出雲のイナズマがリコー杯女流王座戦に登場! 史上最強の女流棋士里見香奈の強さの秘密とは

出雲のイナズマがリコー杯女流王座戦に登場! 史上最強の女流棋士里見香奈の強さの秘密とは

ライター: 直江雨続  更新: 2016年10月23日

いよいよ10月26日(水)から第6期リコー杯女流王座戦五番勝負が開幕します。加藤桃子女流王座に挑戦するのは里見香奈女流四冠(女流名人・女流王位・女流王将・倉敷藤花)です。女流棋界の六大タイトルを分け合う2人が激突する頂上決戦! 世界一将棋が強い女性を決める戦いが始まります。加藤女流王座と里見女流四冠による女流王座戦五番勝負は第3期以来3年ぶり2回目です。今回、女流王座の挑戦者となった里見女流四冠について、これまでの女流王座戦の戦績を中心にご紹介したいと思います。

『出雲のイナズマ』里見香奈のこれまで実績

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里見香奈女流四冠は1992年3月2日生まれの24歳。島根県出雲市出身、森けい二九段門下です。父と兄の影響で5歳の時から将棋をはじめ、11歳で女流育成会入会。そして12歳(中学1年生)で女流2級としてプロデビュー。ストイックに将棋に打ち込む姿勢や毎日詰将棋を解くことで身に付けた終盤力が大きな魅力のひとつです。その攻めの棋風や終盤での鋭い寄せから付いた異名が『出雲のイナズマ』。

2008年の第16期倉敷藤花戦で、16歳8か月という女流棋士史上3番目の若さで初タイトルを獲得。以来、タイトル戦登場回数は27回(!)、そのうちタイトル獲得数は23期(!)という実績を誇る、現代最強の女流棋士です。女流棋戦での通算成績は2016年9月29日現在、199勝68敗で勝率は驚異の0.7453! しかも、今期2016年度は10戦無敗!

女流の六大タイトルをすべて獲得した実績のある唯一の女流棋士でもあり、もし今期女流王座戦五番勝負に勝ち、マイナビ女子オープンでも挑戦、奪取すれば、史上初の女流六冠誕生の可能性があります。

奨励会三段までの道のり

里見女流四冠は女流棋士でもあり、プロ棋士を目指す奨励会員でもあります。もともと女流棋士と奨励会員の掛け持ちは不可という規定があったのですが、里見女流四冠が2011年に奨励会の編入試験を受けることが将棋連盟から発表されます。そのニュースは将棋ファンの間で大いに話題になりました。そしてこの時の編入試験の対局相手を務めたのが当時奨励会に在籍していた女性奨励会員3人(加藤桃子2級、伊藤沙恵2級、西山朋佳4級)でした。(級位は当時のもの)また、この里見女流四冠の編入試験がきっかけとなり、女流棋士、女性奨励会員についての規定が変わります。

"女流棋士には、奨励会試験受験・入会の権利もある。
女性の奨励会員は、奨励会員としての出場が認められた女流棋戦に出場することができる。"

編入試験では里見女流四冠は加藤桃子2級(現奨励会初段、女王・女流王座)に敗れたものの、伊藤沙恵2級(現女流二段)、西山朋佳4級(現奨励会三段)に勝利し、その結果奨励会1級として編入が決まりました。関西奨励会所属の1級となった里見女流四冠はその後順調に昇級。2012年1月7日には現行規定では女性初となる奨励会初段に昇段。2013年7月29日には奨励会二段に、さらに同年12月23日に奨励会三段に昇段し、女性初となる奨励会三段リーグ入りを決めました。

1年間の休場

2014年2月、里見女流三冠(女王・女流王座・女流名人)(当時)は体調不良のため3月1日~8月31日までの半年間の休場を発表しました。これにより、第55回奨励会三段リーグは休場。女流棋戦は第7期マイナビ女子オープンの防衛戦のみ出場しましたが、加藤奨励会1級(当時)の挑戦を受け、1勝3敗で女王のタイトルを失冠。さらに2014年8月には9月1日~12月31日までの4か月間の休場延長が発表されました。第56回奨励会三段リーグも引き続き休場。また、第4期リコー杯女流王座戦の防衛戦は行われず、タイトルは女流名人の一冠のみになります。里見不在の女流王座戦は挑戦者決定戦に勝ち上がっていた加藤女王と西山奨励会二段(当時)による決勝五番勝負として開催され、加藤女王が3連勝でタイトルを獲得しました。

復帰からの快進撃

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2015年1月より里見女流名人(当時)は女流棋戦に復帰、第41期女流名人戦では清水市代女流六段の挑戦を3連勝で防衛。5月の第26期女流王位戦では挑戦者となり、甲斐女流王位から3連勝で女流王位を奪取。女流二冠に復帰します。さらに10月、第37期女流王将戦で香川女流王将に2連勝し女流王将を奪取。これで女流三冠。そして11月に第23期倉敷藤花戦で甲斐倉敷藤花に2連勝で倉敷藤花を奪還し女流四冠に返り咲きました。その間に公式女流棋戦最多連勝記録となる21連勝の大記録を樹立しています。ただし、2015年の女流王座戦では本戦で伊藤沙恵女流初段に敗れ連勝がストップ。マイナビ女子オープンでは本戦で清水市代女流六段に敗れたため、タイトル戦への登場はなりませんでした。

2016年度はここまで負けなし。女流王位戦は岩根忍女流三段の挑戦を3連勝で退け、女流王将戦も香川女流三段に2連勝で防衛、マイナビ女子オープンも本戦トーナメントを勝ち上がっています。そして女流王座戦でも本戦1回戦で山根ことみ女流初段、2回戦で貞升南女流二段、3回戦で香川女流三段、挑戦者決定戦では西山奨励会三段に勝利し、今期の挑戦者となったのです。

また復帰した第58回奨励会三段リーグでは5勝13敗、第59回奨励会三段リーグ戦では7勝11敗の成績を残しています。10月から始まる第60回奨励会三段リーグにもぜひご注目ください。

里見VS加藤のライバル関係

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里見女流四冠と今期女流王座戦で対決する加藤女流王座の初めての対局は2011年の奨励会編入試験の時でした。その時は加藤奨励会2級が勝ち。当時女流棋戦で無敵だった里見に土をつけたことで、のちに女流二冠となる加藤桃子の強さが将棋ファンの注目を浴びました。以来、里見VS加藤のライバル関係が続いていきます。

里見女流四冠にとって加藤女流王座との番勝負はこれが3度目。1度目は2013年の第3期女流王座戦。この時は3勝1敗でタイトルを奪取。2度目は2014年の第7期マイナビ女子オープン。1勝3敗でタイトルを奪われています。そして今回3回目のタイトル戦。果たしてどちらが勝つのでしょうか。奨励会員としても、そして女流タイトルホルダーとしても、二人の今後のライバル関係にも注目です!

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女流棋士としてデビューし、数々のタイトルを獲得し、奨励会編入後、三段まで昇段した里見女流四冠。女流棋士ではなく奨励会員として修業を積み、女流棋戦への出場が認められると女流王座・女王のタイトルを獲得した加藤女流二冠。これまで歩んできた道のりは違えど「将棋が強くなりたい!」という思いの強さはどちらも同じ。

そんな二人が激突する女流王座戦、期待は膨らむばかりですね。女流棋士として、そして奨励会三段として過酷な戦いの日々に身を置く里見女流四冠。歴史的な偉業達成はなるのでしょうか。その戦いぶりをぜひ見守ってください。

*写真はすべて女流王座戦中継ブログより引用。

直江雨続

ライター直江雨続

フォトグラファー/ライター。
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。

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