大人になった今だからこそ、将棋をはじめるべき3つの理由。普段なかなかできない思考トレーニングに◎

大人になった今だからこそ、将棋をはじめるべき3つの理由。普段なかなかできない思考トレーニングに◎

ライター: 佐藤友康  更新: 2016年11月27日

子供はひたすらゲームとしての将棋を楽しみますが、大人になってからあらためて将棋と向き合うと、ただのゲームではない、少し違った見え方もあります。将棋の持つさまざまな魅力について再認識できたことが、私が将棋に再度向き合うキッカケにもなりました。将棋にちょっと興味を持ったときに知っておきたい、ゲーム性だけでない、秘められた将棋の魅力をご紹介していきます。

魅力① 『しっかりと考える』という手順の体現

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一つ目の魅力はシンプルに「考えること」そのものです。将棋の一局は、プロでは平均112手で決着しますが、その中にはあらゆる可能性があります。勝ちに近づくため、自分の頭だけで考えることその行為こそ、将棋の最大の魅力と言えるでしょう。

  • 宇宙より広い10の220乗の可能性

将棋はたった9×9マスの盤と40枚の駒で行うゲームですが、一局を通じて10の220乗とも言われるほどの指し手の組み合わせパターンがあります。宇宙の原子の総数は10の80乗程度と言われており、それよりはるかに大きな世界が広がっています。その広大な将棋の世界の中で、一局のうちに考えるべきことは多岐にわたります。どういう作戦でいくかを考えたり、相手の手に応じつつ戦法/戦型を選択したり、数手先の地点で形勢判断をしたり、詰む/詰まないを考えたり、相手の手の意味・狙いを察知したり・・・先を考えることはもちろん、「この一手」を選択して、無限の広がりから道を作っていくのです。

  • 千差万別? 指し手を決める要素と思考の手順とは?

盤上に示されている情報は相手も自分も、第三者さえも平等ですが、人によって指し手は同じにはなりません。では、何が指し手を決めるのでしょうか? それは、これまでの自分の将棋経験と自分自身の価値観です。得られる情報を基に自分の頭だけで論理を組み立て、勝ちに近づくために「この一手」を決断する、その考える一連の手順こそ、将棋の魅力だと考えています。心の状態にも左右されるのも面白いところです。

  • 将棋の思考の手順を現実社会に応用してみる

今のご時世、考えることは「ちょっと面倒なこと」になりつつあります。GoogleやYahooなどで検索をかければ、大抵のことは出てくる便利な世の中ですから、考える必要がなくなってきているようにも思えます。便利な道具は上手に使うに越したことはないですが、出てきた情報を鵜呑みにして妄信するのは危険です。実社会では、全て明確な正解があるものばかりではありません。必要な情報を集めてそれを組み立てて、考えるという一連の手順を経て、自分自身の答えを出すことが大切だと私は考えています。先ほどの指し手を決める手順はまさに現実社会と同様で、将棋はその思考トレーニングに最適なのです。

魅力② 対局後わずか30秒で検討 『感想戦』という文化

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二つ目の魅力は、「感想戦」の文化です。将棋を指せば、結果は勝つか負けるかのどちらかです。たとえ負けたとしても、次への糧として気持ちを切り替えて相手と研鑽する、感想戦の文化の魅力をお伝えします。

  • そもそも感想戦とは? 何のために行うのか?

感想戦とは、一局の勝負が終わった直後に今指したばかりの一局を対局者同士で振り返ることです。初手から、あるいはポイントとなる局面を並べ直して、その局面の意見を言い合うのです。感想戦を通じて、一局をより深く理解でき、より深く反省することができます。その結果、次の対局に活かすことができるようになるのです。

  • 反省会ではない! 自己研鑽かつ他己研鑽の場

感想戦では、お互いに意見を言い、相手の考えを聞き、実戦では現れなかった他の指し手などの変化も確認し合います。負けた側の失敗した点の反省会ではなく、勝った側も手の内をさらけ出して言い合うのです。自己研鑽であり他己研鑽でもあります。相手とより良い将棋を指すために、勝負の直後にもかかわらず最善を探求する姿勢に、魅力を感じます。

  • Giveの精神で世界を広げる感想戦の文化

我々のようなアマチュアでは、棋風によって指し手や考え方は大きく異なります。感想戦を通じて、お互いの考えをシェアすることで、より広い視点で一局を見ることができ、次の対局はそれが土台になるのです。自分の研究だからと手の内を見せずにいると、お互い腹の探り合いになり、相手からの情報が入らずに世界が狭まってしまいます。感想戦を行うことは、自分の価値を相手に提供することでもあり、自分の見える世界を広げていける、そんな素晴らしい文化なのです。

魅力③ 勝負の根幹にある 『礼に始まり礼に終わる』という文化

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三つ目の魅力は、将棋の「礼」の文化です。ゲームであり、真剣勝負でありながら、礼儀は将棋における重要な要素で、礼儀なしに将棋を指すことは出来ません。礼に始まり礼に終わる、という魅力についてお伝えします。

  • 将棋における「三つの礼」のタイミング

将棋には三つの礼のタイミングがあります。一つ目は、対局前の「お願いします」。まずは相手と勝負にあたっての気持ちを整えます。二つ目は、対局後の「負けました」。これは負けた方が宣言することで、勝負が終わります。三つ目は、感想戦後の「ありがとうございました」。対局を無事に終えれたことを相手に感謝しましょう。一局を指す間に3回も、相手への敬意と感謝を表しますから、将棋と礼の文化は切り離せないものなのです。

  • 棋力や年齢は無関係!全ての相手に敬意と感謝を

プロだけではなく、アマチュアでも、有段者でも、初心者でも、小さな子供でも、年配者でも同じように礼を重ねます。マナーであり、そういう文化が将棋に強く刻まれています。将棋は、相手があってこその真剣勝負です。相手がそこにいてくれたからこそ、一局が成立したのですから、相手への敬意と感謝を持つのは自然なことですよね。それを自分の言葉として表すことで、おおらかな心が自然と育つのです。

  • 将棋を通じた温かなコミュニケーション

「礼」がベースにあり、相手があってこその真剣勝負でした。将棋を指す人は、将棋を離れたところでも敬意と感謝を持っているので、温かなコミュニケーションは残ります。年代や性別を超える、温かな交流をもたらしてくれる将棋の「礼の文化」という側面にも、将棋の魅力は秘められているのです。

指せば納得! それぞれの魅力を体験しよう

今回は、将棋を指しながら自然と体験できる三つの魅力を紹介しました。将棋は思考の手順を身に付けられるゲームでありつつ、相手へ礼と敬意が根付いている文化でもあるのです。お互いを大切にするからこそ、研鑽し合い、向上し続けることが自然とできるのですね。次回は、自分自身の感情に響く魅力お伝えします。こちらもぜひ、お楽しみに!

*写真は竜王戦中継ブログより引用。

佐藤友康

ライター佐藤友康

3歳から将棋に触れ、将棋とともに幼少期を過ごすものの、途中、長い長いブランクを経て、27歳で将棋復活。 2015年4月より、池袋で20代・30代に向けた将棋普及活動『将Give』を主催・運営する。 将棋の楽しさ・面白さ・奥深さに深く感動し、将棋普及と将棋を通じた社会貢献・人間的な成長の応援を使命とする。

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