ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2024年05月20日
西山朋佳女王への挑戦権を決める第17期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦は北村桂香女流二段と大島綾華女流二段による、互いに初挑戦を掛けたフレッシュな組み合わせとなった。 横歩取りの激しい戦いから、技の掛け合いを制して大島が抜け出す。北村も受けに回るが、なかなか攻めを余すには至らない。
【第1図は▲5六歩まで】
後手の攻め駒は少ないものの、△4五桂と跳ねて攻めがつながっている。以下▲6八銀に△8八飛▲6四角△5七歩▲6七玉△6九飛と飛車を打ち込んでいって後手優勢がはっきりした。以下は数手で押し切り、21歳の大島が初の挑戦権を獲得。
写真:牛蒡
第1局は神奈川県秦野市「元湯 陣屋」にて。西山の先手三間飛車に大島は急戦で動いていく。左辺でのやり取りで振り飛車がペースをつかんだ。
【第2図は△7九飛まで】
飛車金両取りだが、図で▲7七角打がピッタリの切り返し。対する△6六歩も手筋だが、▲7三歩成△6七歩成▲1一角成と攻め駒を増やしていって先手優勢がはっきりした。以下も手堅く攻めをつなぎ、西山が開幕戦を快勝。
写真:玉響
第2局は山梨県甲府市「常盤ホテル」にて。西山の角交換振り飛車から持久戦に。大島が中央の押し合いを制して優勢となるが、時間切迫から徐々に形勢が怪しくなっていく。
【第3図は▲8七銀まで】
ここで△6五角が急所の角打ち。先手玉をにらみながら4三の銀にも当てている。実戦は▲5二銀不成△同銀▲同飛成としたが△5一歩が受けの好手で、▲同竜とさせた形が後手玉に詰めろを掛けにくく、△6七歩成が入って後手が逆転に成功した。勝負術を見せた西山が2連勝。
写真:文
第3局は神奈川県藤沢市「時宗総本山 遊行寺」にて。西山は三間飛車から珍しく穴熊へ。大島も銀冠から穴熊へ入り、相穴熊となった。西山が玉頭からの動きでポイントをあげてペースをつかむ。
【第4図は△1六歩まで】
形勢はと金と駒の働き、玉の堅さの差で先手優勢だ。実戦は▲2六金と手厚く投入。もったいないようでも馬を追い払えば後手陣は薄さが目立つ。以下△5八馬▲3四銀△6七馬に▲2三銀成△同金▲3四銀と絡んで、後手は受け切れない格好だ。以下も押し切って西山の快勝。3連勝で防衛を決めた。
写真:牛蒡
西山は7連覇を達成。三冠を守り、通算16期目のタイトル獲得となった。大島は第2局の逆転負けが悔やまれる内容でタイトル戦初勝利はならず。また大舞台でさらなる成長した姿を見せてくれることに期待しよう。
ライター渡部壮大