大橋流と伊藤流、これが一体何かわかりますか? 対局前に必ず行うあの方法をご紹介

大橋流と伊藤流、これが一体何かわかりますか? 対局前に必ず行うあの方法をご紹介

ライター: 佐藤友康  更新: 2017年05月06日

将棋と言えば対局の内容・棋譜など、対局が始まってからの動向に注目が行きがちですが、対局前に必ず行っていることもあります。それが、駒を並べることと先手後手を決めるということです。このコラムでは、どのように駒を並べるのか・どのように先手後手を決めるのか、をご紹介していきます。

駒の並べ方の手順

対局開始の際には駒袋から駒を取り出し、1枚ずつ並べていきます。最終的に初形の形になれば、その並べる手順は基本的には自由です。しかし多くのプロ棋士は、長い歴史の中で受け継がれてきた、大橋流・伊藤流という二つの並べ方のどちらかを採用しています。「大橋」「伊藤」とは江戸時代の将棋家元で、一世名人の大橋宗桂、三世名人の伊藤宗看を祖としています。あなたもぜひ、この歴史を受け継ぎ、駒の並べ方を身に付けてみましょう。

大橋流、伊藤流に共通の手順

大橋流も、伊藤流も、途中までは同じ手順です。上座の棋士が駒袋から駒を盤上に出し、王将を所定の位置に置きます。それから下座の棋士が玉将を所定の位置に置くところから始まります。その後は一枚ずつ交互に上座・下座の順に並べていきますが、どの駒から並べていくかが、大橋流・伊藤流で異なります。

大橋流の並べ方

大橋流は、玉将以下、左金、右金、左銀、右銀・・・と左右対称に並べていきます。左桂、右桂、左香、右香、角、飛を並べ、歩は5筋、6筋、4筋、7筋、3筋、8筋、2筋、9筋、1筋と並べます。一段目・二段目・三段目の順に、真ん中から左右に広がるように並べると覚えておくとよいでしょう。プロでは大橋流で並べるのが主流となっており、およそ8割の棋士が採用しています。図として示すと、以下のような並べ方となります。

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伊藤流の並べ方

伊藤流は、玉将以下、右桂を並べるまでは大橋流と同じです。その後、左から順に歩を並べ、左香、右香、角、飛の順で並べていきます。並べている途中で、香・角・飛が敵陣に直射しないように配慮した並べ方といわれています。図として示すと、以下のような並べ方となります。

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双方が合計40枚の駒を並べるのには、2~3分程度かかります。お互いに駒を一つずつ丁寧に並べながら、これからの対局に向けて心を整えていくのです。毎回の対局前に、同じ並べ方をすることで気持ちを整えながら対局に臨めるよう、大橋流か伊藤流のいずれか好きな方を覚えてみてはいかがでしょうか。

先後の決め方

将棋の先手・後手を決めるには、振り駒をするのが一般的です。振り駒とは、歩を振り出して、表・裏のどちらが多く出るかで先手と後手を決める方法です。3枚で行うこともありますが、5枚で行うのが日本将棋連盟の対局規定で定められている正式なルールであり、上位者が行うのが作法となっています。

振り駒の手順

振り駒をする前にまず、駒を初形に並べます。その後に、上位者側が自分の歩を5枚取って手で混ぜるようによく振り、盤上、あるいは畳の上に軽く落とします。表(「歩」と書かれた面)の枚数が多いときは振った側が先手、裏(「と」と書かれた面)の枚数が多いときは振った側が後手となります。

駒が重なったり側面で立ったりした場合は、その駒は数えません。表と裏が同数の場合はもう一度振り直します。「表(歩)の枚数が多い場合に、振り駒を行った側が先手となること」を略して振り歩先(ふりふせん)といいます。

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(第66期王将戦 第1局より )

駒落ち戦の場合の先手・後手

駒落ち戦の場合、振り駒は行いません。駒を落とす上手側が常に先手となります。

プロの棋戦での先手・後手の決め方

プロの棋戦では順位戦などで、あらかじめ先手・後手が抽選で決められている対局がありますが、決まっていない対局では、通常は記録係が対局者の代わりに振り駒を行います。その際には、上座側の歩を5枚取り、上座側の対局者の振り歩先であることを確認してから振ります。

また、タイトル戦では記録係ではなく、対局開催地の市町村長や主催・協賛社の代表が振り駒を行うこともあります。なお、第3回将棋電王戦では、安倍晋三首相が振り駒を行ったことが話題になりました。

まとめ

今回は、駒の並べ方と先手後手の決め方についてお伝えしました。コンピュータ将棋ではどちらも自動で行われることが多いですが、歴史のある並べ方や振り駒を通じて将棋の長い歴史を肌で感じたり、プロの公式戦と同じような対局前の儀式を行ったりすることで、対局に臨む気持ちを高めていくことができます。コンピュータで将棋を楽しんでいる方も、たまには盤と駒を使って楽しむのはいかがでしょうか。将棋に向き合う気持ちが引き締まり、普段以上の力を出せるかもしれません。

佐藤友康

ライター佐藤友康

3歳から将棋に触れ、将棋とともに幼少期を過ごすものの、途中、長い長いブランクを経て、27歳で将棋復活。 2015年4月より、池袋で20代・30代に向けた将棋普及活動『将Give』を主催・運営する。 将棋の楽しさ・面白さ・奥深さに深く感動し、将棋普及と将棋を通じた社会貢献・人間的な成長の応援を使命とする。

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