ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2025年06月27日
フルセットの激闘となった叡王戦五番勝負は伊藤匠叡王が初防衛を果たしました。マイナビ女子オープンでは挑戦者の福間香奈女流五冠が奪取し、12年ぶりの女王復位となっています。
【第1図は▲5八金まで】
第1図は第10期叡王戦五番勝負第5局(▲斎藤慎太郎八段△伊藤匠叡王)。2勝2敗で迎えた最終局も激戦の終盤となりました。形勢は先手良しですが、ここから伊藤叡王も崩れません。△3九角▲4三歩成△同馬▲5五桂△5四馬▲2五飛△6六角成と2枚の馬でしのぎます。「馬は自陣に引け」「馬の守りは金銀3枚」で、簡単に後手玉は寄らず、1一の竜も馬の射程に入れています。以下も激戦が続きましたが、粘り強く指した伊藤叡王がチャンスをとらえ、3勝2敗で防衛を果たしました。
写真:牛蒡
【第2図は▲1七歩まで】
第2図はヒューリック杯第96期棋聖戦五番勝負第1局(▲杉本和陽六段△藤井聡太棋聖)。杉本六段の初陣となった開幕局です。三間飛車ミレニアム対居飛車穴熊から、ねじり合って長い戦いになっています。後手も手が広く方針の難しい局面ですが、△5六歩▲1六歩△5七歩成とと金を作りました。「5三のと金に負けなし」と言うように、非常に価値の高いと金で、飛車や角の転換を防ぎつつ、先手玉へのプレッシャーとなっています。以下も激戦が続きましたが、最後までと金の存在が光り、後手が制勝しました。
写真:玉響
【第3図は▲3四飛まで】
第3図は第18期マイナビ女子オープン五番勝負第5局(▲西山朋佳女王△福間香奈女流五冠)。こちらも2勝2敗で迎えた最終局です。うまく手を作って先攻し、後手が順調に勝ちへと近付いています。△4七歩▲同金△4六歩▲同飛△4五歩▲7六飛と土台を作り、△4六桂▲5八歩△6九金まで先手投了。「玉は包むように寄せよ」で、次に△3八との詰めろで、▲4八金にも△5七角成があって受けなしです。福間女流五冠は12年ぶりの女王復位で、女流六冠にも復帰しました。
写真:牛蒡
【第4図は▲7八飛まで】
第4図は第36期女流王位戦五番勝負第4局(▲福間香奈女流王位△伊藤沙恵女流四段)。先手が押していた将棋でしたが、後手がうまく混戦に持ち込むことに成功しました。△5六歩が「金は斜めに誘え」の突き出し。▲3九角なら△3六歩の取り込みが効果的になります。実戦は▲5六同金に△5五歩で後手の駒得が確定。以下は暴れる先手の面倒を見て、後手が制勝。勝負は最終第5局へと持ち込まれました。
写真:夏芽
【第5図は△2八飛成まで】
第5図は第84期順位戦B級1組(▲佐藤康光九段△服部慎一郎七段)。順位戦が開幕です。▲4八歩が「大駒は近付けて受けよ」の手筋。△8五飛▲8六桂△4八竜に▲5九銀打で手番を握りながら受けることに成功しました。以下△3七竜に▲7七桂△8三飛▲4二角上成から先手が寄せ切っています。
写真:胡桃
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段