チーム糸谷VSチーム菅井 第5回ABEMAトーナメント~予選Bリーグ第二試合振り返り~

チーム糸谷VSチーム菅井 第5回ABEMAトーナメント~予選Bリーグ第二試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2022年05月19日

  5月14日(土)に放映された第5回ABEMAトーナメント予選Bリーグ第二試合、チーム糸谷「乾坤一擲」(糸谷哲郎八段、黒沢怜生六段、西田拓也五段)対チーム菅井「真・振り飛車」(菅井竜也八段、久保利明九段、佐藤和俊七段)戦の模様をお伝えする。

【第1局▲西田拓也五段-△佐藤和俊七段】

  チーム菅井はその名の通り振り飛車党がそろったメンバーだが、チーム糸谷も黒沢六段と西田五段が振り飛車党。相振り飛車か、それとも敢えて居飛車を持っての対抗形か。お互いの意地が掛かる熱戦が期待された。

【第1図は▲8一角成まで】

  第1局は振り駒の結果、チーム糸谷の先手番に。対戦カードは西田―佐藤で、期待にたがわず相振り飛車となった。終盤の第1図、ここで佐藤は△4九銀の割打ちを決行。対して▲5九飛が馬当たりだが、△3八銀成▲同玉△7七馬と飛車に当て返すことができる。以下▲6九飛△5六銀▲同歩△7八馬▲3九飛△5六馬と進んで、後手優勢となった。次の△4六桂が厳しく、また後手玉は2二の飛車がよく守備に利いている。フィッシャールール初出場の佐藤が、幸先の良い白星を上げた。

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【第5局▲西田拓也五段-△久保利明九段】

 第2局は向かい飛車に振った黒沢が久保を破りタイに戻す。第3局はリーダー対決となったが、三間飛車に振った菅井が勝利。第4局は再度後手番で向かい飛車に振った黒沢が佐藤を破った。第5局は西田―久保戦で、第1局と同じく西田は初手に▲7八飛と振る。対して久保は第2局と同じく、居飛車で対抗形に臨んだ。

【第2図は△7五馬まで】

 第2図はその中盤。解説の伊藤真吾六段が「ここで▲6六金打をやっちゃいますか」と言ったタイミングでその金が打たれる。これで先手陣はまさに金城湯池の要塞となった。後手から迫る手段が全くない。そして次の△7四馬が久保らしからぬミスで、▲同竜△同歩に▲6四馬と香をポロっと取られてしまった。作戦部屋の糸谷八段は「これで負けることはない」とチームメイトの勝ちを確信した。この西田の勝利で、Bリーグ予選第二試合はここまで第1局の相振り飛車を含めて、振り飛車の全勝だ。

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 星1つの先行を許したチーム菅井は、第6局で菅井が居飛車穴熊で黒沢の三間飛車を粉砕し、タイに戻す。第7局は久保の三間飛車対、糸谷の銀冠。終盤で久保の粘りを振り切った糸谷が勝利。これでチーム糸谷の予選通過が確定した。

【第8局▲西田拓也五段-△菅井竜也八段】

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 第8局は西田―菅井。▲7六歩△3四歩にいきなり▲2二角成の角交換と、菅井は意表の作戦を採る。西田が得意とするノーマル三間飛車を封じる狙いだ。以下は西田の向かい飛車で、玉形は菅井の銀冠対、西田の高美濃となった。第3図は最終盤、この▲6一桂成に△同金は▲同飛成が詰めろで後手の負けになるが、この瞬間の後手玉は詰めろではない。西田は△7七銀と踏み込んだ。以下▲9七玉△8八銀打▲同金△同銀不成▲同玉△7七金▲9七玉△6九馬で後手の勝ちが決まった。先手玉は受けなしである。

【第3図は▲6一桂成まで】

 チーム糸谷は第一試合に続き、5勝3敗の好成績で、トータルの得失点差を+4とし、予選Bリーグの1位通過を決めた。残る1枠はチーム斎藤対、チーム菅井の直接対決である。

5月21日放映の予選Bリーグ第三試合をどうぞお楽しみに。

【総合成績】
第1局 西田●-○佐藤(第1局はチーム糸谷が先手番。以下は交互)
第2局 黒沢○-●久保
第3局 糸谷●-○菅井
第4局 黒沢○-●佐藤
第5局 西田○-●久保
第6局 黒沢●-○菅井
第7局 糸谷〇-●久保
第8局 西田○―●菅井
総合 5勝 ― 3勝

【個人成績】
糸谷八段 1-1
黒沢六段 2-1
西田五段 2-1
菅井八段 2-1
久保九段 0-3
佐藤七段 1-1

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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