「笑ってお迎えしたいから」将棋と子育てどちらも楽しむ井道千尋女流二段の前向きの秘訣【女流棋士とデザート】

「笑ってお迎えしたいから」将棋と子育てどちらも楽しむ井道千尋女流二段の前向きの秘訣【女流棋士とデザート】

ライター: マツオカミキ  更新: 2019年09月18日

ローソンのデザートを食べながら、和やかな雰囲気で女流棋士にお話を聞くこのシリーズ。3月の発売から累計販売個数1900万個を突破したバスク風チーズケーキ「BASCHEE(バスチー)」を、井道千尋女流二段に食べていただきながらのインタビューです。
「友達がほしい」という動機で女流棋士を目指すようになったことや、1歳7カ月の娘さんの話、将棋と子育てを両方とも楽しむ秘訣についてもお話してくださいましたよ。

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すでに将棋の駒を指す!? 1歳7カ月の娘が興味を示すもの

――ローソンのデザート「BASCHEE(バスチー)」をご用意しているので、食べていただきながらお話できればと思います。

いただきます! バスチー好きなので、もう何回も食べてます。しっとりしていて、舌触りが良くて、おいしいですよね。

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家の近くにローソンがあるので、ウチカフェシリーズはよく食べます。バスチーの他に、プレミアムロールケーキも好きです。ロールケーキなら、娘もスポンジ部分だけ一緒に食べられますし。

――娘さん、今何歳ですか?

1歳7カ月です。私が食べているものを何でも欲しがりますよ。バスチーは娘には甘すぎるかなと思うので、分けてあげられないんですけどね。ただ、私が食べ終わった後に、勝手にスプーンを口に入れたりしています。おいしい物だとわかっているのかもしれません(笑)。

――お母さんが食べているものに、興味津々なんですね。

食べ物だけじゃなくて、私がいつも将棋を家で指しているからか、もう将棋の駒にも興味を持っているみたいです。駒を袋に入れたり出したりして遊んでいます。それと、「どうぶつ将棋」が大好きで、すでにパシンっと音を出して指すような手付きをしています(笑)。

「友達がほしい」という気持ちで女流棋士の道へ

――井道女流二段は、何歳から将棋を始めたのでしょうか?

6歳の頃に、将棋好きの父に教えてもらって始めました。2つ下の弟も一緒に教えてもらっていたのですが、最初は弟の方が覚えが良くて、私は負けてばかりでしたね。将棋の本や棋譜は読めなかったので、なかなか戦型が覚えられず、強くなれませんでした。ようやく読めるようになったのは、中学2年生で将棋教室に通い始めてからの話です。

――6歳で始めて、中学2年生で将棋教室に通い始めるまでの間も、将棋は続けていたんですよね?

一応続けてはいましたが、勉強しているというよりは、遊びながら覚えて将棋大会に出る感じでした。小学生の頃はバスケに打ち込んでいたので、土曜日はバスケの試合、日曜日は将棋の大会という休日を過ごすことが多かったです。将棋の大会は、毎回予選落ちでしたけどね。

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――大会で負けた悔しさから、さらに将棋を頑張る‥‥みたいな感じですか?

いえ、勝ちたいという気持ちは全然なかったんですよ。

――そうなんですか! では、当時の将棋を続けるモチベーションは何だったんでしょう。

石川県出身で、地元はとても田舎だったんですが、将棋大会に参加すれば金沢などの都会に出られるので、それが楽しみでした(笑)。自分はそもそも将棋の勉強をしていないですし、周りは男の子ばかりだし、当時は「負けてもしょうがないな」と思っていたのかもしれません。

――中学2年生で将棋教室に通い始めるきっかけは、何でしたか?

中学1年生の時に、「中学選抜」という全国大会の女子の部に参加させてもらったのがきっかけです。そこで初めて同じ学年の女の子と戦ったのですが、全然勝てずに予選落ちしてしまいました。自分の中では、同い年の女の子との対局だったら少しは勝てるはずだと思っていたので、まったく勝てなかったことが悔しくて。

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それと、全国には将棋を指している女の子がいっぱいいることを知ったのも、大きかったと思います。友達ができるかもしれないと思って。ただ、やっぱり勝ち上がらないと名前を覚えてもらえないんですよね。勝ち残っている子同士が友達になっているのを見て、「いいな、私もそこに入りたい!」と思いました。

――「友達がほしいから勝ち残りたい」という動機は、珍しいですね。

来年も大会に出て勝ち上がれたら、もっと友達が増えるかもしれないと思って。それで、将棋教室に通い始めました。

――そこから本格的に将棋を始めて、女流棋士を目指そうと思ったのはいつ頃でしたか?

いえ、教室に通い始めるのと同じタイミングで、女流棋士を目指すようになったんです。一度「強くなる」と決めたら、とことん突き詰めたくなる極端な性格なんですよね(笑)。それからは、教室に通い、将棋の本を読んで自主的に勉強し、ひたすら将棋に打ち込みました。

東京に出てきた「何も知らない自分」を助けてくれたのは、新しい居場所だった

――今まで将棋を続けてきた中で、最も苦しかった時期はいつですか?

高校を卒業して、19歳で東京に出てきた時です。自分が何も知らないことに、東京に来て気づきました。

――何も知らない、というと?

将棋界にどういうお仕事があるのかも知らなかったし、礼儀作法も、服装すらわからないし、研究会という言葉も知りませんでした。聞き手のお仕事をいただいても、定跡や周りの先生方のことも知らなさ過ぎて全然うまくできないし‥‥。そんな自分に対してすごく落ち込んで、本当にこの世界で生きていけるのか不安でした。当時は勝率も2割ほどで、かなり焦っていた記憶があります。

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――その苦しい時期は、どうやって乗り越えられたのでしょうか。

基本の駒持ちや定跡から勉強したり、聞き手をされている先輩方にお話を伺ったりしました。また、東京では蒲田の道場にお世話になっていたのですが、その道場の方々が将棋の相手をしてくれたり、そこに通う棋士や奨励会員も将棋界のことを教えてくれたり。東京での居場所ができて、精神的に救われた部分も大きかったです。自分から積極的に質問したり話しかけたりしているうちに、研究会に誘ってもらえるようになり、お話できる人も増えていきました。

振り返ってみると、当時は必死に頑張っていたなと思います。たくさんの方々にお願いして、いろんなことを教えていただいたからこそ、今の自分があります。

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「笑ってお迎えしたいから」井道女流二段が前向きにいられる秘訣

――女流棋士として、これからやってみたいことはありますか?

私、手帳に「やりたいことリスト」をつくっているので、やりたいことはたくさんストックしてあるんです。「この戦法を勉強したい」とか「この将棋本を買いたい」とか、小さなことも含めてメモしてあります。将棋だけでなく、プライベートのことも混じっているので、「ジムに通いたい」とか「子どもとディズニーランドに行きたい」とかも。昔から、スケジュールをリスト化して、それをひとつずつクリアしていくことが、ゲームみたいで好きなんですよね。

――将棋と子育ての両立で時間も限られている中、「やりたいこと」をリスト化しておくことで効率も良くなりそうですね。

そうだと思います。子どもが生まれてから将棋の勉強時間はかなり減りましたが、限られた時間で効率良く将棋と向き合うようになりました。

また、自然と家族や子どものために頑張ろうと思えるようになったので、それが良い結果にもつながっています。やっぱり、対局後に子どもを迎えにいく時も、笑ってお迎えしたいじゃないですか。もし負けたら、笑顔もひきつってしまうので(笑)。子育てを楽しみながら将棋を頑張りたいというのが、今の私の大きな目標なんです。

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それと、いつも前向きでありたいと思うようになりました。一人だった時は悩んで落ち込む時間も長かったのですが、今は子どもとの時間も楽しみたいので、将棋で悩んだり落ち込んだりする時間を極力減らしたいです。だから前向きに、楽しく将棋を指せたらなと思って。

――それでも落ち込んでしまった時は、どうやって前を向くんでしょうか?

それこそ、ローソンでバスチーを買って食べるなど(笑)。

――思いもよらず、バスチーの宣伝につながりました(笑)。

とにかく、自分にご褒美をあげることで回復するようにしています。以前だったら、甘い物食べ過ぎないようにしなきゃと思っていたところを、「いや、子育てと仕事を両立してるだけで十分頑張ってるし、食べても良いかな」と。甘い物以外に関しても、これもやらなきゃ、あれもやらなきゃと思いがちでしたが、良い意味であきらめるようになったと思います。

――子育てし始めてからの方が、肩の力が抜けたんですね。

周りの方々から見れば「自分に甘い」と思われてしまうかもしれませんが、それでも将棋も子育ても楽しむためには、無理をしないことが大切だと思うようになりました。無理せず、肩の力を抜いて、これからも前向きに楽しんでいけたらと思います。

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まとめ

「無理をしない」という言葉通り、ゆったりとした自然体な雰囲気でお話してくださった井道女流二段。娘さんのお話をされているときの、やわらかく優しい笑顔がとても素敵でした。そして、「BASCHEE(バスチー)」を差し入れてくれたローソンクルーのあきこちゃんには、素敵なメッセージをいただきましたよ。

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取材協力井道千尋女流二段

1988年5月21日生まれ。石川県珠洲市出身。木村義徳九段門下。2005年4月1日、女流2級。2017年6月28日、女流二段に昇段。

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ローソン×日本将棋連盟 コラム

マツオカミキ

ライターマツオカミキ

2014年からライターとして活動する平成元年生まれ。28歳にして初めて将棋に触れました。将棋を学びながら、初心者目線で楽しさをお伝えします!普段は観光地や企業、お店を取材して記事を執筆中。

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