史上最年少五冠誕生 2月上旬の注目対局を格言で振り返る

史上最年少五冠誕生 2月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2022年02月18日

 四冠対三冠の対決で注目を集めた王将戦七番勝負は、藤井聡太竜王の終盤力が光って4連勝。史上4人目にして初の10代五冠達成となりました。また、名人戦は2年連続で斎藤慎太郎八段が挑戦権を獲得しています。

第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第4局

【第1図は▲2九飛まで】

 第1図は第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第4局(▲渡辺明王将△藤井聡太竜王)。先手が抜け出した終盤戦です。△3八馬は▲2三飛成で、△3七馬と桂を取っても寄せが遠のきます。「終盤は駒の損得より速度」で、△5八馬と切りました。▲同玉に△3六歩が厳しい攻めで、後手の一手勝ちコースです。最後は激辛で仕上げて、挑戦者が4連勝で王将を獲得しました。

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写真:中野伴水

第47期棋王戦五番勝負第1局

【第2図は▲8四馬まで】

 第2図は第47期棋王戦五番勝負第1局(▲永瀬拓矢王座△渡辺明棋王)。後手が攻勢を取り、先手は入玉含みの粘りを見せています。後手は入玉の阻止が最優先です。図から△9四銀▲6三玉△6一金が「玉は包むように寄せよ」で、先手の入玉を防げました。以下▲6二とに△8五成桂が厳しく、先手玉は逃げ切れません。

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写真:牛蒡

第48期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第3局

【第3図は▲1二竜まで】

 第3図は第48期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第3局(▲伊藤沙恵女流三段△里見香奈女流名人)。先手の居飛車穴熊に対し、後手が向かい飛車から速攻を仕掛けてペースをつかみました。△8五桂▲6七金△6四香が「要の金を狙え」の攻めで、金をはがせば先手の穴熊を寄せるのは容易になります。以下は穴熊に食いついて寄せ切り、1勝を返しました。

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写真:紋蛇

第80期順位戦A級8回戦

【第4図は△7一飛まで】

 第4図は第80期順位戦A級8回戦(▲斎藤慎太郎八段△豊島将之九段)。全勝で挑戦を目指す斎藤慎太郎八段。ここで▲7三歩が「大駒は近付けて受けよ」の手筋。△同飛▲8七銀△6八角成▲同玉△7七歩成▲同桂△6六銀▲7六歩△8六歩と進み激戦が続きます。飛車を7三に呼んだ効果は△6六銀で△7六歩なら▲8五桂が飛車に当たる意味です。以下も熱戦となりましたが、最後は斎藤八段が競り勝って8連勝で2年連続の名人挑戦を決めました。

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写真:名人戦棋譜速報

【第5図は▲6三桂まで】

 第5図は順位戦A級8回戦(▲羽生善治九段△永瀬拓矢王座)。残留争いの大一番です。1手争いの終盤戦ですが、△8六歩が速度を見切った「と金の遅早」でした。以下▲2四歩△8七歩成▲5一桂成△同金▲6三桂に△3一玉が手筋の早逃げで、後手勝勢です。羽生九段は本局の敗戦により、A級陥落が決まりました。

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写真:名人戦棋譜速報

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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