渡辺王将連続3期、通算5期目に！第70期王将戦七番勝負を振り返る

ライター：渡部壮大　　更新： 2021年04月23日

渡辺明王将に永瀬拓矢王座が挑戦した第70期王将戦七番勝負。激戦の王将リーグを制した挑戦者だけに競り合いが予想された。

第70期王将戦七番勝負第1局

恒例となっている静岡県掛川市「掛川城　二の丸茶室」にて開幕。角換わり腰掛け銀から先手の渡辺が激しく攻める展開に。うまく手をつないだ渡辺がリードを奪う。

【第1図は△5三銀まで】

第1図は大詰めで、後手は必死の防戦だ。▲5三同飛成が勝ちを見切った寄せで、△同玉に▲5四銀△4二玉▲4三金△3一玉▲3二金△同玉▲4三銀成△同玉▲5四角△5三玉▲4三金△6二玉▲6四歩と畳みかけた。先手は飛車一枚しか守りに付いていないがギリギリ詰まない。渡辺が先勝。

写真：日本将棋連盟

第70期王将戦七番勝負第2局

第2局は大阪府高槻市「山水館」にて。相掛かりから早い段階で戦いになったが、延々とねじり合いが続いた。

【第2図は△4一角まで】

図で▲4二金が後手玉の退路をふさぐ妙手。△同金に▲7二成桂△6三玉と進んだ局面が勝敗を分けた。▲7三歩成△6四玉▲4三角成なら勝ちだったが、実戦は▲7三成桂△6四玉▲4三角成としたため、△6八金▲同銀引△同歩成▲同玉△8八飛成の時に歩合ができず、先手玉が詰んでしまった。大熱戦を制した渡辺が2連勝。

写真：日本将棋連盟

第70期王将戦七番勝負第3局

第3局は栃木県大田原市「ホテル花月」にて。相掛かりの空中戦となったが、飛車を押さえ込んだ先手がリードを奪う。

【第3図は△4四角まで】

ここから▲2五飛△7二歩▲7五飛が飛車を大きく使う好手順。飛車の働きの差がそのまま形勢の差になっている。以下は押し切って渡辺の快勝譜となった。

写真：日本将棋連盟

第70期王将戦七番勝負第4局

第4局は東京都立川市「ＳＯＲＡＮＯ　ＨＯＴＥＬ」にて。先手の矢倉に後手の雁木となった。

【第4図は△2四同歩まで】

飛車先の歩を突き捨てたところだが、ここで▲4四桂が十字飛車を狙った好手。△同銀▲2四飛△2三歩▲4四飛△4三銀▲4五飛と飛車を好所に移動しながら駒得することに成功した。以下も的確な指し回しを見せた永瀬が1勝を返す。

写真：日本将棋連盟

第70期王将戦七番勝負第5局

第5局は佐賀県上峰町「大幸園」にて。角換わりから先手が桂を跳ねる速攻を仕掛けた。

【第5図は▲5八金まで】

中空に放つ△５五桂が妙手。▲同飛なら△4七成香が飛車取りになる。実戦は▲3五桂△4二金▲4三銀と攻め合ったが、先手は桂を打つなら5五に打ちたいところだった。以下は8四の飛車を△1四飛～△1八飛成とさばいて制勝。永瀬が反撃の2勝目。

写真：日本将棋連盟

第70期王将戦七番勝負第6局

第6局は島根県大田市「さんべ荘」にて。先手の永瀬が角換わりから早繰り銀で動いて早い進行となるが、1日目午後に入って早々に千日手となった。指し直し局は先後を入れ替えて渡辺が先手の角換わりに。第5局と同様の形になった。

【第6図は▲6六同歩まで】

難解な戦いが続いていたが、巧みに攻めをつないだ渡辺が徐々に差を広げていく。次に▲7四香が好防手なので後手は何かひねり出さなくてはいけない。△4七桂と打ち、▲4九玉に△1二飛（▲同竜は△6七角）は目の覚めるような勝負手だが、冷静に▲2四竜△2三歩▲3五竜△3四銀▲2六竜と対応してリードを守っている。以下は反撃の余裕を得てから押し切った。

写真：日本将棋連盟