ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2024年08月14日
8月10日(土)に放映された本戦一回戦第2試合のチーム永瀬「川崎家」(永瀬拓矢九段、森内俊之九段、増田康宏八段)と、エントリーチーム「四間の流儀」(大橋貴洸七段、井出隼平五段、冨田誠也五段)の試合を振り返る。前回優勝で今回も優勝候補のチーム永瀬に、エントリーチームがどう挑んでいくか注目された。
開幕から森内の登場はエントリーチームの意表をついたようだ。四間飛車対居飛車銀冠からじりじりとした戦いになり、勝負は玉頭戦へ。うまく厚みでまさる展開に持ち込み、森内がリードする。
【第1図は△6五歩まで】
第1図で時間に追われながらも▲7四歩を決断。△6六歩に▲7六銀と立った手が攻防となり先手が抜け出した。代えて▲6六同銀は8七へ捨てて迫る変化が生じる。以下は粘る後手を押しつぶして森内が開幕戦を制した。
第3局まで互いに一人ずつ出場し、チーム永瀬が3連勝と一気のリード。さらに第4局のリーダー対決も制し、4連勝であっという間に土俵際へ追い込んだ。
4連敗と後のなくなったエントリーチームはじゃんけんで出場者を決める。結果は大橋が連勝し、第4局に続く連投となった。
【第2図は▲2四歩まで】
相掛かりから大橋が押し気味の将棋だったが、最終盤にドラマがあった。第2図の▲2四歩に△同玉なら詰みはなく、後手の勝ち筋だったようだが、実戦は△3二玉と逃げたので事件発生。対しては▲4四桂なら後手玉は詰み筋に入っていた。△同銀なら▲2二飛だし、玉を逃げるのも5二への利きがあるため、豊富な持駒を生かして捕まっている。だが、時間切迫の中で実戦は▲7二飛だったので△5二銀打で詰まず、再逆転となった。エントリーチームが一矢報いて第6局へ。
永瀬は偶数局の登場と、すべて後手番を請け負っている。四間飛車から角交換となる出だしで、井出が押している将棋だったが、永瀬がうまく混戦に持ち込んだ。
【第3図は▲1六同香まで】
第3図で△1五歩も詰めろで指してみたくなるが、▲1八歩で見えない形を作られると逆転する。ここで△1八金が鋭い。▲同玉△1七歩▲同玉と玉を引っ張り出して△1五銀が詰めろだ。この踏み込みには控室の増田も「強い、強すぎる!」と感嘆。▲1五同香は△同香から詰むので▲2九金と逃げ道を作ったが、△3九銀が退路封鎖の手筋の一着で、先手玉は寄っている。リーダーの永瀬は後手番で3連勝と、頼もしいところを見せてチームを勝利に導いた。
チーム永瀬が5勝1敗と大勝。エントリーチームに対して貫録を見せた。準決勝のチーム藤井戦は優勝候補同士の大一番だ。
【総合成績】
第1局 森内○─●井出
第2局 永瀬○─●大橋
第3局 増田○─●冨田
第4局 永瀬○─●大橋
第5局 森内●─○大橋
第6局 永瀬○─●井出
【個人成績】
永瀬九段 3─0
増田八段 1─0
森内九段 1─1
大橋七段 1─2
井出五段 0─2
冨田五段 0─1
ライター渡部壮大