激戦続く竜王戦 11月上旬の注目対局を格言で振り返る

激戦続く竜王戦 11月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2024年11月25日

 竜王戦七番勝負は互いに先手番を取り合って2勝2敗と、拮抗したシリーズになっています。A級順位戦は全勝も全敗も消えて混戦模様になってきました。

第37期竜王戦七番勝負第4局

【第1図は△6二玉まで】

 第1図は第37期竜王戦七番勝負第4局(▲佐々木勇気八段△藤井聡太竜王)。佐々木八段が用意の新構想を見せてリードを奪いました。△6二玉は何とか粘ろうとする姿勢ですが、▲7五桂が「玉は包むように寄せよ」の手堅い勝ち方。8三へも利かして△7一玉と逃げられた時の粘りも許しません。以下は数手で後手の投了となりました。

2024_11early_01.jpg
写真:虹

岡田美術館杯第51期女流名人リーグ

【第2図は▲3五歩まで】

 第2図は岡田美術館杯第51期女流名人リーグ(▲今井絢女流初段△西山朋佳女流三冠)。対抗形の中盤で、どちらの駒の働きが良くなるかで形勢が左右される局面です。△4六歩が筋の一着で「開戦は歩の突き捨てから」です。▲同角と取らせてから△2二飛▲2六銀△4四銀とすれば先手の角の当たりが強くなっていますし、4五へ駒を進める余地も生じています。以下は気持ちよく駒をさばいて後手快勝。西山女流三冠は9戦全勝でリターンマッチに臨みます。

2024_11early_02.jpg
写真:独楽

第83期順位戦A級

【第3図は△7六桂まで】

 第3図は第83期順位戦A級(▲稲葉陽八段△佐藤天彦九段)。振り飛車を多用するようになった両者の対戦は、後手の佐藤九段の四間飛車に。大駒の働きに差を付けて居飛車がリードしました。後手も必死の食い付きですが、▲7七銀が「桂先の銀定跡なり」の自然な対応。△6五銀に▲7六銀と食いちぎるのが好判断で、△同銀に▲6八桂がしっかりした受け。以下は△6五銀に▲9五歩が厳しく、先手が押し切っています。ここまで4連敗の稲葉八段が全勝の佐藤九段を破り、挑戦、残留争いともに混戦です。

2024_11early_03.jpg
写真:飛龍

第50期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメント

【第4図は△7五歩まで】

 第4図は第50期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメント(▲増田康宏八段△澤田真吾七段)。ベスト4が出揃った棋王戦決勝トーナメントは、誰が挑戦してもタイトル戦初登場です。いよいよ戦いが始まる局面で、▲2四歩△同歩▲2三歩△同金▲2五歩が「三歩持ったら継ぎ歩に垂れ歩」を応用した手筋。△同歩と取らせてから▲7五歩と手を戻すことで、△同角には▲2四歩が生じています。後手陣に嫌みを付けて、攻勢を取らせないことに成功しました。

2024_11early_04.jpg
写真:睡蓮

棋士編入試験第3局

【第5図は△8六銀成まで】

 第5図は棋士編入試験第3局(▲上野裕寿四段△西山朋佳女流三冠)。局面は先手勝勢ですが、▲9三歩だと△8五成銀で上部が開くのが気になるところです。▲9一銀が「玉は下段に落とせ」の決め手。△同玉に▲9三歩と垂らせば後手玉は一手一手で、先手玉は銀を一枚渡しても詰みません。

2024_11early_05.jpg
写真:夏芽

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

このライターの記事一覧

高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています