ライター相崎修司
藤井聡太五段、史上最年少での棋戦優勝なるか? 棋戦優勝・タイトル獲得のこれまでの年少記録トップ10
ライター: 相崎修司 更新: 2018年02月17日
朝日杯将棋オープン戦における藤井聡太五段の活躍が注目を集めている。
2月17日に行われる準決勝で、公式戦初の対羽生善治竜王戦が実現したこともその一因だが、羽生竜王を破り、さらに同日に行われる決勝も制すれば、史上最年少(15歳6ヶ月)での棋戦優勝となるからだ。
2018年1月14日に名古屋市「東桜会館」で行われた第11回朝日杯将棋オープン戦本戦、佐藤天彦名人と対局する藤井聡太四段(現・五段)。撮影:吟
過去の最年少優勝は、加藤一二三九段が1955年に当時15歳10ヶ月で優勝した「六・五・四段戦」(のちに古豪新鋭戦、名棋戦を経て、現在の棋王戦に統合)である。
当時の加藤に続く棋戦年少優勝者は以下の通りだ(10位まで)。
谷川浩司 16歳10ヶ月 若獅子戦 1979年
羽生善治 16歳11ヶ月 若獅子戦 1987年
森内俊之 17歳0ヶ月 新人王戦 1987年
加藤一二三 17歳0ヶ月 東京新聞社杯高松宮賞争奪将棋選手権戦 1957年
羽生善治 17歳2ヶ月 天王戦 1987年
谷川浩司 17歳7ヶ月 名棋戦 1979年
森内俊之 17歳8ヶ月 早指し新鋭戦 1988年
糸谷哲郎 18歳0ヶ月 新人王戦 2006年
羽生善治 18歳1ヶ月 新人王戦 1988年
このうち、若獅子戦、新人王戦、名棋戦は高段者が登場しない棋戦だが、それでも10代での棋戦優勝は快挙である。さらに加藤の東京新聞社杯は、当時の大山康晴名人や升田幸三九段ら、並み居る強豪が参加する中での優勝ということで価値が高く、また羽生の天王戦は時の名人を倒しての優勝ということでも注目を集めた。
なお、参考記録として1921年に当時16歳の木村義雄十四世名人が、國民新聞(東京新聞の前身の1つ)主催で行われた棋戦で優勝している、ということを付け加えておく。
また、八大タイトルの最年少記録は、1990年に屋敷伸之九段がわずか18歳6ヶ月で棋聖を獲得している。タイトル獲得の年少記録は以下の通りだ。
1. 屋敷伸之 18歳6ヶ月 棋聖 1990年
2. 羽生善治 19歳3ヶ月 竜王 1989年
3. 渡辺明 20歳8ヶ月 竜王 2004年
4. 中原誠 20歳10ヶ月 棋聖 1968年
5. 谷川浩司 21歳2ヶ月 名人 1983年
6. 郷田真隆 21歳5ヶ月 王位 1992年
7. 三浦弘行 22歳5ヶ月 棋聖 1996年
8. 塚田泰明 22歳11ヶ月 王座 1987年
9. 中村修 23歳4ヶ月 王将 1986年
10. 高橋道雄 23歳5ヶ月 王位 1983年
上記は初タイトル獲得時のものなので、厳密な意味での年少記録では、初獲得の5ヶ月後に(当時の棋聖戦は1年2期制)防衛を決めた屋敷や、1991年3月に自身2期目のタイトルとなる棋王を獲得した羽生などが入ってくることを付記しておく。
ちなみに、歴代最年少タイトル獲得者の系譜を紐解くと、初のタイトル戦となった第1期名人を木村義雄が制したのは32歳9ヶ月(1937年)の時、初の20代タイトル保持者となったのが大山康晴十五世名人で、1950年に27歳3ヶ月で九段戦(竜王戦の前々身棋戦)を制している。その年少記録を大幅に破ったのが上記の棋聖戦での中原だった。中原の数字を更新したのが屋敷と羽生で、10代でタイトルを獲得したのはこの2名しかいない。
また、四段昇段から挑戦まで最短でも5年かかる名人を21歳で獲得した谷川、史上初の四段タイトル保持者となった(現行の規定では挑戦権獲得で五段昇段が決まるので更新不可能)郷田の偉業にも触れておきたい。
さらに、三浦の棋聖は当時の羽生七冠を破ってのものということでも話題を集めたし、塚田、中村、高橋の3名の活躍はそれぞれ「55年組」「新人類棋士」と、新時代の到来として、注目された。
惜しくもベスト10に漏れたのが、2010年に王位を獲得した広瀬章人八段である。当時23歳7ヶ月だった。広瀬の獲得以降も、糸谷哲郎、佐藤天彦、菅井竜也、中村太地といった20代でのタイトルホルダーが続々と登場している。
局後のインタビューに答える藤井四段(現・五段)。撮影:吟
藤井五段が最速でタイトル獲得の可能性があるのは、現在進行中の王座戦であり、今年の9~10月にその可能性がある。実現すれば16歳2~3ヶ月でのタイトル獲得となるので、屋敷の記録を大幅に更新する。昨年は不滅の記録と言われた最多連勝記録を更新した新鋭が、新たな大記録を打ち立てるか、注目である。