快進撃の初タイトル。令和最初の全国大会の結果は?第32回アマチュア竜王戦レポート

快進撃の初タイトル。令和最初の全国大会の結果は?第32回アマチュア竜王戦レポート

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年06月27日

6月22、23日に第32回アマチュア竜王戦全国大会が山形県天童市「滝の湯ホテル」にて開催された。全国の都道府県の予選を勝ち抜いた代表54人に招待選手2人を加えた総勢56人で行われる。優勝賞金50万円の他、上位入賞者は第33期竜王戦へアマチュア代表として出場できる魅力のある大会だ。また、アマ竜王戦は全国大会で唯一優勝者にアマ七段が贈られる大会でもある。

現朝日アマ名人でアマタイトルを多数獲得している横山大樹さん(北海道)、昨年と3年前の準優勝者の小山怜央さん(招待・神奈川)、元奨励会三段で現アマ名人の鈴木肇さん(神奈川)、第24回大会優勝で加古川青流戦で優勝経験もある稲葉聡さん(愛知)ら、プロ公式戦でもお馴染みのアマトップクラスがずらりと並ぶ。

第32回アマチュア竜王戦 予選

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予選は4人一組で2勝通過、2敗失格のリーグ戦。1勝1敗は隣の組と対戦するシステムだ。強豪ぞろいで、実績のある選手でも予選を通過するのも大変だ。元アマ名人で、加古川青流戦にもたびたび出場している天野啓吾さん(兵庫)はまさかの2連敗。今回は調子が出なかったようだ。

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昨年優勝の桐山隆さん(招待・栃木)は予選1回戦で稲葉さんに敗れる苦しい出だし。2回戦は勝ったものの、3回戦で溝上裕亮さん(岡山)に大熱戦の末に敗れて予選落ちとなってしまった。

本戦1回戦

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本戦1回戦で鈴木肇さんと、アマ棋界のレジェンド遠藤正樹さん(埼玉)の重厚なカードが実現。相穴熊からねじり合いとなったが、鈴木さんのミスに乗じ遠藤さんが端攻めで押し切る。昨年のアマ名人戦準決勝の借りを返す。初のアマ竜王を狙う遠藤さんだったが、続く2回戦で横山さんに敗れた。

本戦2回戦

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2回戦からは2日目。稲葉さん以外の15人は初優勝を狙う。

優勝候補本命の小山さんがここで大苦戦。3年前にベスト8の実績がある森﨑盛一朗さん(熊本)に相穴熊から一方的に攻められてしまう。それでも不屈の粘りを見せて、お互いに相穴熊の位置から玉が動かないままで240手の死闘となり、最後は逆転勝ちを収めた。

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古作登さん(奈良)は56歳ながら、日頃の鍛錬と若々しい将棋で2年続けてベスト4入りを果たしている。今は将棋倶楽部24で3000点に到達しているそうだ。今年もベスト8に勝ち上がり、準々決勝の坂本拓己さん(和歌山)は角換わりの切り合いに。最後は古作玉に詰みが生じていたが、坂本さんが選択を誤り九死に一生を得る。古作さんが3年連続のベスト4入りを決めた。

準決勝

準決勝は小山─古作、横山─小野内戦となった。小野内さんはノーマークながら、秒読みでも安定感のある指し回しで予選から無敗で勝ち上がってきた。

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小山さんは準々決勝で稲葉さんを相手に猛烈な攻めで押し切った。やや無理な攻めでも強引に通してしまう勢いを持っている。古作さんと小山さんは予選2回戦でも対戦し、小山さんが制している。古作さんは前日の修正案を用意していたそうだが、そうは進まず。作戦勝ちから猛攻を決めた小山さんが持ち時間を半分近く残したまま押し切って決勝へ。この4年で3度の決勝進出で、悲願の初優勝を目指す。

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小山さんと並ぶ優勝候補の本命が横山さんだろう。2年前の準優勝で、小山さんと初優勝を懸けての頂上決戦になるかと思われたが......。矢倉から小野内さんが手厚い指し回しでリード。小野内さんは秒読み、横山さんは時間を多く残していたが、小野内さんは秒読みでも崩れない。差をつけたまま小野内さんが押し切り、終わってみれば横山さんがまさかの完敗となった。ダークホースの小野内さんが快進撃で決勝進出。

いよいよ決勝。優勝はどちらの手に?

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小山さんと小野内さんは1つ違いで、高校時代は岩手だったため、多くの対戦を重ねてきたそうだ。大学になってからも学生名人戦などで対戦している。小野内さんによると高校時代は3~4割、大学以降は全敗だったとのこと。角換わりとから、早指しの小山さんに対し長考派の小野内さんは時間を使っていく。攻めが決まり、時間、形勢ともに小山さんがリードすることとなった。それでも小野内さんも最善の粘りを見せて、先手に楽を指せず、ミスに乗じて差をつめていった。

【図は△2三同玉まで】

図は難しい形勢になっているが、▲2五歩と合わせておけば少し先手に分のある形勢だった。本譜の▲4四歩が敗着。小野内さんはチャンスを見逃さず、△7七歩成▲同金△7六歩と反撃。以下▲4三歩成△同飛▲3二馬△同玉に▲5四角と打てなければおかしいが、それには△6八銀▲同玉△7七歩成▲同玉△8五桂から詰みがある。終盤戦での誤算は痛く、先手は修正が利かなくなってしまった。勝ちになってからも小野内さんは落ち着いて先手玉を追い詰め、最後は詰まして小山さん投了。横山、小山とアマトップ2人をなぎ倒し、小野内さんが初の全国優勝を果たした。小山さんは4年間で3度目の準アマ竜王と悔しい結果となった。

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小野内さんは「ベスト4に入った時点で満足のつもりでした。負けるんだろうと気楽に指したのが良かったのかもしれない。竜王戦は恥ずかしくない将棋を指したい」と話した。

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ニューヒーローの誕生となった令和最初の全国大会。新時代のアマ棋界はどうなっていくだろうか。


渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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