チーム斎藤VSチームエントリー 第4回ABEMAトーナメント~予選Eリーグ第一試合振り返り~

チーム斎藤VSチームエントリー 第4回ABEMAトーナメント~予選Eリーグ第一試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2021年07月05日

 7月3日(土)に放映された第4回ABEMAトーナメントの予選Eリーグ第一試合、チーム斎藤「ここ一番」(斎藤慎太郎八段、村山慈明七段、都成竜馬七段)対チームエントリー「わっしょい」(小林裕士七段、梶浦宏孝七段、藤森哲也五段)の団体戦の模様をお送りする。

【第1局 斎藤-梶浦】

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 第1局は斎藤―梶浦戦となり、振り駒の結果は斎藤の先手。作戦部屋で「梶浦さんが出てくるのは読み筋」という斎藤に対し「斎藤さんとは一度対局したかった」と梶浦。まずはお互いの想定通りか。将棋は相矢倉からいきなり150手を超える大熱戦となる。

【第1図は△9四歩まで】

 二転三転の果て、迎えた第1図は▲6三角に対して△9四歩と打った局面。先手は▲4一角成と踏み込んで勝てれば話は早いが......。

 斎藤は▲9四同歩と応じたが、この手がまずかった。△9五歩▲同玉に△8三桂が好手で、このときに▲8四玉と逃げられない(△7三金から3手詰め)。実戦は▲9六玉だが、△4五竜▲4一角成に△6九角から梶浦が即詰みに討ち取って、初戦を制した。手順中の△9五歩には▲同金と取る手もあるが、そこで△4五竜とされると先手が勝ちにくい将棋である。第1図ではすぐに▲4一角成ならば先手の勝ち筋だった。△9五歩には▲8七玉と逃げておけば有力な継続手がなく、後手は自玉が受けにくい。

 第2局でタイに戻したい「ここ一番」は都成が出陣。対して「わっしょい」は勢いを重視して梶浦を連闘させた。対局は膠着状態から梶浦が抜け出したが、終盤に一失があり、都成の逆転勝ち。対戦成績も五分に戻した。続く第3局は村山―藤森戦となり、相穴熊の対抗形に。「藤森さんの四間飛車穴熊は予想していたので、研究していた形だったんですけど、自分の序盤の研究がうまく出せたのかなという気はします」という村山が快勝。

【第4局 村山-小林】

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 結果的に、勝敗の明暗を分けたのは次の第4局だったかもしれない。村山を連闘で送り出した「ここ一番」に対し、「わっしょい」はチームリーダーの小林が満を持して出陣。戦型は村山の後手番一手損角換わりから、ねじり合いの中盤が続いた。

【第2図は△5七銀成まで】

 第2図は最終盤。ここで先手が▲5二成桂と詰めろをかけるのは△6九角から先手玉が詰んでしまう。実戦は▲4六桂だが、文字通りのノータイムで打たれた△6九角を見て、すぐに小林が頭を下げた。

 だが、実は投了局面の先手玉は詰んでいないのである。上記の▲5二成桂に対する詰み手順は△6九角▲8八玉△8七角成▲同玉△8六銀▲7八玉△6八歩成▲同銀△同成銀▲同玉△6六竜......という順だが、実戦の進行では▲4六桂を打った効果で△6六竜がない。

 投了局面からの▲8八玉に、後手は指すなら△2五竜(3四の地点を受けつつ、△2八竜をみる)くらいだが、そこで▲8五馬と拠点の歩を払われると、先手玉に全く寄りつきがなくなる。△6九角では先に△2五竜ならば後手の勝ち筋だったのだが、最終手△6九角は村山にとって敗着になりかねない一手だった。

 「わかると思うんですけど、どちらも勘違いしていたんですよ」とは後日の村山。また対局当日に控室で戦いを見ていた渡辺明名人から「それまで5秒きっちり使っていた人が、文字通りノータイムで指したからねえ」と言われたことも教えてくれた。

【第7局 斎藤-小林】

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 奇勝を博した「ここ一番」は第5局でも斎藤が藤森に勝ち、勝ち越しへ王手をかける。第6局では小林が都成に意地を見せたが、第7局はリーダー同士の対戦を斎藤が勝利して、予選第一試合を制した。

【第3図は△2五銀まで】

 第3図は斎藤―小林戦の中盤。この△2五銀で先手の角が捕まっているようだが、▲4五歩が当然の切り返し。以下△2六銀▲4四歩までは必然だが、ここで後手がどう指すか。後手の銀は助けにくく、△1五銀には▲4三歩成△同金▲2三飛成がある。

 小林は△4四同角と前述の順を消したが、▲2六飛の局面は角と銀2枚の交換で、先手の駒得。局面が収まると駒損が響くので△3六歩▲2八飛△8八歩▲同金△6七角と手を作りに行ったが、▲7七金引以下、斎藤が手堅く勝ち切った。戻って△4四同角では△4九角がまさったか。対して▲2六飛△7六角成▲4三歩成△同金▲2三飛成はそこで△3二金と手厚く受けておけば、今度は後手の駒得である。持ち歩の枚数の差も大きく、後手有利とまでは言えないが、難しい勝負だろう。

【総合成績】

予選Eリーグ第一試合の最終結果は以下の通りだ。
第1局 斎藤●―○梶浦
第2局 都成○―●梶浦
第3局 村山○―●藤森
第4局 村山○―●小林
第5局 斎藤○―●藤森
第6局 都成●―○小林
第7局 斎藤○―●小林
総合 「ここ一番」5勝―2勝「わっしょい」

 次回は予選Eリーグ第二試合のチーム渡辺「ホームラン」とチーム斎藤「ここ一番」が対戦、7月10日(土)19:00からの放映をどうぞお楽しみに。

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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