里見香奈女流名人が最多タイ記録となる10連覇達成。宝刀の中飛車で防衛した第45期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負を振り返る

里見香奈女流名人が最多タイ記録となる10連覇達成。宝刀の中飛車で防衛した第45期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年02月21日

注目対局プレイバック

第45期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負が1月20日に開幕した。里見香奈女流名人に伊藤沙恵女流二段が挑戦する構図は2年連続だ。タイトル戦では5度目の顔合わせで、過去4回はいずれも里見が制している。里見は10連覇、伊藤は初タイトルが掛かったシリーズとなる。それでは、女流名人戦を第1局から振り返ってみよう。

第1局

jomeijin2019_01.jpg
岡田美術館で行われた第1局 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより

第1局は岡田美術館で開催。里見の中飛車に対し、伊藤は居飛車から中央に手厚く構える。

【第1図は▲4六銀まで】

好形の後手はここから鮮やかなさばきを見せる。まずは△4二飛で飛車を活用し、▲4五歩の受けに△4四歩▲同歩△同角が先手の飛車を目標にした動き。以下▲2八飛に△5三角▲4五歩△3三桂▲2四歩△4五桂で後手の攻め駒が綺麗にさばけた。振り飛車で左桂を△3三桂~△4五桂と活用できてはたまらない。そのまま後手が大差で押し切っている

jomeijin2019_01k.jpg
10連覇へ好スタートをきった里見女流名人と敗れた伊藤女流二段 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより

第2局

jomeijin2019_02.jpg
出雲文化伝承館 松籟亭で行われた第2局 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより

第2局は里見の出身地出雲で開催。里見の中飛車に伊藤は相振り飛車で対抗。伊藤の不用意な動きに里見の目が光る。

【第2図は△3六同飛まで】

第2図はまだ序盤だが、ここで▲4六銀△3二飛▲2六歩と居飛車に切り替える方針が柔軟な発想。以下△4四歩▲7九角△4二銀▲2五歩に△3四歩と受けるようではつらい。ほうっておくと▲3五銀と出られてしまうからだが、自分で交換した3筋の歩を低く受けるようでは大きな手損だ。▲2八飛と居飛車に戻した里見が序盤でリードを広げる。終盤一瞬危険もあったが、結果的には里見の快勝となった。

jomeijin2019_02k.jpg
2連勝で里見女流名人は防衛に王手をかけた 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより

第3局

jomeijin2019_03.jpg
関根名人記念館で行われた第3局 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより

第3局は恒例となっている野田市の関根名人記念館にて。序盤の駆け引きの末、里見の角交換振り飛車となった。伊藤は左美濃でじっくりと駒組み。

【第3図は△4六歩まで】

里見の動きがやや無理で、ここは桂得の先手が良くなっている。第3図で▲3六角がもったいないようだが手堅い受け。以下△4八角成▲同飛△同龍▲5八金引として、先手の堅陣は崩れない。後手の攻めさえ防いでおけば3三のと金や桂得が生きてくる。本局は伊藤の快勝譜となり、1勝を返した。対里見の連敗を10でストップする大きな勝利。

jomeijin2019_03k.jpg
1勝目をあげた伊藤女流二段 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより

第4局

jomeijin2019_04.jpg
第4局は将棋会館で行われた 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより

第4局は里見の先手中飛車に伊藤は居飛車穴熊へ。様々な戦型が見られるシリーズとなっている。

【第4図は△5五香まで】

第4図の△5五香で金をはがせる形になり後手が駒得だが、大駒の働きが悪いのが痛い。また、5三にと金がいて先手は攻めが切れる心配もない。図から▲2五桂で金をはがすのが急所の攻め。以下△5八香成▲同金△8九馬▲3三桂成△同角▲4三金△3一金打に▲5二歩と飛車の利きを止めて後手は粘るのが難しくなった。最後も手堅くまとめて里見の快勝。

jomeijin2019_04k2.jpg
女流名人戦10連覇を達成した里見女流名人 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより

里見は3勝1敗で女流名人10連覇達成。女流棋戦での10連覇は林葉直子女流王将(当時)と並ぶ最多タイ記録。来期は新記録の11連覇がかかる。

2018年度の里見は開幕の女流王位戦でこそ失冠したものの、秋からの女流王将戦、女流王座戦、倉敷藤花戦、女流名人戦はいずれも盤石の内容で防衛となった。ここからはマイナビ女子オープン、女流王位戦、ヒューリック杯清麗戦でタイトル獲得を目指す戦いが続く。

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

このライターの記事一覧

高崎一生

監修高崎一生六段

棋士・六段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています