ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2025年03月03日
福間香奈女流五冠の産休が明け、タイトル戦ラッシュが開始。休場明けのハードスケジュールをものともせず、防衛に向けて白星を重ねています。
【第1図は▲7四歩まで】
第1図は第74期ALSOK杯王将戦七番勝負第4局(▲藤井聡太王将△永瀬拓矢九段)。角換わり腰掛け銀らしい、激しい展開になっています。△7二香が「下段の香に力あり」の受け。代えて△7二歩では反発力がなく、▲7三歩成といつでも桂を取れる形です。以下も熱戦が続きましたが、最後は7二の香が存在感を見せる形で先手玉を即詰みに討ち取りました。永瀬九段が意地を見せ、1勝を返しています。
写真:翔
【第2図は▲6七角まで】
第2図は第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局(▲増田康宏八段△藤井聡太棋王)。難解な終盤戦が続いていましたが、ようやく決着が見えてきたところです。△6七同角成は▲同玉で上に逃げられてしまいますが、△7九銀が「玉は下段に落とせ」の決め手。▲5七玉や▲5九玉は合駒がないため、横から飛車で王手をされてしびれます。実戦は▲同金△同成桂まで先手投了。以下▲同玉は△6七角成ですし、▲4五角も△6九飛~△4五銀で受けなしです。これで藤井棋王の2連勝となりました。
写真:八雲
【第3図は▲5九香まで】
第3図はリコー杯第14期女流王座戦五番勝負第2局(▲西山朋佳女流三冠△福間香奈女流王座)。西山女流三冠が意表の居飛車に出ましたが、振り飛車の強烈なさばきにあって図は後手優勢です。先手も粘っていますが、△4七歩が「と金の遅早」の確実な攻め。▲7五銀△4八歩成▲8四銀△5八と▲2二飛△6八とまで、と金を使ってあっという間に先手を投了に追い込みました。福間女流王座は防衛まであと1勝です。
写真:飛龍
【第4図は△7三同金まで】
第4図は大山名人杯第32期倉敷藤花戦三番勝負第1局(▲福間香奈倉敷藤花△伊藤沙恵女流四段)。桂交換になったところですが、再度▲7七桂と設置するのが「桂は控えて打て」の好手。次に▲8五歩△同歩▲同桂が金に当たるので△7二金と先にかわしますが、▲8四角と踏み込むのが強手。△同銀▲同飛で駒損ですが、後手陣は薄く形も悪いので、まとめきれません。以下手数は掛かりましたが、先手が押し切りました。
写真:夏芽
【第5図は△3一金まで】
第5図は第83期順位戦A級(▲佐々木勇気八段△佐藤天彦九段)。三間飛車に急戦で動いた先手がリードを奪っています。ここで▲5九香が「下段の香に力あり」の負けにくい好手でした。△5七桂成を防ぎながら、▲6八金寄も見せた攻防手になっています。実戦も後に▲5三香成と飛び込む手が実現し、非常に良い働きをする駒となりました。佐藤九段が敗れたため、永瀬九段とのプレーオフにもつれ込みました。
写真:常盤秀樹
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段