サブカル好きのベテラン棋士・高橋九段と、高橋一門の黒沢五段と熊倉女流初段をご紹介

サブカル好きのベテラン棋士・高橋九段と、高橋一門の黒沢五段と熊倉女流初段をご紹介

ライター: 直江雨続  更新: 2017年02月02日

2017年1月3日に放送されたNHKの将棋特番『新春お好み将棋対局 花の55年組 一門対決』に出演した高橋道雄九段とその門下の弟子である、黒沢怜生五段と、熊倉紫野女流初段についてご紹介します。

タイトル5期獲得の大棋士! 高橋道雄九段

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高橋道雄九段は1960年4月23日生まれの56歳。東京都足立区出身、(故)佐瀬勇次名誉九段門下。タイトル戦の出場回数は10回、タイトル獲得は十段1期、王位3期、棋王1期。現在竜王戦は1組(1組在籍20期)、順位戦はC級1組(A級在籍13期)です。

相矢倉を得意とする居飛車党で、重厚な指し回しと名前の略称「タカミチ」にかけて、その棋風は「地道流」または「地道高道」と呼ばれています。タイトル獲得5期の実績もさることながら40代後半で順位戦A級に復帰し、2009年度から2012年度まで順位戦でA級に在籍、竜王戦では現在も1組に在籍中と56歳になった今もトップ棋士として活躍している高橋九段。

そんな高橋九段ですが、近年はその多彩な趣味、特に漫画・アニメ・特撮などのいわゆるサブカルチャーのディープなファンとしてよく知られています。ニコニコ生放送での将棋中継に解説者として登場した際にアニメ「けいおん!」に出会って人生が変わった、と発言し、その幅広いアニメ知識を披露するなど、アニメ好きからも一目置かれる存在として 注目されています。自身のブログ「みっち・ザ・わーるど」では趣味の話を中心にほぼ毎日更新を続けています。

本業である将棋でもベテランとして存在感を示し、きっちり結果を出しつつも、10代のような若々しい感性で趣味に夢中になる高橋九段の姿は、世の中のサブカルチャー好きにとって理想的な存在であり、多くの人に勇気を与えてくれています。

高橋九段の弟子には中村亮介六段・中村桃子女流初段という兄妹棋士と、黒沢怜生五段、熊倉紫野女流初段の4人がいます。今回のNHKのお正月特番では黒沢怜生五段と熊倉紫野女流初段が出演しました。

NHK杯記録係も務めた若手棋士 黒沢怜生五段

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黒沢怜生五段は1992年3月7日生まれの24歳。埼玉県熊谷市出身。2003年9月、6級で奨励会入り。2014年度前期の第55期三段リーグを2位で抜けて2014年10月1日付で四段昇段。四段昇段を決めた際には「師匠がA級で頑張る姿を見て、見習おうと思いました」とコメント。自身の棋風を「悪くなっても諦めが悪い振り飛車党」と称しています。

黒沢五段の名前の「怜生」は手塚治虫の名作『ジャングル大帝』の主人公レオにちなんで命名されたとか。2012年よりNHK杯テレビ将棋トーナメントで記録係を務めていたため、その顔と名前を毎週見て知っていたというファンも多いと思います。2014年10月の四段昇段以降も、そのまま半年間記録係を続けました。そして今年2016年のNHK杯では予選を勝ち抜いて、今度は対局者として初出場を果たしました。放送では師匠の高橋九段が解説者として登場。師匠の前で良いところを見せたかった黒沢五段でしたが、山崎隆之八段に敗れて惜しくも一回戦突破はなりませんでした。

竜王戦ではデビュー1年目の第28期竜王戦では6組の昇級者決定戦を勝ち上がって5組に昇級、続く2年目の第29期竜王戦でも5組で優勝し初の決勝トーナメント出場と、2年連続昇級により五段への昇段を決めました。

将棋連盟のフットサル部に所属し、東西対抗棋士フットサル大会にも「FCセンダガーヤ」のメンバーとして出場しています。関東若手棋士チームの「東竜門」のメンバーでもあり、今後もさまざまなイベントへの出演が楽しみな黒沢五段はこれからの活躍が期待できる若手棋士です。

キャッチフレーズは「笑顔が一番」 熊倉紫野女流初段

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熊倉紫野女流初段は1988年4月23日生まれの28歳。茨城県古河市出身。2002年、14歳で女流アマ名人戦で優勝し、その年に女流育成会に入会。2007年4月1日付で女流2級でプロデビュー。

デビューした年に女流王位戦の予選を勝ち抜いて挑戦者決定リーグ入り。規定により女流1級に昇級。翌年は女流王位戦のリーグ残留により女流初段に昇段。2008年10月から翌3月までNHK杯将棋講座で講師森下卓九段のアシスタントを務めました。

そんな熊倉女流初段ですが、2011年1月1日から2012年3月31日の期間、一身上の都合により休場しています。その時女流棋士を引退することも考えていたそうですが、師匠の高橋九段の励ましもあり、2012年4月より復帰。2013年度は女流名人戦の予選を勝ち抜いてリーグ入り、2015年度には女流王位戦でリーグ入りを果たすなど、復帰後も活躍を見せています。

熊倉女流初段のキャッチフレーズは『笑顔が一番』。サイン会で色紙にもよく揮毫している言葉です。その言葉通りいつも笑顔を絶やさない熊倉女流初段はその朗らかな人柄で多くのファンに愛されている女流棋士です。

デビュー当初は四間飛車を中心に振り飛車党として戦っていましたが、近年は居飛車党に転向し、師匠譲りの矢倉なども指しこなしています。迷いを振りきり、女流棋士として、勝負師として将棋に向き合う熊倉女流初段のこれからの活躍をファンは楽しみにしています。

師匠の高橋道雄九段とその弟子の棋士を紹介しました。2017年1月より始まる第30期竜王戦の1組では最年長となる高橋九段、そして師匠を追って4組まで駆け上がってきた黒沢五段。いつか師弟での対局が実現するのでしょうか。そして居飛車党に転向した熊倉女流初段の師匠譲りの矢倉が女流棋戦で旋風を巻き起こすか、これからも高橋一門から目が離せません。

*写真は達人戦中継ブログより引用。

直江雨続

ライター直江雨続

フォトグラファー/ライター。
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。

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