オーダーは読み通り?本戦1回戦 チーム渡辺VSチーム糸谷、準決勝進出を決めたのは?~生放送振り返り~

オーダーは読み通り?本戦1回戦 チーム渡辺VSチーム糸谷、準決勝進出を決めたのは?~生放送振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2020年07月24日

*前回の記事:本戦1回戦 チーム三浦VSチーム広瀬 振り返り

第3回AbemaTVトーナメント。7月18日に放映されたのはチーム渡辺(渡辺明二冠、近藤誠也七段、石井健太郎六段)対、チーム糸谷(糸谷哲郎八段、高見泰地七段、都成竜馬六段)の対抗戦である。

【第1局】近藤誠也七段VS糸谷哲郎八段


糸谷哲郎八段VS近藤誠也七段

第1局はチーム渡辺からは近藤が、チーム糸谷はリーダーの糸谷が出陣。振り駒の結果、糸谷の先手番となった。
「意表をつかれましたね。初戦にリーダーはないという想定だったので」という渡辺リーダー。「もってこーい! もってこーい!! せいや!!!」と、広島カープの鈴木誠也選手に対する応援の手法を借用する形でチームメイトを送り出した。
対して糸谷リーダーは「オーダーとしては読み通りでしたね」と自信の表情をみせる。

【第1図は▲8二角成まで】

第1図は第1局の中盤。先手が▲8二角成と馬を作った局面だが、△9五角▲6八銀△7四飛が巧い切り返し。以下は▲7五歩△3四歩▲6五飛△6四歩▲同馬△7三桂▲7四歩△6五桂▲同馬の飛車交換となったが、そこでの△2八飛が厳しく後手がペースを握った。以下も近藤が的確に指して、まずはチーム渡辺が白星スタート。「リーダーを倒しての白星だから、2勝分の価値がある」と渡辺リーダーはご満悦。

 

【第6局】石井健太郎六段VS都成竜馬六段


石井健太郎六段VS都成竜馬六段

ところが第2局では都成が渡辺を破り、五分の星に戻す。「素晴らしい将棋でした」と糸谷リーダーは称えてチームメイトを迎えた。以降、第3局は石井が高見に勝ち、第4局は近藤が都成を下して、チーム渡辺が3勝1敗とリード。だが第5局では渡辺が高見に敗れる。控室に戻った渡辺は「ひどいでしょ、笑っちゃうよね」と弟弟子2人相手に愚痴をこぼした。「いやいや、まだ勝ってますから」と慰めた石井が第6局に出陣。ここまでチーム渡辺は近藤→渡辺→石井という出場順を繰り返している。チーム内で先後を公平にする意味だそうだが、相手に読まれやすいマイナスも生じている。

対するチーム糸谷は都成が登場。石井の先手番に関して、3手目▲6六歩からの振り飛車の可能性を示唆し「あいつが振るなら俺も振ります」と相振り飛車宣言。ところが▲7六歩△3四歩に▲2六歩と、いきなり相振り飛車の可能性はなくなった。

形勢が二転三転して迎えた最終盤の第2図。

【第2図は▲6六桂まで】

この王手に対する逃げ方が明暗を分けた。都成は△6三玉と引く。広そうな側に逃げたくなるのは実戦心理だが、残念ながらこれが敗着となってしまった。以下▲6五桂△5五馬▲同歩△7七銀に▲7四角△6二玉▲5四桂打から石井が後手玉を即詰みに打ち取った。

第2図では△8三玉ならば都成の勝ち筋だった。ここで先手から後手玉に迫る有力な順がないのである。例えば本譜同様の▲6五桂は詰めろにならず△7九角成で後手の勝ち。△8三玉には▲8五歩△9二玉▲8四歩も考えられるが、△8二歩と受けられるとやはり詰めろが続かない。△8二歩には△7九角成を防ぐために▲8九金と打つくらいだが、持ち駒を使い、かつ手番を渡すのではつらい。

【第7局】渡辺明二冠VS高見泰地七段


渡辺明二冠VS高見泰地七段

チーム渡辺が勝ち抜けに王手をかけて迎えた第7局。「強い人を温存するということで(苦笑)」というリーダーの方針のもと、この日2勝の近藤と石井を後に回し、渡辺が3度目の出陣。今度こそ、是が非でもリーダーとしての貫禄を見せる必要がある。

対するチーム糸谷はリーダーを後に温存し、都成に続く形で高見が3度目の登場となった。第5局の▲高見―△渡辺が再現されることになる。「負けたら終わりの局面で出してもらえるリーダーの采配に応えないと」と高見。

第5局は結果こそ高見の勝利だったが、作戦勝ちしていたのは渡辺のほうだった。それを踏まえてか、第5局の序盤とほぼ同様の進行となるが、

【第3図は▲4六歩まで】

第3図からの△4二銀右▲2九飛△4三銀という銀矢倉の構築が渡辺の工夫である。あと、△8五歩を保留しているのも第5局との違いだ。△4三銀からは▲4七銀△7三桂▲1六歩△8一飛▲1五歩△9二香▲6五歩△4二角▲4五歩と進み開戦。ここに至るまで先手の指し手は第5局とほぼ同一。「意地ですかね」とは解説の稲葉陽八段。

終盤に至るまで熱戦が続いたが、最後は渡辺が抜け出して勝利、チームの準決勝進出を決めてリーダーとしての面目を保った。

次回は7月25日に放映予定。チーム永瀬(永瀬拓矢二冠、藤井聡太棋聖、増田康宏六段)対チーム天彦(佐藤天彦九段、斎藤慎太郎八段、阿部光瑠六段)の一戦をどうぞお楽しみに。

ABEMAプレミアムで公開中

・渡辺二冠率いる所司一門 対 フォーカス+1<チーム渡辺VSチーム糸谷>
・大三元の勢いにミレニアムが迎え撃つ!!<チーム広瀬 VS チーム三浦>
・本戦開幕!レジェンドと振り飛車の衝突!<チーム康光 VS チーム久保>
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AbemaTVトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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