瀬が広瀬2回・青嶋1回。連投を避けるためにも、第7局に丸山と広瀬が出場したのは自然なオーダーだった。両者は昨年のABEMAトーナメントでチームを組んだこともあり、対局前のインタビューに広瀬は「やりにくさはありますけど、いま3勝3敗でこちらも後半のラストスパートなので、何とか星をリードできるように頑張りたいと思います」と語った。

 丸山の後手番で、広瀬いわく「(採用の予想が)9割9分9厘」の一手損角換わりに進む。丸山が手慣れた指し回しで模様を整え、攻めの糸口をつかんで猛攻をかけた。フィッシャールールで主導権を握られては広瀬が押されて苦しいように見えたが、丁寧な受けで焦る様子がない。囲いの金銀が次々にはがされても、紙一重の玉さばきでしのいだ。

【第1図は△6八竜まで】

 第1図は最終盤。後手玉に必至がかかっており、先手玉が詰むか否かの勝負だ。実戦は▲6七金△7七飛成▲5五玉△5七竜▲同金△同竜▲6五玉までで先手勝ち。以下△6七竜は▲7四玉、△6四金は▲8六玉△7五歩▲8六玉で詰まない。
 先手玉には頓死筋がたくさんあった。まず、1図で▲6七歩は△7七飛成▲5五玉△5七竜▲5六銀(代えて▲5六歩は△5四歩▲6五玉△6七竜左で詰み。▲5六銀なら最後の竜寄りを消せる)△7五竜▲6五金で、以下△5四歩の打ち歩詰めで逃れているように見えるが、△5四銀!▲同玉△5六竜から詰んでしまう。この変化を切り抜けるために1図で▲6七金が正解で、後の△5七竜に▲同金と取ることができた。これも金を渡してもひとめは怖いものの、最後に▲6五玉とかわして大丈夫と見きっている。

 中盤から防戦に追い込まれたにもかかわらず、的確にしのいで最終盤も集中力を切らさなかったのが光る。各チームの控室でも「こっちが心臓止まるかと思ったよ」(三枚堂)、「すごいですねぇ」(豊島)と絶賛されていた。

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終局直後、チーム広瀬の控室。リーダーの指し回しに「いやー」「すごい」とため息が漏れた

【第8局▲豊島将之九段-△青嶋未来六段】

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 チーム広瀬がリーチをかけ、第8局は豊島と青嶋の戦い。青嶋は三間飛車から振り飛車ミレニアム(8一玉型)と得意戦法を採用した。中盤は居飛車穴熊に組んだ豊島ペースだったが、青嶋が角を見捨てて端を攻める勝負手を放ち、うまく食いついた。

【第2図は▲7五竜まで】

 第2図で、後手の持ち駒に金があれば△8九金までの詰み。それを実現させるために△6九竜が考えられるが、▲6七金右△7八竜▲同銀でうまくいかない。実戦の△7七歩▲同角△6九竜がうまい継続手だった。以下▲6七金右は△同竜と取れるのが6八にいた角を7七におびき寄せた効果で、▲同金に△8九金の詰み。実戦は△6九竜に▲5七金と辛抱したが、後手の竜が先手玉に近づいたのに対し、先手は金が離れてつらい。青嶋は▲5七金に△8五桂打▲9三歩△7七桂不成▲同金△6八角と攻めて、豊島を投了に追い込んだ。△6八角は△7九竜▲同銀△7七角成からの詰めろで、先手は受けがない。

 勝利投手となった青嶋はこの日3連勝で、「やっぱりリーダーを倒して、期待以上の結果になったんで、『やりました!』みたいな感じですね、いまは」と会心の笑みを浮かべた。

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3連勝と大活躍した青嶋六段

【総合成績】
第1局 豊島●-〇三枚堂
第2局 深浦〇-●三枚堂
第3局 丸山●-〇青嶋
第4局 豊島〇-●広瀬
第5局 深浦〇-●三枚堂
第6局 深浦●-〇青嶋
第7局 丸山●-〇広瀬
第8局 豊島●-〇青嶋
総合   3勝-5勝

【個人成績】
豊島九段  1勝2敗
丸山九段  0勝2敗
深浦九段  2勝1敗
広瀬八段  1勝1敗
三枚堂七段 1勝2敗
青嶋六段  3勝0敗

ABEMAトーナメント

紋蛇

ライター紋蛇

2012年より、ネット中継に携わる。担当局で一番長い中継が2013年3月の第71期順位戦C級1組の森けい二九段-近藤正和六段戦で、持将棋の末指し直しとなり、終局時刻は翌日の朝5時40分。「中継は体力だ」と痛感している。

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