ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2023年11月08日
2年連続同じカードでフルセットとなった白玲戦七番勝負は、西山女流三冠が昨年の借りを返して奪取となりました。また、同門対決となった新人王戦は、デビュー直後の上野裕寿四段が優勝を飾っています
【第1図は▲3六飛まで】
第1図は第36期竜王戦七番勝負第3局(▲伊藤匠七段△藤井聡太竜王)。相掛かりから互いに銀を繰り出す攻め合いです。次に▲3二飛成があるので何か受ける必要があります。△3四歩が「大駒は近付けて受けよ」の手筋。放置するのは△2三歩があるので▲3四同飛と取りましたが、△3三銀と反発力のある受けが実現しました。以下は際どい攻防を切り抜けて藤井竜王が勝ち、七番勝負を3連勝としています。
写真:玉響
【第2図は△8三歩まで】
第2図はヒューリック杯第3期白玲戦七番勝負第7局(▲西山朋佳女流三冠△里見香奈白玲)。2年連続のフルセットとなった白玲戦七番勝負。最終局は相振り飛車からうまく手を作って先手優勢となりました。▲5四飛と銀を取るのは緩いと見て、▲8三同桂成△同桂▲9一銀と「玉は下段に落とせ」の寄せで決めにいきました。△同玉に▲9三歩△8二玉▲9二飛△7一玉▲8三飛成と進み、後手玉は一手一手です。挑戦者が勝って奪取し、両者で四冠を分け合う形になりました。
写真:八雲
【第3図は▲2九飛まで】
第3図は霧島酒造杯第45期女流王将戦三番勝負第2局(▲香川愛生女流四段△西山朋佳女流王将)。4筋で歩がぶつかり、これから戦いが始まる局面です。実戦の△8五歩▲2四歩が「開戦は歩の突き捨てから」で、歩をぶつけて駒をスムーズにさばく狙いです。以下の応酬で玉頭から手を作り、西山女流王将が制勝。2連勝で防衛となりました。
写真:囲碁将棋チャンネル
【第4図は△3二金まで】
第4図はリコー杯第13期女流王座戦五番勝負第1局(▲里見香奈女流王座△加藤桃子女流四段)。後手が押している将棋でしたが先手もうまく粘って激戦になっています。▲5八玉が「玉の早逃げ八手の得」で、△3九竜と歩を取らせて▲3三歩△同桂▲3四歩と攻めることに成功しました。以下△3四同金▲1四歩△8八歩▲同飛△4八成香に▲6七玉が再度の早逃げで先手玉は寄りません。
写真:紋蛇
【第5図は▲2四歩まで】
第5図は第54期新人王戦決勝三番勝負第3局(▲上野裕寿四段△藤本渚四段)。同門対決は最終第3局へともつれ込みました。激戦の終盤で、▲2四歩と突いたところです。普通は△同歩と取るところですが、すでに激しい流れになっているため、△6五歩と桂を取りました。「開戦は歩の突き捨てから」というのは、局面が激しくなるとこのように手抜かれる可能性があるからです。以下は▲3七桂△4四飛▲2三歩成△3一金と進み激戦が続きましたが、最後にドラマがあって先手が制しています。上野四段はデビューから最短での棋戦優勝となりました。
写真:夏芽
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段