9月上旬の注目対局を格言で振り返る

9月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年12月03日

フルセットとなった叡王戦五番勝負は藤井王位・棋聖が制し、三冠へ躍進。両者はさらに竜王戦七番勝負でも激突します。そして秋は女流棋士のタイトル戦が続きます。

第6期叡王戦五番勝負第5局

【第1図は△7二玉まで】

第1図は第6期叡王戦五番勝負第5局(▲藤井聡太王位・棋聖△豊島将之叡王)。相掛かりから迎えた終盤戦です。どこに目を向けるか難しい局面ですが、▲9七桂が「遊び駒は活用せよ」の一手。△3六歩▲8五桂△3七歩成と攻め合いましたが、▲6二金が厳しく先手の一手勝ちです。銀を取った8五の桂が7三、9三をふさいで後手玉を寄せるのに役立っています。挑戦者がフルセットの激闘を制し、史上最年少の三冠を達成しました。

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写真:日本将棋連盟

第69期王座戦五番勝負第1局

【第2図は▲9五金まで】

第2図は第69期王座戦五番勝負第1局(▲永瀬拓矢王座△木村一基九段)。先手が押している将棋でしたが、後手も勝負手を連発して食らいつきます。ここで△9九角が「玉は下段に落とせ」の必殺手。▲8七玉△6六角成▲8六玉は△6四桂で逃げ切れません。実戦は仕方なく▲9九同玉ですが、△9七歩成▲同桂△7七角▲8八香△9五角成で、はっきり後手が優位に立ちました。先手としては少し前に▲7七玉と上がれば「中段玉寄せにくし」で長い勝負が続いていました。

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写真:日本将棋連盟

第69期王座戦五番勝負第2局

【第3図は▲7四歩まで】

第3図は第69期王座戦五番勝負第2局(▲木村九段△永瀬王座)。相掛かりから難解な戦いが続いています。先手は角筋を通して▲5一角成を狙っていますが、△4二玉が「玉の早逃げ八手の得」です。▲7三歩成に△3四歩▲7二と△3三玉とさらに逃げ越して後手玉は簡単には捕まりません。粘り強い指し回しを見せた後手が制し、1勝1敗になりました。

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写真:日本将棋連盟

第1期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第1局

【第4図は△3一金打まで】

第4図は第1期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第1局(▲西山朋佳女流三冠△渡部愛女流三段)。女流棋界初の七番勝負が開幕です。相穴熊の終盤戦で、形勢は先手良し。▲3四桂△3三銀引▲2二桂成△同銀▲4一銀△5二桂▲3二銀成△同金▲4二金と絡んでいきました。「寄せは俗手で」と、1枚1枚はがしていくのが確実な寄せです。以下は先手が押し切って、西山女流三冠が好スタートです。

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写真:日本将棋連盟

第43期霧島酒造杯女流王将戦挑戦者決定戦

【第5図は▲4三馬まで】

第5図は第43期霧島酒造杯女流王将戦挑戦者決定戦(▲加藤桃子女流三段△里見香奈女流四冠)。終盤戦ですが、手番を握る後手が勝勢です。△6八馬▲同金△5六桂が「要の金を狙え」の寄せで、▲5四馬には△6八桂成▲同玉△5九銀から豊富な持駒を生かして詰みます。実戦は▲7一銀△同玉▲6三桂△7二玉▲6一馬△同玉▲1六角と王手飛車を掛けましたが、△3四角がピッタリの切り返しで後手の勝ち筋です。三番勝負は里見香奈女流四冠と西山朋佳女流王将の頂上決戦となりました。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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