ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2024年05月07日
叡王戦は挑戦者の伊藤匠七段が待望の初勝利をあげてタイに。棋聖戦では山崎隆之八段が挑戦権を獲得。15年ぶり2回目のタイトル戦登場です。
【第1図は△7一玉まで】
第1図は第82期名人戦七番勝負第2局(▲豊島将之九段△藤井聡太名人)。後手が優勢に進めていた将棋でしたが、先手の粘り強い指し回しで形勢は混沌。互いに時間切迫の中で激戦の終盤となりました。図から▲5三桂△4五桂で「要の金を狙え」の寄せ合いです。金をはがす形を作っておけば、条件次第でいきなり詰みや必至も狙えます。この後も際どい終盤が続きましたが、最後は藤井名人が抜け出して2連勝としています。
写真:玉響
【第2図は△8六歩まで】
第2図は第9期叡王戦五番勝負第2局(▲伊藤匠七段△藤井聡太叡王)。藤井叡王が意表の△3三金型早繰り銀を採用し、積極的に動いていきました。しかし伊藤七段もうまく切り返し、ここから▲5五銀△3六飛▲4七角成が「馬は自陣に引け」の手厚い指し回し。こうなると馬の存在が大きく、先手の負けにくい形です。この馬は最後まで攻防に働き、伊藤七段がタイトル戦、そして対藤井戦の初白星をあげました。
写真:銀杏
【第3図は▲5三歩まで】
第3図は第17期マイナビ女子オープン五番勝負第2局(▲大島綾華女流二段△西山朋佳女王)。じりじりとした中盤戦をうまく先手が抜け出して優位をつかんだ局面です。後手は大駒が負担になっておりどう勝負するかですが、△4四歩が「大駒は近付けて受けよ」の手筋。▲同角としてから△5三銀が角に当たり、▲2二角成△同角と大駒をさばいていきます。形勢は先手優勢ですが、終盤で一瞬のチャンスをとらえて後手が逆転勝ちを収めました。
写真:文
【第4図は△4七桂まで】
第4図は第35期女流王位戦五番勝負第1局(▲福間香奈女流王位△加藤桃子女流四段)。両者得意の居飛車対中飛車の銀対抗の持久戦となりました。△4七桂は飛車金両取りの厳しい桂で、飛車を逃げると△3九桂成から快調に後手の攻めが続きます。実戦は「両取り逃げるべからず」で▲3四歩と攻め合いました。△3九桂成なら飛車を逃げる一手を得できますし、△5九桂成も先手は堅陣が残って攻めに専念できます。△6七銀成としましたが▲3三歩成△同角▲2五歩で、先手の攻勢が続く展開です。
写真:翔
【第5図は▲8一竜まで】
第5図は第95期ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦(▲佐藤天彦九段△山崎隆之八段)。先手が押していた将棋でしたが、後手が逆転に成功しました。次の▲3一飛が厳しそうですが、構わず△4九香成と決めにいきます。▲3一飛に△4三玉と上がった形が「中段玉寄せにくし」で、後手玉は寄らない格好ではっきりしました。山崎八段は2009年の王座戦五番勝負以来のタイトル挑戦です。
写真:紋蛇
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段