羽生九段と藤井七段が歴史的な記録を樹立した2018年2月の将棋界を振り返る

羽生九段と藤井七段が歴史的な記録を樹立した2018年2月の将棋界を振り返る

ライター: 生姜  更新: 2019年01月06日

2018年振り返り

2018年の将棋界を1か月ごとに振り返っていくこのシリーズ。今回は2月を振り返ります。華やかなニュースが多い月でしたが、その一方で深夜の大激闘がありましたね。将棋ファンのみならず、多くの人に感動を与えた月を見てみましょう。(肩書・段位はいずれも当時)

羽生善治竜王、国民栄誉賞受賞(2018年2月13日)

将棋界から初の国民栄誉賞受賞者が誕生しました。これまで築いた数々の実績が評価された、まさに前人未到といえる偉業です。囲碁界からは井山裕太七冠(肩書は当時)が同時に選出され、永世七冠と現七冠による受賞となりました。記念品には両者の「七」にちなんで七宝(しっぽう)で彩られた硯箱に収められた書道のセットが贈られています。羽生竜王は今後の目標として「自分なりの出来る限りの限界に挑戦していけたらと思います」とコメント。今後も我々将棋ファンに感動を与えてくれることでしょう。

【第1図は▲7六歩まで】

2月1日に指されたA級順位戦10回戦、屋敷伸之九段との対局を紹介します。図は最終盤。△7五飛の王手に▲7六歩と受けたところ。ここでズバッと△7六同飛が決め手。▲7六同玉に△6五角までで羽生竜王の勝ちとなりました。▲7七玉に△8七金と追って先手玉は即詰みです。

藤井聡太五段、朝日杯優勝(2018年2月17日)

1月に紹介した藤井聡太四段ですが、2月1日の順位戦の対局に勝ち、C級1組に昇級を決めて五段に昇段していました。そのわずか16日後のこと。早くも六段に昇段する可能性があったのです。それがこの日行われていた朝日杯。もう結果はみなさんご存知ですね。五段昇段からわずか16日で六段に昇段。記録的な出世スピードは世間を大いに驚かせました。

準決勝では羽生善治竜王に勝利。決勝の相手は今年大活躍した広瀬章人八段。その将棋からやはり印象的だった一手を紹介します。

【第2図は▲7三玉まで】

有名な局面なので盤面を見ただけでもうわかるかもしれませんね。ここで▲4四桂が妙手。金取りになっているので△4四同飛と取りたいところですが、▲4五歩と打たれて3七角を取られてしまいます。実戦は△2六角成▲3二桂成で、戦力の補充に成功した藤井五段が勝勢になりました。藤井五段はこの一番を制し、全棋士参加棋戦優勝の最年少記録を樹立しました。

420手の死闘(2018年2月27日)

将棋は通常100手台で終わることが多く、200手を超えると長手数といわれています。しかし今年、なんと420手まで対局が行われるということが起こりました。

事件が起こったのは竜王戦6組ランキング戦▲牧野光則五段-△中尾敏之五段戦。中尾五段はフリークラスに在籍していました。フリークラスは順位戦C級2組で3回の降級点を取った棋士が在籍する場所です。(森内俊之九段のように自ら宣言するケースもあります)フリークラスに落ちた棋士は10年以内に一定の成績を挙げないと引退に追い込まれてしまうのです。中尾五段は今年がフリークラス10年目。本局に敗れるとC級2組昇級がかなり厳しくなり、現役引退に近づいてしまうという状況でした。

負けたら終わり。そんな無情な言葉が葛藤していてもおかしくない背景がある中で、将棋は相矢倉から相入玉となりました。後手が持将棋の引き分けに持ち込めるかどうか、あと1点が取れるかどうかという攻防が続きます。

【第3図は▲9四歩まで】

図は403手目の局面。持将棋の24点まであと1点です。ここで△9五歩が好手で中尾五段の辛抱が実った格好となりました。▲9五同金△同竜▲9六銀打に△8六竜とかわし、▲8七馬△8五歩▲7八馬△7七金▲6九馬△6七香▲2五馬△9六竜で後手が1点をもぎ取りました。終局時刻は1時44分。持将棋が成立して指し直しとなりました。その指し直し局は牧野五段が100手で勝利。指し直し局の終了時刻は4時50分でした。

この持将棋局はメディアにも取り上げられ、2017年度の将棋大賞において名局賞特別賞を受賞しました。

中尾五段の戦いぶりは胸を打つものがありました。棋士はみな厳しい世界を戦っています。その中で羽生竜王と藤井七段の活躍はまさに歴史的です。歴史的といえば去年、歴史的なプレーオフがありましたね。次回は運命的な結末となったリーグ戦を中心に2018年3月を振り返ってみましょう。

生姜

ライター生姜

1993年生まれ。将棋連盟モバイルを中心に活動する中継記者。2018年現在は最年少の記者。棋士の食事注文に肉生姜焼き定食があると反応する。

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