自分の好みの振り飛車をみつけよう!初段を目指す振り飛車党が読むべき本5冊

自分の好みの振り飛車をみつけよう!初段を目指す振り飛車党が読むべき本5冊

ライター: 水留啓  更新: 2019年07月01日

棋書紹介

皆さんこんにちは。以前の記事「振り飛車を学びたいならこの5冊!」を読んでくださった皆さんは、その後飛車をぶんぶん振り回していますでしょうか。振り飛車を得意戦法にするメリットは、多くの場合に自分の土俵で戦えることです。この点が、相手の出方によって柔軟に指し方を対応する必要がある居飛車の将棋との大きな違いといえそうです。

さて居飛車・振り飛車を問わず、有段者になるためには「定跡研究・棋譜並べ・手筋・詰将棋」をまんべんなくこなしておく必要があります。こうして新しい知識を取り込んだあとに実戦でその知識の定着を図るというのが上達法の王道といっていいでしょう。もちろん、個人の好みもあるのですべてのトレーニング項目を同じペースで行う必要はありません。自分に合った勉強法を見つけ出すこと自体も上達の一過程と思います。

今回は定跡の研究、手筋の習得、棋譜並べの3つに有効な計5冊を紹介していきます。なお、振り飛車には角道を開ける振り飛車(角交換系振り飛車)と閉じる振り飛車(ノーマル振り飛車)があります。どちらも有力ではあるのですが、どちらを勉強すべきか迷ったら、序盤から乱戦になることの少ないノーマル振り飛車を指してみることをおすすめします。

(1)藤井猛 『四間飛車の急所(1)』(浅川書房)

最初に紹介するのは四間飛車の定跡書です。定跡書とあってそのカバー範囲は広く、5七銀左戦法にはじまり居飛車穴熊、4六銀右戦法、5筋位取り、玉頭位取り、左美濃、棒銀、右四間飛車、そしてミレニアムという9つの戦型を扱っています。本書はいわば、四間飛車に対する居飛車側の対策ごとに章立てをした、四間飛車対居飛車の歴史書とも呼べる総論的な一冊なのです。本書には、いま流行の角交換四間飛車や、一時期プロ棋界を席巻した藤井システムといった戦法は出てきません。むしろ、これらの流行戦法が出現する下地となった、四間飛車の基礎理論を知るための本であると知っておいてください。

個人的に勉強になったのは、右四間飛車(第8章)に関する次の局面。(第1図)

【第1図は△7三桂まで】

居飛車の右四間飛車+端玉銀冠に対して漫然と組み合うと図のようになりますが、ここから▲3五歩△同歩▲3八飛と一方的に動かれては四間飛車側が不満。この戦型では第2図のように△4三銀型のまま組むのがいいのではないかというのが著者の提案です。

【第2図は△6五歩まで】

こうすれば、▲3八飛に対しては△3二飛▲3五歩△同歩▲同飛△2二角と強く反発できるので四間飛車が有望となります。(第3図)

【第3図は△2二角まで】

このように、四間飛車の長い歴史をまとめ上げるだけでなく、さりげなくかつ繊細な序盤研究も行き届いているのが本書の魅力といえそうです。

(2)小倉久史・山本博志『三間飛車新時代』(マイナビ)

四間飛車対居飛車の戦いを見て、振り飛車は自分から攻めることはできないのかなと不安になった方もいるのではないでしょうか。そんな方におすすめしたいのがこちらの定跡書。三間飛車の名手・小倉久史七段が当時奨励会員三段だった山本博志四段の協力を得て書き上げた本書は、左美濃や居飛車穴熊といった居飛車の持久戦策に対して積極的に攻めを仕掛けていく序盤戦術が数多く扱われています。

初段に近くなると、対戦相手が居飛車穴熊に組んでくることがよくあるでしょう。穴熊には四間飛車など他の振り飛車で対抗することも十分可能なのですが、ここでは、いまやすっかり有名になった三間飛車の作戦を紹介します。

【第4図は△3一金寄まで】

第5章『△5筋不突き穴熊VS▲トマホーク戦法』より。居飛車は穴熊に組みきって安心していますが、ここから三間飛車の猛攻が始まります。(第4図)

▲1三桂成!△同角▲1四歩△2四角▲1三歩成△同香▲同香成△同桂
▲1四歩△1二歩▲1三歩成△同歩(第5図)

いきなり桂を成り込むのがインパクトのある攻めです。

【第5図は△1三同歩まで】

一見、駒の損得はなく互角に見えますが...

▲9五歩△7四飛▲7五歩△8四飛▲7四歩△同飛▲同飛△同歩となって飛車交換。ここから数手進んで...

【第6図は▲4二角まで】

飛車と角を急所に打ち込んで三間飛車優勢。(第6図)居飛車穴熊側は桂香がいなくなって弱体化しているのに比べ、立ち遅れているかに見えた先手玉はむしろ戦場から遠のいているのも見逃せません。

このように、居飛車の持久戦策に対して端攻めなどを駆使して積極的に攻めていく、新しい三間飛車が振り飛車の「新時代」を築くのかもしれませんね。本書ではこのトマホーク戦法のほかにも5つの作戦が紹介されており、攻め好きな方にうってつけの仕上がりになっています。

(3)藤井猛『相振り飛車を指しこなす本(1)~(4)』(浅川書房)

振り飛車党になるにあたっては相振り飛車戦を避けて通ることはできません。具体的には、初手から▲7六歩△3四歩▲6六歩として振り飛車を明示したときに、△3二飛(第7図)や△3三角として振り飛車にされた経験がある振り飛車党は多数派でしょう。

【第7図は△3二飛まで】

本シリーズは次の一手で相振り飛車の指し方を学ぶ本です。1ページにつき基本的に1手だけ進める形式なので、符号が追いきれなくて挫折する心配もないでしょう。相振り飛車戦は玉の囲いごとに分類されることが多く、本書の各巻もおおまかにはそのように分類されます。第1巻では二枚金(金無双囲い)、矢倉囲い、穴熊囲いへの攻め方を学びます。続く第2巻ではおもに美濃囲いでの戦いを扱い、さらに第3巻では矢倉囲いの応用的な戦い方を勉強します。第3巻の最終章と第4巻にわたっては、(4手目)△3三角戦法と呼ばれる、後手番ながら非常に攻撃力の高い戦法を紹介しています。各章の最後にあるチェックポイントや、要所要所に出てくる上級アドバイスを使って重要事項を復習できるのが読者に親切な設計です。

個人的に気に入っているのがこの第8図です(第1巻・第4章「穴熊への攻め」より)。

【第8図は△3三桂まで】

実戦にも出てきそうな図ですが、ここから▲7四歩△同歩▲8五桂!と軽く跳ねて手になっています。以下後手は△4五歩と待つくらいですが、▲7三歩△同桂▲9三桂成!の逆モーションが好手筋。(第9図)

【第9図は▲9三桂成まで】

以下は△9三同香に▲9四歩で端が突破出来ました。以前の記事にも出てきましたが、端攻めは有段者を目指すうえで欠かせないスキルになりそうですね。

これ以外にも、この4冊のシリーズでしっかり定跡と手筋を勉強して、相振り飛車を得意戦法にしてしまいましょう。

(4)杉本昌隆『速効!振り飛車の絶対手筋105』(マイナビ)

他の多くの戦法と同様に、振り飛車戦にも戦型固有の手筋がたくさん出てきます。盤面全体が戦場となる相居飛車戦とは違い、お互いの玉がいる方面でさほど戦いの起こらない(居飛車対振り飛車の)対抗形では飛車角周辺の手筋を覚えておくことが上達の大きなカギとなるでしょう。グンと読みの力を省略することができますね。本書は、対抗形によくでてくる攻めと受けの手筋を、部分図と全体図を使って解説した手筋本となっています。

【第10図は△7四歩まで】

中飛車の序盤戦にありがちなこの局面。(第10図)普通に指すなら▲6五歩からの一歩交換でしょう。ここでよりスケールの大きい構想で指すとすると...

▲6八飛として次の▲6五歩を見せるのが第一歩。後手は△7三桂として6五の地点を守りますが、そこで▲7八飛が継続の一手。(第11図)

【第11図は▲7八飛まで】

この手は次に▲9五角の覗きを見ているので△9四歩としてこれを防ぎますが、そこで▲5九角と引くのが振り飛車の遠大な構想。(第12図)

【第12図は▲5九角まで】

次に▲7五歩から歩を交換して▲7六飛と石田流に組み替える手段ができました。桂を跳ねさせることによって△7二飛のような対抗策を消しているのがポイントです。

この例のように、手筋はその手や構想を知らないと自分で考えつくのは大変という特徴があります。本書で繰り返し勉強して、実戦でぱっと手筋がひらめくようになれば上達間違いなしでしょう。

(5)久保利明『久保振り飛車実戦集』(マイナビ)

最後に紹介するのは、棋譜並べに最適な実戦集です。著者の久保九段は「さばきのアーティスト」として有名ですね。そのキャリアの初期では角道を閉じる四間飛車を使っていました。ここ10数年は先手なら石田流三間飛車を、後手ならゴキゲン中飛車をという両面作戦を使っています。このように、複数の得意戦法を持つのも初段以上を目指すうえでは必要になってくるでしょう。

【第13図は△5二飛まで】

【第14図は▲7八飛まで】

本書はこれら3つの戦法をそれぞれ20局ずつ詳しい解説付きで掲載しています。久保九段は中盤の仕掛け周辺の手のつくり方が軽く秀逸で、それでいながら中盤以降はものすごい馬力を発揮する棋風と思います。また、終盤で不利な状況に陥っても簡単には土俵を割らない「粘りのアーティスト」としての側面も存分に発揮されており、机上の勉強だけでは学べない終盤術も身につくことと思います。個人的なおすすめ棋譜は、スパッと勝つ将棋としては第18局田村康介七段戦、粘り勝ちの将棋としては第38局郷田真隆九段戦を並べるのをおすすめします。

おわりに

今回は振り飛車を指して初段を目指すための棋書を紹介しました。旧来の常識を打ち破り、振り飛車には居飛車からの攻めを待つだけでない様々な戦術が生まれてきています。これを機に自分の好みの振り飛車の戦い方をみつけて初段の壁を突破しましょう!

水留啓

ライター水留啓

ねこまど将棋教室講師。こども教室担当として積んだ指導経験を生かし、大人向け講座「平手初心者のための棒銀/四間飛車/中飛車入門講座」を開講。初心者・初級者を中心に、幅広い層に将棋の楽しさを伝えている。趣味は棋書収集で、最近は自宅の本棚が足りなくなってきているのが悩み。

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