ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2019年10月24日
関西同士の対決となった第9期加古川青流戦決勝三番勝負。池永天志四段はプロ入り後初の棋戦優勝を目指す。服部慎一郎三段は過去に三段リーグで14勝を挙げたこともあり、いつプロ入りしても不思議ではない実力者。青流戦では三段の決勝進出は3人目だが、まだ優勝はない。服部が壁を破れるかにも注目された。
加古川青流戦三番勝負は2日間で3局を行う短期決戦。今年も兵庫県加古川市「鶴林寺」で行われた。
第1局は池永が先手で相矢倉に。といっても少し前に流行していた金矢倉にはならず、先手は土居矢倉、後手は5筋を突かない腰掛け銀の矢倉となった。中盤、後手の揺さぶりにたいして先手も無理をせず千日手となった。
指し直し局も矢倉模様だったが、先手の服部が急戦矢倉に出た。
【第1図は▲5三歩まで】
第1図は▲5三歩と垂らしたところだが、ここで△3一玉が先手の攻めを緩和する手筋の早逃げ。以下▲3五歩△5六歩▲9六歩△3五歩▲9七角と攻めの継続を図ったが、△4二歩と埋めた手が非常に堅い。攻めに専念できるようになった後手が堅陣を生かして猛攻。そのまま押し切って池永が先勝した。
池永四段
服部三段
翌日に行われた第2局は先手の服部が矢倉を目指すと、今度は後手の池永が急戦に出た。
【第2図は△3五歩まで】
第2図は終盤戦で、駒得している先手が勝勢だ。ここから▲2四歩△3四金▲1五金が物量攻め。以下も攻めをつなぎ、服部が1勝を返して三番勝負は最終局へもつれ込んだ。150手近い熱戦だったが、服部は持ち時間を残し居玉のままで戦い抜いた。
池永四段
服部三段
午後に行われた第3局は振り駒の結果池永が先手に。またも矢倉戦となり、今度は第1局千日手のようなじっくりした展開となった。中盤に玉頭方面でポイントを挙げた池永が優位に立つ。
【第3図は△5四同銀まで】
ここで▲5四同飛△同金▲4三銀がさわやかな決め方。金を消せば▲4四角と出る筋があるため、後手は粘るのが難しい。以下△5三金▲5四金△4三金▲同金△5五歩▲3三歩で寄り筋に入った。
池永は嬉しい初優勝。プロ入り後初の結果を出すこととなった。服部は第3局が不出来で悔しい内容となってしまったが、過去に三段で決勝進出した二人(宮本広志五段、石川優太四段)はプロ入りを果たしており、四段昇段も近いだろう。
優勝スピーチを行う池永四段
*画像は加古川青流戦中継ブログより
ライター渡部壮大