"4連覇なるか"佐藤天彦VS"三冠なるか"豊島将之。名人戦第77期七番勝負の展望は?

ライター: 相崎修司  更新: 2019年04月10日

今年も名人戦の季節がやってきた。3連覇中の佐藤天彦名人に挑戦するのは豊島将之二冠(王位・棋聖)。将棋ファンが最も見たかった七番勝負ではないだろうか。棋士番号も1つしか違わない両者の対決は、まさに「令和」の新時代を占う、格好の勝負である。

佐藤名人の18年度成績は27勝15敗、勝率は0.643。名人防衛に加えて銀河戦優勝はまずまずと言えるかもしれないが、王将リーグでは挑戦にあと一歩及ばず、王位戦でも予選決勝敗退でリーグ入りを逃すなど、特に下半期において本人にとってはもどかしい成績が続いたかもしれない。だが持ち時間9時間の名人戦では無類の力を発揮することは、過去の実績が証明している。敗戦だった前期の第1局が名局賞を受賞したことも、それを裏付けている。

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佐藤天彦名人の四連覇となるか(写真は第76期名人戦七番勝負第5局)

対する豊島二冠。昨年度の成績は35勝20敗の勝率0.636。悲願の初タイトルである棋聖を奪取し、勢いに乗って王位獲得も果たしての二冠王となった。だがその反動か、こちらも下半期はやや勢いが止まったようにも思える。10月から3月までの11勝7敗というのは本人にとって喜べる数字ではないだろう。それでもA級順位戦では8勝1敗と他者を圧倒し、前期のプレーオフ敗戦という鬱憤を晴らした。

そして豊島は最優秀棋士賞受賞という金看板を引っ提げての挑戦である。そういう意味でも期待がかかるが、過去に前年度の最優秀棋士賞受賞者が名人挑戦を果たしたのは11例。その中で奪取に至ったのは6例と、意外と最優秀棋士賞受賞者の名人奪取は多くない。前年度の活躍の反動が名人戦に現れたというよりは、名人たるもの最優秀棋士とほぼ同様の実力を発揮すると考えるべきだろうか。

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最優秀棋士賞を受賞した豊島将之二冠(写真は第77期順位戦A級最終局)

過去の対戦成績は佐藤名人の6勝11敗とやや差がついているが、直近1年では1局しかぶつかっていない(豊島勝ち)。そのような状況での戦型をどのように予想するか。

両者ともに居飛車党であり、特に最近の対局では角換わりの出現率が圧倒的である。だが直接対決では3局しか角換わりが指されていない。代えて横歩取りが6局で最多となる。最近のプロ棋界では横歩取りの後手番がつらいとされているが、佐藤名人の十八番ともいえる後手番横歩が見られるかどうか。

また豊島後手で3局の中飛車、佐藤後手で1局の三間飛車という例がある。このシリーズでも振り飛車が見られるかどうか。可能性としては低いだろうが、相手の研究の意表を衝くという戦略はあるかもしれない。

佐藤が七番勝負を制すれば名人戦四連覇となり、二十世名人も現実味を帯びてくる。そして豊島が奪取すれば三冠王となり、戦国時代と言われる現代棋界の中でも一歩抜け出す存在になることは間違いない。両者にとって実に大きい七番勝負は、4月10日に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」でスタートする。

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(写真は第76期名人戦七番勝負第5局)

撮影:常盤秀樹

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2016年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、叡王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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