13連覇か悲願の初タイトルか 第48期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負展望

13連覇か悲願の初タイトルか 第48期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負展望

ライター: 生姜  更新: 2022年01月14日

 いよいよ今月16日(日)に第48期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負が開幕します。里見香奈女流名人に挑戦するのは伊藤沙恵女流三段。女流名人リーグを8勝1敗で駆け上がりました。第1局の舞台は神奈川県足柄下郡箱根町「岡田美術館」。第42期(2015年度)から続くおなじみの対局場です。今回は五番勝負について展望してみたいと思います。

大活躍の絶対王者

 まずは、里見女流名人について。今年度はタイトル戦に6度目の出場。2021年は彼女を中心に回っていたといっても過言ではないでしょう。

2021年
4月~6月 女流王位戦 対山根ことみ女流二段 3勝0敗 防衛
9月~11月 大成建設杯清麗戦 対加藤桃子女流三段(当時) 2勝3敗 失冠
10月~11月 霧島酒造杯女流王将戦 対西山朋佳女流王将 2勝1敗 奪取
10月~12月 リコー杯女流王座戦 対西山朋佳女流王座 3勝0敗 奪取 
11月 大山名人杯倉敷藤花戦 対加藤桃子清麗 2勝1敗 防衛
 今年度タイトル戦5回の戦績は4勝1敗です。多忙なスケジュールで体調管理などの心配もありましたが、しっかりと結果を残しています。

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写真:日本将棋連盟

連覇記録はどこまで伸びるか

 里見女流名人は現在女流名人位12連覇中です。女流棋界では連覇の最高記録を更新中。その中には伊藤女流三段を破った2期も含まれています。女流名人戦においては向かうところ敵なしという状態です。連覇では羽生善治九段の王座戦19連覇(1992~2010)が最高記録ですが、いよいよその記録も視野に入ってきたでしょうか。前人未到の20連覇に現在最も近いのが里見女流名人です。

初のタイトル奪取を狙う挑戦者

 挑戦者の伊藤女流三段は今年度2回目のタイトル戦出場です。今回で通算9回目となりますが、まだタイトル獲得はありません。ファンの期待も一層高まっていることと思います。最近では加藤桃子清麗の活躍や若手の台頭も目立っており、打倒里見勢の顔ぶれも増えています。クールな伊藤女流三段ですが、今回の女流名人戦には相当期するものがあるに違いないでしょう。

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写真:日本将棋連盟

注目の戦型予想

 戦型を予想してみます。まずは里見女流名人の振り飛車が濃厚です。対して伊藤女流三段がどう迎え撃つか。伊藤女流三段は相居飛車と相振り飛車を中心に指すタイプですが、里見女流名人との過去の対局では対抗形の将棋も指しています。過去には駆け引きの末に相居飛車の力戦形になった将棋もありました。振り飛車が濃厚と書きましたが、里見女流名人も居飛車を採用することはあります。
 ......ずっこけてしまわれそうですが、戦型は予想がつきません。

カギは端歩にあり

 そんな中、ひとつ注目の要素がありました。それは端歩です。

【第1図は△9四歩まで】

 2018年に行われた第44期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第2局の将棋を紹介します。普通はここまで早く端歩を突き合わないのですが、飛車を振るかどうかを探っている深い意味があります。両者ともどちらも指せるので、よりよい条件になるほうを選ぶ高度な作戦です。ちなみに上記の将棋は先手三間飛車、後手居飛車の対抗形になりましたが、2020年度の他棋戦の将棋では、その出だしから相居飛車になっています。
 今シリーズでも、端歩の関係から相居飛車の矢倉や雁木の力戦形もあるかもしれません。現代将棋は日々変化していますし、その波に乗ってニュースタイルを披露する可能性もあるのではないでしょうか。いずれにせよ総力戦は間違いないでしょう。

両者とも応援

 8つのタイトルのうち5つを手にしている里見女流名人が防衛を果たすか、それとも伊藤女流三段が初のタイトル獲得なるか。前者なら再び里見時代の到来、後者なら二強時代の終焉、戦国時代の到来を予感させますね。両者とも負けてほしくない大一番。どのような結末が待っているでしょうか。

生姜

ライター生姜

1993年生まれ。将棋連盟モバイルを中心に活動する中継記者。2018年現在は最年少の記者。棋士の食事注文に肉生姜焼き定食があると反応する。

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