北尾まどか女流二段による「どうぶつしょうぎ」の授業。小学生の反応も、◎

北尾まどか女流二段による「どうぶつしょうぎ」の授業。小学生の反応も、◎

ライター: 松谷一慶  更新: 2016年12月13日

このコラムでもご紹介したボードゲームの「どうぶつしょうぎ」。この「どうぶつしょうぎ」を小学校で教えるという話を聞き、その授業を見学させていただくことにしました。なんでも小学1年生72人に、ルールから説明するとのこと。電子ゲームが豊富にある現代の小学生は、「どうぶつしょうぎ」にどのような反応を示すのでしょうか。

授業開始!気になる「どうぶつしょうぎ」の知名度は?

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今回訪問したのは東京都国立市にある桐朋学園小学校。この小学校では生活科という時間に、いろいろな取り組みに挑戦しているとのこと。今回は子どもたちがお互いに関わり合いながら頭を使うことができるという理由で「どうぶつしょうぎ」を選ばれたそうです。そして、本日講師を務めるのは「どうぶつしょうぎ」の考案者でもある北尾まどか女流二段。さて、どんな授業になるのでしょうか。

授業は、北尾女流二段の自己紹介、将棋の歴史の説明などが続いたあと、「どうぶつしょうぎ」の遊び方の説明です。まず驚いたのは、「どうぶつしょうぎ、やったことある人はいますか?」の問いかけに半分以上の子が手を挙げたこと。2008年に販売され人気が続いているゲームの、浸透率の高さはさすがの一言。

基本的なルール、動き方の説明が終わったあと、北尾女流二段と教務主任の有馬先生が見本としてみんなの前で対戦します。「キリンでとったほうがいいよー」「そっち動いたら食べられちゃうよー」などのアドバイスが四方八方から飛び交い、全員が夢中になっていることがわかります。こういう子供たちの面白そうなことに興味をもつスピードはすごいなと感心しました。

どうぶつしょうぎ大会スタート! 礼に始まり礼に終わる

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そしていよいよ、どうぶつしょうぎ大会の開催です。大会の進行方法は簡単。

  • 1. 机に置かれたどうぶつしょうぎを真ん中に向かい合いあって勝負する。
  • 2. 勝ったらライオンシールを、負けたらひよこシールをもらう。
  • 3. 勝った者同士、負けた者同士が、また次の対戦相手となり、対戦を始める。

これらを時間が許す限りくりかえします。

教室には今日習った3つの言葉が響きます。

「よろしくお願いします」
「負けました」
「ありがとうございました」

将棋では開始前と終了後には必ず挨拶があり、また、勝負の決着がついたときには敗者が「負けました」と自らの負けを認めて終わるのです。負けた子にひよこシールを貼ってあげる、というのが私の担当。私のところには負けた子たちが集まります。

そこで驚いたのは、負けた子もすごく元気に集まってくるということです。「先生、また負けちゃったー」と駆け寄ってきて、次の相手が決まれば、その子と手をつなぎながら空いている場所を探して走っていく。勝ちたいという気持ちはあるし、きっと悔しさもあるでしょう。それでも彼らは走って寄ってきて、走って去っていきます。誰かの手をひいて、ときに誰かに手をひかれて、何度も何度も。すごく素敵な光景だなと感じました。

負けを認めるということを学ぶ大切さ

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勝ち続ける人生を求める人は多いと思います。きっと誰だってライオンシールを集めたいはずです。でも、私たちは負けることもあります。ひよこシールの列にも並びます。それでも、そこで楽しめる人が強いんだろうなと思います。投げ出すわけでも、諦めるわけでもなく、負けたということを認めて、次へ進む。

どうすれば、勝てるのかを教えてくれる場所はたくさんあります。どうすればテストでいい点数をとれるのか、どうすれば上手に縄跳びが跳べるのか。でも、もしかするとそれと同じくらい、負け方を習うことも重要なのではないでしょうか。「負けました」と認めること、そこで投げ出さずに続けること、ときにひとりで考え、ときに誰かに頼ること、それを続けていればいつかは勝てるということ。授業が終わり、お互いが集めたシールを見せ合い、元気に教室へと帰っていく彼らを見て、そんなことを考えさせられました。

有馬先生は今回の授業を振り返って、「どうぶつしょうぎ」の教育における価値について次のように語られていました。

頭を使う楽しさを経験の中で学べるところが一番の魅力だと感じました。かわいい動物の絵柄が子どもたちの心をつかみ、やってみたい気持ちにさせる。繰り返すうちに、自分で考え、自分で判断し、相手の手に驚き、さらに自分の手を考えていくというサイクル自体に子供たちが没頭していく様子がすごく印象的でした。また、相手のことを考えないと勝てないというのも面白いなと思います。礼を大切にするという形の部分だけでなく、勝つためには相手の手を考えるということが重要で、自分のことだけ考えていては勝てないですからね。そしてなにより、『負けました』を言えるようになるのはすごく大切なことなんじゃないかと考えます。潔く負けを認め、そこから再挑戦をすることは時に勝つこと以上にとても大切だと思うのですが、なかなかそれを学ぶ機会はないですからね。それを『どうぶつしょうぎ』では学ぶことができる、それがとてもいいなと感じました。」

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今回の小学校の授業見学で、「どうぶつしょうぎ」というゲームの面白さを再確認できました。ルールも簡単で、小学生でも楽しめるというハードルの低さに加え、遊びながら多くのことを学べるその教育的な価値の高さ。小学校の授業の一環としてとりいれられる、そんな未来もそう遠くないのかもしれません。

松谷一慶

ライター松谷一慶

2013年より世界一周に出発し、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南米、北米を経て、2016年春に帰国。これまでに訪れた国は約100ヵ国。 自然と音楽とお酒とお祭りとトライアスロンとバンジージャンプと甘いものとキリンとぶり大根とが好き。将棋は祖父と何度が指したことがあるくらいだったが、最近また覚えはじめる。

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