里見、中井の最年長挑戦を退ける

里見、中井の最年長挑戦を退ける

ライター: 渡部壮大  更新: 2020年12月23日

 里見香奈倉敷藤花に中井広恵女流六段が挑戦した第28期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負。中井は女流棋界では史上最年長となる51歳での挑戦だ。倉敷藤花戦へは2004年の第12期以来、実に16年振りの登場となる。

第28期大山名人杯倉敷藤花戦挑戦者決定戦

 挑戦者決定戦は久しぶりの大舞台登場を目指す中井と、初のタイトル挑戦を狙う石本さくら女流初段の対戦となった。石本はここまで香川愛生女流三段、渡部愛女流三段、甲斐智美女流五段とタイトル経験のある実力者を連破しての勝ち上がりだった。石田流から石本が積極的に動いていくが、中井が落ち着いた指し回しでリードを奪う。

【第1図は▲5五同竜まで】

 ここから△5一香▲4六竜△2四角▲6六角△3三銀と惜しげもなく駒を自陣に投入していく。駒得しているので、手厚くしていけば自然と勝ちに近付くわけだ。以下手数は掛かったものの着実に差を広げ、中井が挑戦権を獲得。石本の快進撃もここまでとなった。

dijest_28kurasiki_1.jpg
撮影:常盤秀樹

第28期大山名人杯倉敷藤花戦第1局

 第1局は大阪「関西将棋会館」にて。里見と中井がタイトル戦で戦うのは初めてだ。里見の中飛車に中井は左美濃から早い動きを目指していく。

【第2図は△6五桂まで】

dijest_28kurasiki_2.jpg
撮影:日本将棋連盟

 居飛車は桂をさばいている上に玉の堅さでまさり、3五の位もあって好調のように見える。だが、ここからの里見の受けが見事だった。▲5八金△7七歩に▲3九歩が妙防。△7八歩成と金を取れば▲同飛成で飛車を詰ますことができる。実戦は以下△5一角▲9六歩△3三桂▲7七桂△同桂成▲同飛成△3六桂▲2九玉△3四金に▲8八金で、飛車の捕獲が確定した。巧みな指し回しで打ち込んだ飛車を召し取った里見が制勝。

dijest_28kurasiki_3.jpg
撮影:日本将棋連盟

第28期大山名人杯倉敷藤花戦第2局

 第2局はお馴染みの岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」にて。例年なら午後からは公開対局となるが、今年はコロナのため非公開で行われた。戦型は里見の中飛車に中井の急戦。

【第3図は▲9五歩まで】

 桂を急所に据えて後手がペースをつかんでいる。先手は▲9五歩で端にアヤを求めたが、構わず△7六桂が厳しい。▲9四歩の取り込みに金を取らず△9八歩▲同香△9九角で部分的に受けがない。先手は端を取り込んでも飛車が攻めに使えていないのが痛いところだ。以下は先手の粘りにも着実に寄せて押し切り、里見が2連勝で防衛を飾った。

 里見はこれで11期目の倉敷藤花を獲得。タイトル通算は42期となり、清水市代女流六段の持つ最多の43期まであと1期と迫った。

dijest_28kurasiki_4.jpg
撮影:日本将棋連盟

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

このライターの記事一覧

この記事の関連ワード

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています