藤井が30期目のタイトル 6月下旬の注目対局を格言で振り返る

藤井が30期目のタイトル 6月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2025年07月22日

 棋聖戦五番勝負は杉本和陽六段の初挑戦を跳ね返し、藤井聡太棋聖が3連勝で防衛。通算30期目のタイトル獲得となりました。女流王位戦ではフルセットの激闘を福間香奈女流王位が制し、64期目のタイトルと、どちらも記録を伸ばし続けています。

ヒューリック杯第96期棋聖戦五番勝負第3局

【第1図は▲2二銀まで】

 第1図はヒューリック杯第96期棋聖戦五番勝負第3局(▲杉本和陽六段△藤井聡太棋聖)。この▲2二銀は「玉の腹から銀を打て」の基本の寄せで、▲2一銀不成△1三玉▲2五桂までの詰めろ。部分的に受けが難しく、一見先手が勝ちのようですが、藤井棋聖は好手を用意していました。実戦は△2七銀まで先手の投了。▲同金は△同桂成▲同玉△3五桂▲3六玉△2七銀▲2五玉△3四金打▲1四玉に△1三歩が打てて、▲同銀成△同角で後手勝ち。△2七銀に▲1七玉とかわすのも、△3三桂が受けの妙手で、後手玉は寄りません。終盤の妙技を見せた藤井棋聖が3連勝での防衛です。

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写真:琵琶

ヒューリック杯第96期棋聖戦五番勝負第2局

【第2図は△5八角まで】

 第2図は棋聖戦第2局(▲藤井棋聖△杉本六段)。序盤から着実に差を広げ、居飛車が勝ちへと近付いている終盤です。▲6六桂が「桂は控えて打て」の決め手。次の▲7四桂を防ぐ術がなく、攻め合いを望める形でもありません。この手を見て後手の投了となりました。

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写真:翔

第36期女流王位戦五番勝負第5局

【第3図は△3三角まで】

 第3図は第36期女流王位戦五番勝負第5局(▲福間香奈女流王位△伊藤沙恵女流四段)。フルセットとなった五番勝負で、難解なねじり合いが続いています。この王手にどう対応するかですが、▲6六歩△同歩▲5五歩が「大駒は近付けて受けよ」の手筋。△同角なら▲6六銀と角に当てて受けることができます。実戦は△5五同歩と応じ、▲8五銀△5六歩で難解な勝負が続きました。以下の終盤を競り勝った福間女流王位が7連覇となりました。

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写真:紋蛇

第38期竜王戦決勝トーナメント

【第4図は△4三金まで】

 第4図は第38期竜王戦決勝トーナメント(▲谷合廣紀四段△山下数毅三段)。決勝トーナメントの開幕戦です。玉形の差で振り飛車ペースの戦いです。▲7一角が厳しい攻め。△7二飛は▲5三角成△同金▲3四歩です。実戦は△5二飛ですが、▲5三角成△同飛▲4四銀△同金▲同歩と金をはがしました。「玉飛接近すべからず」の形で、さらに桂頭も狙われており、後手はまとめきれない形です。奨励会員として活躍した山下三段でしたが、本局は不本意な内容に。来期は棋士として4組での活躍に期待しましょう。

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写真:牛蒡

大山名人杯第33期倉敷藤花戦

【第5図は△6四同銀まで】

 第5図は大山名人杯第33期倉敷藤花戦(▲大城千花アマ△渡部愛女流四段)。中盤戦ですが、手番の先手が手を作れそうな局面です。▲7二歩が持ち歩を生かした手筋。△同飛に▲8三角△6二飛▲7二歩△6一飛▲7四角成で馬を作ることに成功しました。以下△7三銀▲6五馬△6四歩▲7六馬で押し返されましたが、「馬は自陣に引け」の通り先手十分の展開です。以下も先手が好調に指し手を重ね、タイトル挑戦も決めている実力者に快勝となりました。大城アマはこれでベスト8の快挙です。

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写真:銀杏

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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