将棋コラム

里見香奈倉敷藤花VS伊藤沙恵女流二段。最強のタイトル保持者に最強の挑戦者が挑む。第25期大山名人杯倉敷藤花戦の展望は?

里見香奈倉敷藤花VS伊藤沙恵女流二段。最強のタイトル保持者に最強の挑戦者が挑む。第25期大山名人杯倉敷藤花戦の展望は?

更新: 2017年11月07日

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第25期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負、里見香奈倉敷藤花に挑戦するのは伊藤沙恵女流二段。第1局は11月7日、東京・将棋会館で行われる。第2局は26日、第3局は27日に岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」で行われる予定だ。

地域密着型のタイトル戦

倉敷藤花戦は、倉敷市、倉敷市文化振興財団、山陽新聞社が主催している。自治体が主催する女流のタイトル戦は本棋戦のみ。この美しい棋戦の名称は、倉敷市の市花が、藤であることにちなんでいる。倉敷市文化振興財団は、倉敷市とともに「全国小学生倉敷王将戦」や「青空将棋道場」も主催している。山陽新聞は今期全対局の観戦記を朝刊に掲載予定だ。地域一体となって将棋を盛り上げている。

棋戦名にある「大山名人杯」とは大山康晴十五世名人(1923-92年)のこと。倉敷市の出身で名誉市民にも選ばれている。大山十五世名人は女流棋界の振興に尽力した人だった。没後の93年に倉敷藤花戦がスタートしている。「倉敷市大山名人記念館」も同年に建てられた。記念館は将棋教室を開講していて、菅井竜也王位(岡山市出身)も教室の出身者。いまは菅井王位が講師(特別教室)を務めている。次代の倉敷藤花がここから誕生するかもしれない。

五冠を保持する最強者

女流棋戦のタイトル戦は6つ。タイトル保持者と挑戦者の番勝負は、春に開幕するマイナビ女子オープンを起点として、女流王位戦、霧島酒造杯女流王将戦、リコー杯女流王座戦、大山名人杯倉敷藤花戦、岡田美術館杯女流名人戦と続く。

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第24期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負第1局前夜祭での里見倉敷藤花。撮影:広報課

里見倉敷藤花は現在、女流王座、女流名人、女流王位、女流王将と合わせて五冠を保持しており、女流棋界の頂点に立つ存在である。今年春の第10期マイナビ女子オープンは挑戦者決定戦で敗れたものの、第11期も本戦ベスト8に勝ち残っており、六冠制覇の期待も懸かる。

倉敷藤花戦でも無類の強さを誇る。通算成績は30勝7敗、勝率は8割1分1厘、倉敷藤花獲得は7期。クイーン倉敷藤花の有資格者であり、過去8回の三番勝負でストレート勝ちが5回もある。

今期好調の挑戦者

本年度、最も強烈な印象を残した棋士といえば、やはり藤井聡太四段だろう。10月末時点の年度ランキングは全部門(対局数、勝数、勝率、連勝)で1位である。

伊藤女流二段は、その藤井四段に匹敵する成績をたたき出している。22勝6敗、勝率は7割8分6厘。対局数、勝数、連勝は本年度1位、勝率も10局以上の対局数では1位である。

倉敷藤花戦の通算成績は10勝2敗、勝率は8割3分3厘と抜群。受けの棋風で独特の感性を持つが、最近はバランスがよくなってきたとの声もある。自身初のタイトル獲得を目指す。

厚い壁

伊藤女流二段は先日、第44期女流名人戦でリーグ8連勝を達成し、挑戦権を獲得した。これで本年度は、女流王位戦、女流王将戦、倉敷藤花戦、女流名人戦で挑戦者となった。タイトル保持者は4つとも里見倉敷藤花である。

女流王位戦は3勝2敗、女流王将戦は2勝0敗で里見倉敷藤花が防衛している。先ほど伊藤女流二段の本年度成績を紹介したが、対里見戦を除くと、20勝1敗になる。これほどの成績を挙げながら、里見の厚い壁に跳ね返されてきた。

過去の実績や対戦成績を考慮すると、倉敷藤花戦は里見有利といえる。伊藤女流二段がどれだけ調子を上げてくるかがポイントだろう。最後に伊藤女流二段の談話を紹介する。

伊藤女流二段インタビュー

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第25期大山名人杯倉敷藤花戦挑戦者決定戦終局後の伊藤女流二段。撮影:常盤秀樹

――伊藤女流二段は子どもの頃から、同世代の棋士と何度も対戦してきました。里見倉敷藤花とはいかがでしょうか。

「第1期村山聖杯将棋怪童戦(2002年)の小学生高学年の部で里見さん、低学年の部で私が優勝し、(各部門の優勝者で行われる)決勝トーナメントの1回戦で対戦しました。里見さんが中飛車、私が居飛車の将棋だったと思います。そのときは私が勝ちました。里見さんがすごく悔しそうだったのを覚えています。」

――それから15年。いまはプロとして戦っています。

「里見さんは現役の奨励会三段で、女流のタイトルも五冠を保持されています。いま、最も強い女流棋士だと思います。」

――伊藤女流二段は、倉敷藤花戦の挑戦権獲得後のインタビューで、里見倉敷藤花とほかのタイトル戦で戦って力の差を感じた、と話されました。

「読みの量と深さに差があります。私より明らかに読んでいます。その一方で、無駄な手は最初から読んでいない。私はいろいろな手が気になって、つい読んでしまうのですが、里見さんはそういうことがなく、感覚面でも優れていると感じました。」

――女流王位戦と女流王将戦の経験も踏まえて、倉敷藤花戦の抱負をお願いします。

「いつも目いっぱい、ぶつかってきたのですが、これまで以上に将棋に対して向き合い、自分自身の力をつけなければいけないと感じています。相振り飛車ばかりでは読まれてしまうので、少しずつではありますが、将棋の幅を広げていきたいと思っています。」

牛蒡

ライター牛蒡

2010年、サラリーマンから「名人戦棋譜速報」の中継記者に転身。 現在は日本将棋連盟モバイルの中継業務も担当。ペンネームを「牛」に改名しようかと検討中。

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