名人戦が決着。5月下旬の注目対局を格言で振り返る

名人戦が決着。5月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年07月02日

 名人戦は渡辺明名人が第2局からの4連勝で防衛しました。藤井聡太王位への挑戦者は豊島将之竜王と、強敵が出てきました。

第79期名人戦七番勝負第5局

【第1図は▲6九玉まで】

 第1図は第79期名人戦七番勝負第5局(▲斎藤慎太郎八段△渡辺明名人)。後手が苦しい将棋でしたが、ここから△6二歩が地味ながら好手。普通は飛車の横利きを止め、さらに攻め筋も減って良くないのですが、▲6四成桂を催促し、△同角成で「馬は自陣に引け」を実現させました。そこで▲6五桂ともたれておけば難しい将棋でしたが、実戦は▲4四歩△同銀▲6六角と攻めたため△5五銀で馬の厚みが生きる展開になりました。渡辺名人は4勝1敗で初防衛です。

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写真:睡蓮

第79期名人戦七番勝負第4局

【第2図は▲3八飛まで】

 第2図は第79期名人戦七番勝負第4局(▲渡辺名人△斎藤八段)。第2図の▲3八飛は後手の歩切れを突いた飛車寄りです。△3三銀のようにただ受けるだけでは攻めが細くなってしまいますが、△3七銀が「終盤は駒の損得より速度」の強打。歩切れなので銀を使って手番を握りにいきました。以下▲3七同飛に△6八金▲8八玉△3七馬▲同桂△8六歩と攻めて際どい終盤戦となりましたが最後は渡辺名人が勝ちました。

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写真:玉響

第14期マイナビ女子オープン五番勝負第4局

【第3図は△6二金まで】

 第3図は第14期マイナビ女子オープン五番勝負第4局(▲伊藤沙恵女流三段△西山朋佳女王)。手将棋となりましたが、図は馬と角の差で先手良しです。▲3五歩が「開戦は歩の突き捨てから」の仕掛けで、△同歩▲4五桂△2二銀▲3三歩で全軍躍動です。伊藤女流三段が快勝で決着は最終局へ。

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写真:常盤秀樹

第32期女流王位戦五番勝負第2局

【第4図は▲7七桂まで】

 第4図は第32期女流王位戦五番勝負第2局(▲里見香奈女流王位△山根ことみ女流二段)。相振り飛車の中盤戦ですが、先手は「攻めは飛角銀桂」の格言通り、すべての攻め駒が働いてきそうな態勢です。一方の後手は攻めに使いたい飛車や銀が5筋を受けるために自陣に残っています。先手の作戦勝ちで、以下は模様の良さをそのまま拡大して快勝となりました。

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写真:琵琶

お~いお茶杯第62期王位戦挑戦者決定戦

【第5図は▲5五銀まで】

 第5図はお~いお茶杯第62期王位戦挑戦者決定戦(▲羽生善治九段△豊島将之竜王)。先手の猛攻を受け止めて後手勝勢の局面です。ただ、ここで寄せにいくのは後手玉も何かのはずみに寄ってしまう危険があります。△1三玉が「中段玉寄せにくし」の負けない一手。△1四玉から△1五玉の入玉ルートを止めることができません。実戦は▲1五歩△同桂まで先手の投了となりました。豊島竜王が藤井聡太王位への挑戦権を獲得です。

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写真:武蔵

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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