NHK杯テレビ将棋トーナメントを楽しむための7つのポイント。対局前から対局後まで見どころが盛りだくさん!

NHK杯テレビ将棋トーナメントを楽しむための7つのポイント。対局前から対局後まで見どころが盛りだくさん!

ライター: 直江雨続  更新: 2017年02月26日

毎週日曜日の10時30分からNHK(Eテレ)で放送されている『NHK杯テレビ将棋トーナメント』は将棋ファンには最も馴染みがあり、気軽にプロ棋士の対局の観戦を楽しめるTV棋戦と言えます。そんなNHK杯を楽しんでいる方の中には、自分では将棋を指さず、棋士の対局を「観て」楽しんでいる「観る将棋ファン」が少なからずいらっしゃいます。 今回は、観る将棋ファンにとってのNHK杯の観戦ポイントを7つに分けてをご紹介します。

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撮影・河井邦彦

(1)事前に公式HPで画像をチェック

NHK杯の放送を楽しむポイント、まずは放送が始まる前の情報収集についてです。NHK杯には公式HPがあり、毎週月曜日にはその週の放送に登場する両対局者の写真がトップページに表示されます。この画像を毎週チェックするのが楽しみ方の一つです。両対局者の服装や髪形などを事前にチェックできますし、もし和服で対局する棋士がいた場合はそれもこの画像からわかります。今期NHK杯では佐々木勇気五段が和服を着て対局に臨み、将棋ファンの間で話題になりました。

また、公式HPでは両対局者のほか、この先の放送での解説者の名前も確認することができます。NHK杯の解説者は多くの場合、対局者のどちらかの師匠であったり、同じ研究会のメンバーであったりと対局者の人柄や棋風をよく知る棋士が選ばれることになります。誰と誰との対局を誰が解説するのか。その組み合わせや、なぜその解説者が選ばれたのかなどをあれこれ想像するのも観る将棋ファンにとって楽しい時間なのです。

(2)対局者や解説者の情報を集めて事前予習

そして両対局者や解説者についての事前の情報収集も欠かせません。将棋連盟のHPの棋士データベースでは棋士のプロフィールや師匠の名前、これまでのタイトル・優勝履歴、昇段履歴を見ることができます。そういった事前の予習をしておき、どんな将棋になりそうか、解説の棋士が何を話すかをシミュレーションしておくことで、実際の放送をさらに楽しく見ることができるのです。

(3)対局が始まるまでの映像も見逃せない

NHK杯のオープニングは「ピロリ~♪」という笛の音でおなじみの曲に合わせて今期の出場棋士の写真が次々に表示され、最後に前期優勝者が初手を指すシーンのアップと駒音で締めるというのが近年の定番となっています。

つまりNHK杯で優勝すると翌年1年間はオープニングのトリを飾ることができるということで、ファンにとっては応援する棋士がNHK杯で優勝することは格別な意味を持ちます。 オープニングの後は司会の藤田女流二段によるトーナメント表の紹介です。

NHK杯に出場できるのは約160名のプロ棋士のうち50名だけ。多くの棋士にとってNHK杯は晴れの舞台であり、トーナメント表に名前があるというだけでも特別なことなのです。 ファンにとってもそれは同じで、応援する棋士がNHK杯に出場し、藤田綾女流二段の美声でその名前が読み上げられることはそれだけでも嬉しいものです。

トーナメント表のあとは対局者が駒を並べる映像に合わせて、先手番の対局者、後手番の対局者を藤田女流二段が紹介します。出身地、師匠の名前、奨励会に入会した年とプロデビューした年、順位戦と竜王戦で何組に所属しているか、ここまでの勝ち上がりや何回目のNHK杯出場か、などの情報がここでわかります。対局者の映像がアップになることも多いので、スーツやネクタイの色、メガネや髪形などのファッションチェックもここでの楽しみです。

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撮影・河井邦彦

(4)紹介や意気込みを聞いて対局に備えよう

続いては解説を担当する棋士の紹介となります。解説者はまず両対局者の印象や棋風を話すのが最近の定番です。ここでどんなことを言うのか、対局者と解説者の関係性も垣間見えるため、観る将棋ファンにとって超重要な注目ポイントです。

続いて対局者がそれぞれ相手の印象や本局の意気込みを語ります。緊張していないか、噛まずに言えるか、何を言うかなどなど、ファンにとっては見ているだけでもドキドキしてしまう時間ですね。(※対局者のインタビューが放送されるのは2回戦までです)

(5)対局が始まったら、棋士の個性をチェック

対局が始まったら、しばらくは解説がないまま、序盤の数十手が放送されます。ある程度の棋力や序盤の定跡の知識がある方は指した手の意味やどんな戦型を選んだか、といった視点で楽しむことができます。ただ、そういった知識がない方でも楽しめるいくつかの着目点があります。

まず、駒をマス目のどのあたりに置くかに棋士の個性が出ます。駒を下の線に合わせて置く棋士、マス目の真ん中に置く棋士、その違いを味わいます。また、井道千尋女流初段、飯野愛女流1級の読み上げにじっと耳を澄ませるのもこの時間の味わい深い過ごし方ですね。

観る将棋ファンは棋士の手、指先の美しさに魅了されている方が多数いらっしゃいます。 盤面カメラには指す時の棋士の手元が映されますので、その手や指先の美しさ、右利きか左利きか、指す時の滞空時間や手つき、駒音の高さなども観賞ポイントになりますね。

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撮影・河井邦彦

そして解説者の解説がスタートしてからは、その解説を聞き、時折はさまれる対局者のエピソードや雑談、聞き手の藤田女流二段との掛け合いを楽しみます。対局者が考えていて手が進まない時などはカメラが対局者の姿をアップで映したりします。このタイミングもまた観賞ポイントがいくつかあります。

表情、脇息の使い方、座っている位置が盤からどれくらい離れているか、どれくらい前傾姿勢になっているか、考えているときの視線の向き、お茶を飲むタイミング、おしぼりを使うタイミング、ハンカチで顔を拭いたりする棋士もいますし、扇子を使う棋士もいます。

特に勝つか負けるか、白熱の終盤戦で秒読みの中で見せる棋士の鬼気迫る姿は、将棋の内容がわからなくても、見ている側の心を揺さぶります。もちろん解説者が現在の形勢や一手ごとにそれがいい手かどうかを説明してくれるので、棋力に関係なく終盤のドキドキ感を感情移入して堪能することができます。

(6)対局後の感想戦では名言が飛び出すかも?

対局が終わり、残りの放送時間に余裕があるときは感想戦が放送されます。観る将棋ファンの中にはむしろ感想戦を一番の楽しみにNHK杯を見ている人もいるくらい、そこもまた重要な観賞ポイントなのです。負けた側の棋士のボヤキが出たり、形勢を損ねたポイントや、逆転の可能性があったのかなど、両対局者と解説者が一緒になって検討する感想戦では時としてさまざまな名言が飛び出したりします。

棋士によってはささやくような小声で感想戦をすることも多いため、ついついテレビのボリュームを上げてしまい、午後0時から始まる囲碁フォーカスのオープニングが大音量になってびっくりする、というのも将棋ファンのあるあるです。

(7)詳しい棋譜や解説はNHK将棋講座テキストで復習しよう

また、対局の詳しい棋譜と解説(観戦記)は後日発売されるNHK将棋講座テキストに掲載されます。将棋講座テキストに掲載される対局の観戦記は記者が書かれたり、対局者の自戦記だったりします。そこに書かれたエピソードを読みながら、あらためて録画したNHK杯を見る、というのもまた楽しいものです。放送を一度だけでなく何度も見る楽しみがあるのは録画が可能なTV棋戦ならではですね。

放送の前、対局の前、対局中、そして対局後、放送後と、NHK杯のさまざまな楽しみ方、観賞ポイントをご紹介しました。棋士の対局姿を見て楽しむ分には棋力はそれほど関係ありません。ここに紹介した以外にも注目するポイントや楽しめる観賞ポイントはたくさんありますし、自分なりの着目点をいくつも持つことでNHK杯をさらに楽しめるようになると思います。

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撮影・河井邦彦

毎週夢中で視聴しているうちに、気が付けば棋士について詳しくなり、棋士や将棋がもっと好きになる。ぜひそんなふうにNHK杯を楽しみ尽くしてください!

直江雨続

ライター直江雨続

フォトグラファー/ライター。
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。

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