ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2023年08月01日
藤井聡太棋聖が3勝1敗で防衛を果たし4連覇。来期は早くも永世棋聖を懸けたシリーズになります。竜王戦では伊藤匠六段が挑戦者決定三番勝負に進出しています。
【第1図は△8六歩まで】
第1図は第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第4局(▲佐々木大地七段△藤井聡太棋聖)。次の△8七歩成を喫してはいけないので何か処置をする必要がありますが、▲8四歩が「大駒は近付けて受けよ」の手筋。△同飛▲8五歩△同飛▲9六銀と飛車取りの先手で8七の地点を受けることができました。後手も△2四香と切り返し、際どい終盤戦です。この後は先手にもチャンスがあったようですが、最終的には後手が制し、藤井棋聖が3勝1敗で防衛しました。
写真:八雲
【第2図は△4三馬まで】
第2図は伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦七番勝負第3局(▲藤井聡太王位△佐々木大地七段)。角換わりから先手が押していましたが、後手も粘り強い指し回しで崩れません。しかし第2図の△4三馬は危険で、先手から決め手がありました。▲4四香△同馬に▲1一角が痛打。「△2一金と引くと▲3二歩成で4四の馬を抜かれます。△2一香も同様に▲3二歩成。「角筋は受けにくし」は玉や飛車を狙った際に使われることが多いですが、本局のように馬で使われることは珍しいと言えます。▲1一角で後手はしびれており、以下は先手の寄せを見るばかりになりました。
写真:八雲
【第3図は△4六同角まで】
第3図は大成建設杯第5期清麗戦五番勝負第2局(▲西山朋佳女流三冠△里見香奈清麗)。相振り飛車の攻め合いから迎えた終盤戦。▲7三桂成は△同銀で後手陣が安定してしまいます。▲5三桂成が「金は斜めに誘え」の手筋で、△同金と取らせてから▲7四桂が厳しい寄せ。▲6二飛以下の詰めろで、△7一銀打と受けましたが▲4二飛△5二歩▲5四歩と迫って先手の勝ち筋です。
写真:夏芽
【第4図は△7六桂まで】
第4図は第36期竜王戦決勝トーナメント(▲伊藤匠六段△稲葉陽八段)相掛かりから難しい戦いが続いていましたが、先手にチャンスが来た局面です。▲3三桂△1二銀▲7六玉△3七歩成▲1四桂が「玉は包むように寄せよ」で、2枚の桂でたちまち後手玉は寄り筋に入りました。伊藤六段は前期稲葉八段に敗れましたが、今期はリベンジを果たし挑戦者決定三番勝負では永瀬拓矢王座に挑みます。
写真:武蔵
【第5図は△2二飛まで】
第5図は第82期順位戦B級1組(▲羽生善治九段△佐藤康光九段)。168回目のライバル対決です。これから攻め合いに入ることが予想される局面ですが、▲9五歩と「開戦は歩の突き捨てから」と、9筋に手を付けておきます。穴熊攻略に有効な端攻めですが、端を突き合っている形だと激しい流れになってからでは手抜かれる可能性もあります。今ならさすがに△9五同歩の一手で、いつでも▲9三歩の筋で後手玉が見える形になりました。
写真:名人戦棋譜速報
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段