チーム渡辺VSチーム斎藤 第4回ABEMAトーナメント~予選Eリーグ第二試合振り返り~

チーム渡辺VSチーム斎藤 第4回ABEMAトーナメント~予選Eリーグ第二試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2021年07月12日

 7月10日(土)に放映された第4回ABEMAトーナメントの予選Eリーグ第二試合、チーム渡辺「ホームラン」(渡辺明名人、戸辺誠七段、近藤誠也七段)対チーム斎藤「ここ一番」(斎藤慎太郎八段、村山慈明七段、都成竜馬七段)の団体戦の模様をお送りする。

 第一試合の対エントリーチームこと「わっしょい」戦で5勝2敗と、+3の勝ち点を得た「ここ一番」は本試合でも勝ち越せばトップでの予選通過が決まる。「第一試合では皆の力を合わせて戦うということができたので、それが継続できれば」と斎藤リーダー。

 第1局は近藤―斎藤戦で、振り駒の結果、斎藤の先手となる。このカードは公式戦でもなく、文字通りの初手合いだ。「インコースとアウトコースを分けて、ホームランを避けたいと思います」とは対局前の斎藤。対局は居飛車の力戦形となるが、中盤で戦機をつかんだ近藤がそのまま押し切る形で初戦を制した。だが、第2局の戸辺―都成戦は都成が快勝し、タイに戻す。第一試合に続いて、第1局敗戦後の第2局を制したことについて「偶数局の都成さんですね」とはチームメイトの2人。

 渡辺―都成戦となった第3局は序盤で都成に錯覚があり、「一方的な将棋になってしまった」と都成は振り返る。終盤では猛然と追い込んだが「さすがの逃げ切りですね」と戸辺に感嘆の言葉を漏らさせた渡辺が勝利。局後に「心配なのは戸辺さんだけですね。早く彼の本来の持ち味である将棋をやってもらって、一局勝てれば変わると思うんで」と、チームメイトを気遣った。

 続く第4局は戸辺―村山戦に。直前の作戦会議では渡辺が第2局の手順について酷評した挙句「期待してないから、大丈夫だから」と、先ほどの言葉が何だったのかという手厳しい言葉をかけていたが、そこは20年来の付き合いがある両者で、呼吸はわかっている。振り飛車穴熊から、最後は穴熊の遠さを生かした戸辺が勝利し、自身の初白星を上げた。「期待してないっていうのは、プレッシャーを感じるなということで、あの一言ですごく気が楽になったのでありがたかったです」とは終局直後の戸辺。

【第5局 斎藤慎太郎八段―渡辺明名人】

 前半4局を終えて「ホームラン」が3勝1敗とリード。巻き返しを図りたい「ここ一番」は斎藤が出陣。対して「ホームラン」も一気に勝負を決めるべく、渡辺が二度目の打席に立ち、初のリーダー対決が実現した。

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「次は私が行きたいと思います」とチーム渡辺の渡辺名人

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「ここ一番は私で」とチーム斎藤の斎藤八段

【第1図は▲4三角まで】

 大熱戦となった本局。最終盤の第1図から△3二銀▲3三竜△同金と進んだ局面について「普通は向こうが負けでしょ」と渡辺。▲2二歩には△1二玉で後手玉に詰みはない。

 だが、斎藤の▲6一飛が冷静な一着だった。「打たれてみたら負けになっていたもんね」と渡辺は先ほどの言葉に続けた。以下△3一歩▲2二歩△同玉に▲2三歩△同金▲3二角成△同玉▲4三銀から斎藤が即詰みに打ち取った。▲2二歩に△1二玉ならば詰みはないが、▲6六飛成と急所の桂馬を抜けるのが飛車打ちの効果である。

【第6局 近藤誠也七段―都成竜馬七段】

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 第6局は近藤の居飛車穴熊に都成が三間飛車から速攻に出る。「こういう作戦があるのかと驚きました」と近藤。ただ、その直後の順で都成が趣向を凝らし過ぎたか、中盤は近藤ペースになった。

【第2図は△4五歩まで】

 第2図。ここからの▲5五銀△5四歩▲6四銀という踏み込みが「印象に残っています」と近藤。△同角と取られるが、▲6五香△同桂▲同歩の進行は次の▲1一角成と、また後手が角を逃げたら▲6四桂も残っており、先手が指せる。後手は手にした二枚の香と一段目の飛車も使って、4段ロケットを9筋に設置したが「このロケットはかわせるという直感がありました」と近藤。

その直感通りに発射されたロケットをいなした近藤が制勝し、チームの勝ち抜けに王手をかけた。

【第7局 戸辺誠七段―村山慈明七段】

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【第3図は▲8八銀打まで】

 第7局は戸辺―村山戦。第4局と同一カードだが、先後が入れ替わっての対戦となった。第3図はその最終盤で、二枚竜に迫られている先手玉が相当に危険なのに対し、後手玉はまだ余裕がある形だ。実戦は以下△6七桂成▲同角△6六歩▲5六角△9九竜▲同銀△同竜▲6六銀と進み「これは来たでしょ。お茶飲め、落ち着け、落ち着け」と作戦部屋で渡辺が叫ぶ。戸辺はお茶こそ飲まなかったが、△9六竜▲7七玉△7六香から着実に寄せ切った。

 ただ、実は図からの△6七桂成はやや危険だったか。▲同角ではなく▲8九銀と竜のほうを取られると、△同竜には▲6七角がピッタリとなって、意外と先手玉に寄りつきがない。そして後手玉へは▲8四歩が厳しい一着となる。第3図では△9九竜▲同銀△同竜なら明快だった。

【第二試合最終結果】

予選Eリーグ第二試合の最終結果は以下の通りだ。
第1局 近藤○―●斎藤
第2局 戸辺●―○都成
第3局 渡辺○―●都成
第4局 戸辺○―●村山
第5局 渡辺●―○斎藤
第6局 近藤○―●都成
第7局 戸辺○―●村山
総合 「ホームラン」5勝―2勝「ここ一番」

 この結果、Eリーグで一足先に予選を終えた「ここ一番」は勝ち点がプラスマイナスなしの0となった。予選通過チームは第三試合の「ホームラン」対「わっしょい」の結果次第となる。

 「わっしょいが5勝2敗でホームランに勝つ」という条件以外は、「ここ一番」の予選通過が確定するため、有利な状況で待つことになったといえそうだが、Cリーグでは全く同じ条件で一足先に待つことになったチーム豊島が3者プレーオフの末、敗退という憂き目を見ている。確率としては相当に低いが、その再現が絶対にないとは言い切れない。そして「ホームラン」は「わっしょい」に3勝すれば予選通過が確定する。

 次回は予選Eリーグ第三試合のチーム渡辺「ホームラン」とチームエントリー「わっしょい」が対戦、7月17日(土)19:00からの放映をどうぞお楽しみに。

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2016年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、叡王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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