近藤が初の棋戦優勝 2月上旬の注目対局を格言で振り返る

近藤が初の棋戦優勝 2月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2025年02月26日

 東の俊英、増田康宏八段の初タイトル戦が始まりました。開幕戦は藤井聡太棋王が制しましたが、第2局以降はどうなるでしょうか。朝日杯では近藤誠也八段が優勝。各種棋戦で安定した結果を残していますが、意外にも初の棋戦優勝です。

第74期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局

【第1図は▲7一角まで】

 第1図は第74期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局(▲永瀬拓矢九段△藤井聡太王将)。右玉に対して先手が猛攻を始めたところです。△7一同飛▲同銀不成△5三玉が「中段玉寄せにくし」の対応。7一や5一へ落ちる展開では簡単に寄せられてしまう危険があります。以下▲9一角成△2五飛成▲5六桂△6六桂で攻め合いに持ち込みました。先手にもチャンスのある進行でしたが、広い後手玉を捕まえるのは難しく、藤井王将が制しています。

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写真:銀杏

第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局

【第2図は▲6四歩まで】

 第2図は第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局(▲藤井聡太棋王△増田康宏八段)。増田八段は初のタイトル戦です。角換わり腰掛け銀から難解な中盤戦です。△8七歩が「金は斜めに誘え」の手筋。▲同金なら守備力が弱体化しますし、放置すれば大きな拠点です。

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写真:武蔵

第18回朝日杯将棋オープン戦決勝

【第3図は▲7七同角まで】

 第3図は第18回朝日杯将棋オープン戦決勝(▲井田明宏五段△近藤誠也八段)。どちらが勝っても初の棋戦優勝となる決勝戦です。局面は後手優勢で、先手はと金を引き付けて粘っています。△8七飛成が厳しい一手。▲6六玉と玉自ら受けましたが、△8四桂が「要の金を狙え」の継続手で、先手玉は一気に受けが難しくなりました。以下も押し切って、近藤八段がA級昇級に続き、大きな結果を得ました。

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写真:牛蒡

第83期順位戦B級1組

【第4図は△4九とまで】

 第4図は第83期順位戦B級1組(▲山崎隆之八段△羽生善治九段)。先手が気持ちよく攻めて勝勢となっていますが、現局面は△5九角以下の詰めろになっています。▲7七玉が当然ながら好手。△5五角▲6六角△同角▲同歩△7五歩にさらに▲8八玉と逃げます。「玉の早逃げ八手の得」で、これで先手玉は安泰になり、勝ちが決まりました。降級の決まっていた山崎八段ですが、本局の勝利で九段昇段を決めました。

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写真:胡桃

第36期女流王位戦挑戦者決定リーグ紅組

【第5図は▲1六歩まで】

 第5図は第36期女流王位戦挑戦者決定リーグ紅組(▲千葉涼子女流四段△西山朋佳女流三冠)。次に▲1五歩を見せられて、いよいよ戦いが始まる局面です。△6五歩▲1五歩△同歩▲6五歩△4六歩▲同歩△9五歩▲同歩△8五桂と後手は「開戦は歩の突き捨てから」で激しく戦います。突き捨ては▲1四歩よりも厳しい攻めを繰り出す準備で、以下も端を絡めた猛攻を続け、後手が攻勢を取り続けました。勝った西山女流三冠は4連勝で紅組優勝を決めています。

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写真:八雲

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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