中村太地六段が将棋にハマった理由とは?「羽生三冠に憧れて、八王子将棋クラブへ」【注目の若手・中村六段インタビュー vol.1】

中村太地六段が将棋にハマった理由とは?「羽生三冠に憧れて、八王子将棋クラブへ」【注目の若手・中村六段インタビュー vol.1】

ライター: 内田晶  更新: 2017年02月07日

中村太地六段インタビュー

中村太地六段は、期待の若手棋士の一人。ひと昔前の将棋の棋士といったイメージとは異なり、今どきの若者らしい爽やかなルックスが将棋を知らない人からも支持され、テレビをはじめ各メディアに多く出演しています。今回、中村六段にデビュー当時の思い出や師匠とのこと、そしてタイトル戦でのことや普及活動にいたるまで直撃インタビューをしてみました。

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撮影:内田晶

 ーー中村六段は少年時代に八王子将棋クラブで腕を磨いたそうですね。ここは羽生善治三冠や阿久津主税八段ら、プロ棋士を輩出している道場として知られていますが、その場所を選ばれた理由があれば教えてください。

「宮城から東京に引っ越ししてきたのを機に、八王子将棋クラブに通うようになりました。七冠を独占した羽生先生に憧れたのがきっかけでしたが、当時にしては珍しく禁煙の道場だったことも子どもにはありがたかったです。まだ小学2年生でしたので、当時は祖父に連れていってもらいました。

 ーー八王子将棋クラブは席主の八木下ご夫妻(征男さん・ひろ子さん)が切り盛りされています。八木下夫妻は中村六段にとってどんな存在ですか。

「いつもはすごく優しいのですが、ときには怖い一面もあります。特に礼儀作法には厳しく、おしゃべりしながら指していると怒られましたね。八木下さんはただ叱るだけではなく、将棋を通じて子どもを成長させようとするような親心といいますか、子ども心にとても愛を感じました。八王子将棋クラブに通っているお子さんたちは、将棋が礼に始まり礼に終わることをちゃんと知っているはずです。いまプロ棋士として自分があるのも、八木下さんご夫妻のおかげだと感謝をしております」

 ーー2000年の夏、小学6年生で奨励会に入会しました。プロ棋士を目指したきっかけをお聞かせください。

「小学6年生のときに出場した小学生名人戦で準優勝したのがきっかけです。将棋にプロの世界があることを知ってはいましたが、まだプロ棋士になりたいという気持ちは芽生えていなかったですね。一緒に将棋をやってきた友達がプロを目指していることを知り、私ももっと強い人と指したいと思いました。プロ棋士を目指せば強い人と指したいという願いがかなうだろうと考えたのです」

 ーー将棋との出会いについても、この機会にお聞かせください。

「4歳の頃、私は札幌に住んでいました。北海道の冬は雪が多いので室内で遊ぶことが多く、父からいろいろなボードゲームを教わりました。オセロやチェス、ダイヤモンドゲームなど種類はさまざまで、その中のひとつに将棋があったのです」

 ーー数あるゲームの中で将棋を選んだ理由を覚えていますか。

「将棋にはまったのは5歳のとき、正月に4歳上の従兄と将棋を指したのがきっかけでした。従兄は将棋に詳しいわけではなかったので私は勝てると思って臨んだのです。ところが、結果は私の負け。すごく悔しい気持ちが込み上げてきまして。その悔しさから強くなりたいと思いました。私は将棋に限らず、負けず嫌いな子どもでしたね」

 ーー少年時代のことをもっと聞かせてください。どんな性格でしたか。

「今もそうですが、少年時代はスポーツをするのが好きでした。性格的には、いまとあまり変わらず、基本的には物静かでしたね。父が転勤族で転校が多かったのも影響しているかもしれません。札幌から仙台に移って、小学校の低学年のときから東京に住むようになりました」

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第61期王座戦五番勝負第3局(2013年10月2日)終局後。この対局に勝ち、羽生善治王座を土俵際まで追い込んだ。撮影:常盤秀樹

 ーー中村少年は将棋のどんなところに魅力を感じたのでしょうか。

「対局が始まってしまえば頼れるのは自分だけになります。自分が考えた手や構想を盤上に表現して、それが結果に表れるというのが将棋の醍醐味ではないでしょうか。一局を指し終えたときの達成感は何物にも代えられません。」

「また、将棋を通じて年齢を超えた交流ができるのも大きな魅力だと感じます。コミュニケーションツールのひとつとして、将棋は最高のコンテンツだと思います」

 ーー将棋を知ることで人生にどんな影響を与えると考えていますか。

「将棋は自分で負けを認めなければいけない厳しさがあります。競技時間の決まっているスポーツなどと違い、将棋は自動的に対局が終わるわけではありません。負けた側がきちんと『負けました』と投了を告げることで競技が終わるのです」

「将棋は日本の伝統文化で、礼儀作法や挨拶などを自然と学ぶことができます。大げさかもしれませんが、礼節のほうが勝負が決まることより重要かもしれません。プロ棋士としてこの素晴らしい伝統文化をいつまでも伝えていきたいと思っております。その大事さを教えてくださったのが師匠でした」

中村六段が「将棋が日本の伝統文化」と、礼節を重んじることは、師匠である故・米長邦雄永世棋聖の影響が多分にあったようです。次回は、そのあたりについて語っていただきます。

取材協力中村太地六段

2000年に6級で米長邦雄永世棋聖に入門。2006年に四段。2012年に六段。2012年の第83期棋聖戦、2013年の第61期王座戦でタイトル挑戦。
内田晶

ライター内田晶

1974年、東京都の生まれ。小学生時代に将棋のルールを知るが、本格的に興味を持ったのは中学2年のとき。1998年春、週刊将棋の記者として活動し、2012年秋にフリーの観戦記者となる。現在は王位戦・棋王戦・NHK杯戦・女流名人戦で観戦記を執筆する。囲碁将棋チャンネル「将棋まるナビ」のキャスターを務める。

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