チーム康光VSチーム菅井 第4回ABEMAトーナメント~予選Bリーグ第三試合振り返り~

チーム康光VSチーム菅井 第4回ABEMAトーナメント~予選Bリーグ第三試合振り返り~

ライター: 紋蛇  更新: 2021年05月17日

 第4回ABEMAトーナメント予選B組3回戦のチーム康光「シン・レジェンド」(佐藤康光九段、森内俊之九段、谷川浩司九段)とチーム菅井「一刀流」(菅井竜也八段、郷田真隆九段、深浦康市九段)は、5月15日(土)に放映された。予選を抜けるには、チーム康光が3勝すればいいのに対しチーム菅井のボーダーラインは5勝2敗と非常に厳しい。しかし、ドラマが待っていた。

【第1局 森内俊之九段ー菅井竜也八段】

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第1局の森内俊之九段VS菅井竜也八段戦

 開幕投手は森内と菅井。森内が勝率7割9分、菅井が6割4分とフィッシャールールと相性のよい棋士がぶつかった。戦型は菅井のゴキゲン中飛車。森内が超速3七銀からリードを奪い、厚みを築いて勝勢になる。

【第1図は△4四歩まで】

 第1図は△4四歩と突いて、馬筋を遮ったところ。後手は大きな駒損で非常に苦しい。森内は▲5八香と攻防手を放ったが、△4六桂▲6三歩成△同銀▲5三歩成△7四銀と進むと先手玉にプレッシャーがかかった。秒読みなので実戦的にはもう難しい。以下▲5四角△5八桂成▲6四桂△5五金で打ったばかりの角を抜いた後手が逆転に成功した。
急に局面が好転し、チーム菅井の控室は大興奮。「お」「お」「お」「おぉ」「おおお」「きたか」「きたか、きたか」「きたぞぉ」「いやぁ、きたかもしれない」「きた」「これはきたか」と喜びを爆発させた。

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第1局で菅井の逆転に沸く郷田と深浦

 図で香を打つなら5九がよく、飛車の可動域が狭いものの△4六桂がなくてわかりやすかった。また、途中の▲6三歩成では▲3七桂と成銀を狙って入玉を目指すのがよい。
先勝したチーム菅井は、3連勝で勢いに乗る。連投でも佐藤に快勝した菅井、そして第3局は郷田がフィッシャールールで初勝利を挙げた。第4局は森内が深浦を破るも、第5局を菅井が制してチーム勝利にあとひとつに迫る。4勝1敗で圧倒的に有利とはいえ、予選突破の3勝差のためにはここから1敗しか許されないので、そこまで余裕はない。

【第6局 谷川浩司九段-郷田真隆九段】

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第6局の郷田真隆九段VS谷川浩司九段

 第6局のカードは、2回目の谷川-郷田になった。第3局は谷川先手で角換わりになり、郷田が細い攻めをうまくつないで勝っている。第6局は後手の谷川が雁木系を目指し、郷田が速攻でペースを握った。

【第2図は△4五歩まで】

 第2図は△4五歩と角道を通したところ。△6六角を狙われて先手が気持ち悪いようだが、堂々と催促する▲3四歩が好手だった。△同金は▲5三角成なので△6六角と出たが、▲7七銀△2二角▲2四歩△同歩▲同角がうまい組み立て。角の王手に△3三歩と合駒するのは▲2三歩△同金▲3三角成から崩壊してしまう。谷川は△6一玉と辛抱するも、▲2三歩△4四角▲5五銀と角を捕まえて郷田優勢になった。郷田はこのまま押し切ってチーム勝利をもぎ取った。

 これで3チームが1勝1敗で並ぶも、得失点差はチーム糸谷とチーム菅井がプラス1で予選突破、チーム康光がマイナス2で予選敗退が決まる。前期はベスト4進出のチームが早々に予選で消えたが、黒星スタートから見事に立て直したチーム菅井の底力と気迫が見事だった。

【総合成績】

第1局 森内●-〇菅井
第2局 佐藤●-〇菅井
第3局 谷川●-〇郷田
第4局 森内〇-●深浦
第5局 佐藤●-〇菅井
第6局 谷川●-〇郷田
総合   1勝-5勝

【個人成績】

佐藤九段 0-2
森内九段 1-1
谷川九段 0-2
菅井八段 3-0
郷田九段 2-0
深浦九段 0-1

【1位決定一番勝負 糸谷哲郎八段-菅井竜也八段】

 チーム糸谷とチーム菅井は得失点差も並んだため、予選1位を懸けてリーダーの糸谷と菅井が一番勝負を行った。チーム戦では1局指し、先手の糸谷が菅井の角道を止める三間飛車を変則的なエルモ囲いで破っている。

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1位通過を懸けた戦い 糸谷哲郎八段VS菅井竜也八段

 振り駒の結果が糸谷の先手になり、後手の菅井がまた三間飛車を採用した。糸谷は天守閣美濃で対抗する。中盤のねじり合いから一進一退の攻防が続き、互角のまま終盤を迎えた。

【第3図は▲4四馬まで】

 第3図の▲4四馬の竜取りに△6七竜が強手。▲同銀△同香成は攻めがつながると見ている。糸谷は▲6一銀と迫ったが、△7六竜▲8八玉に△7一金 ▲7二銀打△同金▲同銀成△同玉と受けに回った。
その後、▲6二馬△同角▲5三銀△6三金▲6二銀成△同金と進む。怖いようでも、△6二同金の局面は△9七銀▲同香△8七銀以下の詰めろが先手玉にかかっている。糸谷が▲5四角の攻防手を放つも菅井は△6三銀から受けて、最後は豊富な持ち駒で 先手玉を即詰みに討ち取った。

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1位通過を決めた菅井は郷田、深浦とハイタッチ

チーム菅井は1位通過となり、3人全員でハイタッチで喜びを分かち合った。菅井は今大会で5勝1敗と圧倒的な強さを見せている。郷田が「キャプテンが大活躍で。本当に引っ張ってくれてありがたい」と信頼を寄せているのが印象的だった。

次回は5月22日(土)19:00からの放送。予選Cリーグ第一試合のチーム豊島VSチーム木村の対戦をお楽しみに

ABEMAトーナメント

紋蛇

ライター紋蛇

2012年より、ネット中継に携わる。担当局で一番長い中継が2013年3月の第71期順位戦C級1組の森けい二九段-近藤正和六段戦で、持将棋の末指し直しとなり、終局時刻は翌日の朝5時40分。「中継は体力だ」と痛感している。

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