ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2022年01月18日
里見香奈女流五冠と加藤桃子女流三段が激突した清麗戦五番勝負、倉敷藤花戦三番勝負はともにフルセットとなり、清麗は挑戦者が奪取、倉敷藤花は防衛となりました。王将戦挑戦者決定リーグは5勝1敗で藤井聡太竜王が挑戦権を獲得しています。
【第1図は▲7七歩まで】
第1図は第3期大成建設杯清麗戦五番勝負第5局(▲里見香奈清麗△加藤桃子女流三段)。先手が積極的に動いているところです。△6四銀が「桂頭の銀定跡なり」の受けで、5三の地点を補強しながら桂取りを見せています。実戦は▲6四同角△同飛▲5三桂成に△5八歩▲同飛△5七歩▲同飛△3五角と切り返し、難解な戦いです。この後に駒得となった後手が形勢をリードし、3勝2敗で挑戦者が清麗を奪取しています。
写真:日本将棋連盟
【第2図は▲2一竜まで】
第2図は第29期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負第3局(▲加藤桃子清麗△里見香奈倉敷藤花)。1勝1敗で迎えた第3局。△5二金引が「金は引く手に好手あり」の崩れない受けです。▲6二銀を打たせなければ後手陣は耐久力があります。実戦は▲5五角△6四歩▲同歩△5四銀と先手の攻めに対応して、難しい形勢が続きました。最後は玉の堅さを生かした食いつきに成功し、振り飛車が制しています。
写真:日本将棋連盟
【第3図は▲2三飛成まで】
第3図は第42回将棋日本シリーズ決勝(▲豊島将之JT杯覇者△藤井聡太竜王)。激しい攻め合いの終盤戦。△7七歩が「要の金を狙え」の反撃で、▲同金なら△7九角や△8五桂で攻めが加速します。実戦は自玉の安全度を読み切って▲3二金△5一玉▲3三竜と踏み込んだのが好手で、△7八歩成に▲同玉と取って先手玉は際どく詰まず、勝ちになっています。タイトル戦での連敗が続いた豊島JT杯覇者ですが、ここは一つ借りを返しました。
写真提供:将棋日本シリーズ総合事務局
【第4図は△7六歩まで】
第4図は第71期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ(▲藤井聡太竜王△近藤誠也七段)。4連勝の藤井竜王と3勝1敗の近藤七段の大一番です。▲1一角成と取れば駒得ですが、そんな局面ではありません。▲3三角成△同桂▲2三飛成が「終盤は駒の損得より速度」で、飛車を成り込めば居玉の後手は粘るのが難しい格好になっています。以下は押し切って、5連勝と星を伸ばした藤井竜王が最終戦を待たずに渡辺明王将への挑戦権を獲得しました。
写真:日本将棋連盟
【第5図は△4四角まで】
第5図は第48期岡田美術館杯女流名人戦女流名人リーグ(▲伊藤沙恵女流三段△香川愛生女流四段)。飛車を先着している先手がリードしている終盤戦ですが、▲8一飛成では後手玉への響きがなく大変です。▲9七角が「遠見の角に好手あり」でした。狙いはシンプルな▲4二角成ですが、受け方によっては▲6五桂の応援が利くので対応が難しいのです。実戦は△3一銀打と埋めましたが▲4一金と単純に攻めて受けがありません。伊藤女流三段が8勝1敗で里見女流名人への挑戦権を獲得しました。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段