早起きして2時間の棋譜並べ、学校終わりはネットで対局。山口絵美菜女流が語る、将棋と勉強を両立する秘訣

早起きして2時間の棋譜並べ、学校終わりはネットで対局。山口絵美菜女流が語る、将棋と勉強を両立する秘訣

ライター: 山口絵美菜女流1級  更新: 2017年02月21日

前回は「将棋との出逢い~高校時代」のお話でしたが、今回は「高校卒業~現在」までのお話です。

2月下旬に大学受験を終えてから約3カ月のブランクを取り戻すために対局・詰将棋・棋譜並べを中心に将棋のリハビリ期間に入りました。将棋をしたい心を抑え込んで受験勉強に打ち込んでいたことによる副作用で、将棋をすることに強い抵抗があり、元通り向き合えるようになるまで数カ月かかりました。

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無事大学に合格し、京都へと引越して2013年7月に研修会D2で入会。大学は時間割も自由に組めるため将棋に思う存分打ち込めるかと思いきや、ここで立ちはだかるのが「生活」の壁です。京都大学の自治寮である女子寮に入寮したため、寮の委員会や会議への出席、当番の仕事‥をしなくてはいけません。もちろん日々の食事や洗濯などの家事も自分でやるしかなく、将棋の時間が思うように取れないもどかしさ・・・。朝早く起きて2時間の棋譜並べ、大学から帰ってきてから、ネットで指すような生活でなんとか1年でC1に昇級し2014年の10月1日付で女流3級になりました。

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2010年5月22日、当時アマチュアだった山口女流1級は「第4期マイナビ女子オープンチャレンジマッチ」に出場し、予選通過を果たした。撮影:常盤秀樹

念願の女流棋士になれたという喜びもつかの間で、仮プロ扱いである女流3級から正式な女流棋士である女流2級になるのに非常に苦労しました。女流棋士になったことでそれまでの「将棋」「勉強」「生活」の両立に「仕事」が加わり、さらに女子寮の運営のトップに就任したことで「寮運営」も担うことになり、精神的な負担も将棋にあまりいい影響がなく、黒星が続きアマチュア降格の危機を迎えました。このままではいけないと一念発起して、大学3年生で卒業に必要な単位をほぼ取り終えて2016年の春に大阪に引っ越しました。関西将棋会館にある、棋士や奨励会員が集う「棋士室」に毎日通うためです。朝から晩まで棋士室に入り浸っていた結果、同年4月に女流2級に昇級することができ、8月には1級になりました。

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4回生の現在では週に1度卒論演習のために大学へ通う程度です。将棋をテーマにした卒論も提出し終え、卒業後は進学はせず、将棋一本の生活をする予定です。

よく「勉強と将棋の両立はどうやってしたらいいですか?」と聞かれます。将棋も勉強も好きですが、それでも両立は大変で、特に大学受験の時は将棋を手放してしまいそうになりました。学歴がいらない世界に行くのに大学に行って何か意味があるのかなと悩んだことも多々ありました。

そんな時にずっと言い聞かせてきたのは「趣味は勉強」という言葉です。私は一番好きな将棋で生きていくから、勉強は二番目に好きなことだから、あくまでも趣味なんだと。そして二番目に好きなことできちんと結果が出せるなら、一番好きな将棋でもきっと頑張れるから自信につながるだろうという思いで、辛抱して自分なりに両立をしてきました。

将棋と勉強、そして仕事や生活との両立は未だにどうしたらいいかわかりません。好きという気持ちがなければ、どちらか、もしくあるいはどちらも放り出していたのではないかと思います。一つ言えるのは「何兎を追うにも一兎ずつ」ということです。全部を完璧に両立するのはあまりにも難しいことなので、目の前にある問題を一個ずつ片付けることが両立につながるのではないかなと思います。

山口絵美菜女流1級

ライター山口絵美菜女流1級

1994年5月生まれ、宮崎県出身の女流棋士。2017年に京都大学文学部を卒業し、在学中に研究した『将棋の「読み」と熟達度』を足掛かりに、将棋の上達法を模索している。
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。

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