ライター奥野大児
女流棋士に聞いた、美しく指すコツとは? 綺麗な駒の持ち方を動画でマスターしよう
ライター: 奥野大児 更新: 2017年12月19日
テレビやネット将棋を見ていて美しいと思うのがプロ棋士の対局姿勢、とりわけ着手するときの手つきです。
盤面を真上から映しているとき、盤面で動きがあるのはすっと手が伸び、ぴしりと指す動きだけです。あのアングルでは棋士の手以外に動くものが無いことも相まって、着手の美しさがひときわ目立ちます。
自分が「観る将」ではなく「指す将」、とりわけ将棋道場や将棋大会などリアルに駒を持って指す場合には綺麗に駒を操れた方が見栄えも良く、美しいものです。そこでこのたび、高浜愛子女流2級に指す際の手つきを見せて頂きました。
基本は人さし指の爪側で駒の裏を、中指の腹で駒の表を挟んで着手する
基本の駒の持ち方は、まず親指と中指で駒の表裏を、もしくは人さし指と薬指で駒の側面を挟んで持ち上げ、空中で人さし指と中指で挟んだ形にしてから着手する、という流れになります。
まず人さし指と薬指で挟むように持ち上げます。
空中で親指を使いながら、人さし指を駒の裏面に持っていきます。
人さし指と中指で駒を挟んだ状態にし、着手します。
駒を置く場所について高浜先生に質問しました。
高浜「私は真ん中より少し下に置きます。これが見やすさを感じるんです。真ん中に置く棋士には佐藤康光先生、羽生善治先生、木村一基先生などがいらっしゃいます。マスの下のラインに駒尻を揃える棋士には戸辺誠先生、瀬川晶司先生、近藤誠也先生などがいらっしゃいますよ」
駒が成る場合
敵陣に駒が侵入する際などには駒が成ります。この際駒を裏返しながら着手するのですが、これが少し複雑かもしれません。
まずは高浜先生の着手を見てみましょう。
中指は駒の上側に触れているものですが、高浜プロの手つきでも最初の方から成った際の上の側(角の裏側の龍馬の側)に中指が当たっているのがわかりますね。
あとは通常の着手のように、人さし指を駒の下側(成るので、角行と書かれたほうが下側になります)にして着手します。
これがスムーズにできれば基本はほとんど卒業と言えそうです。
下の段に駒がある場合は重ねる場合とそうでない場合とある
下の段に駒がある場合、自分の駒でも敵の駒でも、駒を置くときに少し重ねるように置き「パチパチ」っと音をさせるケースがあります。
高浜プロの場合は、王や飛車・角といったサイズの大きな駒の場合は一つ下の段に重ねて着手する場合が多いそうです。しかし駒の大きさ・前後のマス目の状況、対局中の気合の入り方によって変わりますし、必ずしもこうしなければならない、ということではないようですね。
味方の駒の前に駒を動かす時の自然な例です。一つ手前側の駒の駒頭(こまがしら)に少し重ねるように着手し、駒を滑らせます。
高浜プロは歩のような小さな駒であれば、直接マスの真ん中に駒を置く形で着手することが多いそうです。
この例では一つ手前の駒は相手の駒ですが、相手の駒でも少し重ねるような置き方をしても問題ないようですね。
この例では、一つ手前・相手側の駒の駒尻に重ねるように着手しています。
ただし横にスペースがある場合、その横に着手してから滑らせる、という着手もあるようです。
駒台には綺麗に置こう。
取った駒を駒台に綺麗に並べるのも着手の際の美しい所作の一つです。取った駒を駒台に乗せてから着手します。
駒台では、駒は左右の辺同士を併せて扇形に並べます。
「歩と歩以外の駒で段を分けていることが多いですね」と高浜プロ。
扇形に並べられた駒は美しいですね。
キレイに指して自分も相手も気持ちよく
アマチュアの場合、将棋の指し手が綺麗だから強いとは限りません。しかしプロ棋士の指し手を見ていると、それは必ずといって良いほど美しく、人によっては力強く、舞うような手つきであるものです。
また、指し方が綺麗であれば対局相手もさわやかな気持ちになるものです。将棋には様々なマナーもありますが、せっかくリアルに将棋を指すのであれば綺麗な着手を心がけてみてはいかがでしょうか?