「幻の寄せを見ていました‥‥」と畠山七段。今泉四段がフリークラス脱出を決めた一局とは?

「幻の寄せを見ていました‥‥」と畠山七段。今泉四段がフリークラス脱出を決めた一局とは?

ライター: 池田将之  更新: 2017年03月16日

今回は今泉健司四段がフリークラス脱出を決めた対局を紹介します。昨年11月17日に行われた畠山鎮七段との王位戦でした。畠山七段は今泉四段について「本来なら26歳の年齢制限までに十分四段に上がれるものを持っていました。後の三段編入と合わせて二度も奨励会退会という憂き目にも腐らず、くじけず、よくぞここまで踏ん張ったと思います」と言います。

本局は今泉四段が得意の中飛車に構えました。しかし中盤から畠山七段が優勢になり、そのまま押し切るかと思われました。ところが、終盤で大きなドラマが待っていたのです。

その始まりは▲3三歩(第1図)とたたいた局面。

【第1図は▲3三歩まで】


ここで△同桂なら何事もなく後手が勝っていたでしょう。以下▲3七歩としても△同金▲同桂に△3六歩(参考図)で一手一手の寄りとなります。

【参考図は△3六歩まで】


しかし本譜は△3三同飛でした。

「ヒドかった。幻の寄せを見ていました」と畠山七段。以下▲3四歩△同飛▲2五銀で一気に逆転模様です。後手は大きな錯覚をしていました。実戦は以下▲2七同香(投了図)まで進み、先手の勝ちとなりました。以下△2六桂としても▲1七玉で詰みません。畠山七段はそこで、桂馬がもう一枚あって▲1七玉に△2五桂と打てると勘違いしていたと言います。

【投了図は▲2七同香まで】


今泉四段は来期の順位戦からC級2組で戦います。畠山七段は「C2も苦しい戦場ですが、ものすごい地獄を切り抜けてきた今泉くんが、若手とどんなふうに戦うのかは純粋に興味がありますし、その姿から勉強させてもらいたいです」とエールを送りました。

池田将之

ライター池田将之

2010年からフリーライターとして活動開始。2015年まで将棋連盟モバイル中継記者。現在は新聞社に観戦記、将棋世界で「関西本部棋士室24時」などの記事を執筆している。

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畠山鎮

監修畠山鎮七段

棋士・七段
1969年6月生まれ。1989年、プロ棋士となる。関西奨励会の幹事を長きにわたり務め、現在の若手関西棋士の育成に貢献。 棋風は居飛車党で、攻め将棋を得意としている。著書に「横歩取りの教科書」「これからの相矢倉」(マイナビ出版)などがある。

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