藤井、佐々木の初挑戦はね返す

藤井、佐々木の初挑戦はね返す

ライター: 渡部壮大  更新: 2023年07月21日

 藤井聡太棋聖に佐々木大地七段が挑戦した第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負。藤井は初タイトルから4連覇目を狙い、佐々木は初のタイトル戦登場だ。佐々木は王位戦七番勝負でも挑戦権を獲得し、藤井とはダブルタイトル戦となる。

第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局

 第1局はベトナムの「ダナン三日月」にて。新型コロナウイルスの流行以降では初の海外対局だ。当然ながら藤井も海外対局は初。藤井が先手となり、角換わり腰掛け銀の激しい展開に。藤井が攻め、佐々木が反撃して際どい終盤戦になった。

【第1図は△8六歩まで】

 △8六歩は攻め筋を広げる手だが、手抜いて▲1七角が厳しい。△3三飛▲4四角△8七歩成に▲3三角成と取る。壁の駒を働かせるようだが、飛車を持てば▲8二飛~▲8七飛成で合駒を使わせながら先手玉が安全になる。実戦もその順となり、先手の勝ち筋となった。

94kisei_01.jpg
写真:牛蒡

第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局

 第2局は兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」にて。佐々木得意の相掛かりから駒得してリードを奪うが、藤井の猛攻の前に形勢逆転。そのまま藤井が制するかに見えたが、最終盤にドラマが待っていた。

【第2図は▲2五桂まで】

 実戦は△7六歩▲8六玉に△7八竜とし、▲同銀に△7五銀打以下の詰みを狙ったが、▲5五角がピッタリの返し技。△同銀と取らせてから▲7八銀と手を戻せば今度は先手玉が詰まず、後手玉には▲3二飛の詰めろが掛かり速度が逆転した。終盤のチャンスを逃さなかった佐々木がタイトル戦で初勝利をあげた。

94kisei_02.jpg
写真:翔

第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局

 第3局は静岡県沼津市「沼津御用邸東附属邸第1学問所」にて。角換わりから後手の佐々木は右玉へ。藤井は新構想の攻めを見せてペースをつかむ。

【第3図は△7五歩まで】

 手の広いところだが、相手の攻めを堂々と受け止めにいく▲7五同歩が強い。△8五桂▲同銀に△7六桂があるが、▲6七玉△8八歩▲2九飛△8五飛▲7六玉△8三飛▲8五歩△7三銀▲8六玉と巧みな玉さばきで後手の攻めを受け止めている。この後は相手が暴れるのに乗じて玉を5八まで逃げ越して、手の攻めを完封してしまった。藤井が快勝で2勝1敗。

94kisei_03.jpg
写真:将棋世界

第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第4局

 第4局は新潟市岩室温泉「高志の宿 高島屋」にて。相掛かりから先手は1筋、後手は9筋と互いに端を攻め合う展開に。後手の攻めの方が厳しく、藤井がペースをつかんだ。

【第4図は▲9六銀まで】

 飛車をどこに逃げるかの局面に見えたが、強く△2四香と飛車に当て返した。▲8五銀に△2六香と思いきや、△8七歩成が難しいタイミングの利かし。実戦は▲5五桂△5四銀▲3四香△7八とで後手の一手勝ちコースに入った。絶妙の順に見えたが、△8七歩成は危険で、▲3四香のところで▲7三香が幻の妙手。その手を指せば際どいながら、先手の勝ち筋だったようだ。

 藤井が3勝1敗で佐々木の初挑戦をはね返した。第4局は20歳最後の日で、自身の誕生日に花を添える防衛となった。若い藤井だが、今期で4連覇を果たし、来期の防衛戦は永世棋聖が掛かるシリーズとなる。

94kisei_04.jpg
写真:八雲

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

このライターの記事一覧

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています