ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2023年06月22日
里見香奈女流王位に伊藤沙恵女流三段が挑戦した第34期女流王位戦五番勝負。女流王位戦では第28期以来、2度目の対戦となる。
第1局は兵庫県姫路市「夢乃井」にて。伊藤の居飛車に里見は向かい飛車。伊藤は銀冠から穴熊に組み替えて里見の仕掛けを迎え撃った。
【第1図は△4五馬まで】
穴熊の遠さをキープしたまま攻め合いになり、図は先手良し。▲6一竜が確実な攻めとなった。△6二歩と受けたが▲6四桂が厳しく、金をすべてはがす形になって先手が攻防ともに手段が多い。以下は後手も徹底的に粘ったものの先手が押し切る。伊藤が先勝。
写真:翔
第2局は北海道札幌市「京王プラザホテル札幌」にて。相振り飛車模様から里見が居飛車に戻す戦型となった。
【第2図は△2四飛まで】
先手の狭い飛車を捕まえきれるかどうかが局面の焦点だが、▲2六歩でさばきが止まらない。△同歩も△3四歩も▲2五歩で良い。実戦は△7五歩とアヤを求めにいったが、▲2五歩△同桂▲同飛△同飛▲同桂△7六歩に▲2一飛が厳しく先手優勢だ。以下は里見が押し切って1勝1敗に。
写真:八雲
第3局は福岡県飯塚市「麻生大浦荘」にて。第1局に続いて戦型は伊藤の居飛車に対し里見の向かい飛車。今度は穴熊に潜らせる前に里見が動いていく。
【第3図は▲5九角まで】
後手の大さばきに対し、先手は大駒をすべて自陣に手放して攻めを止めに掛かっている。しかしここで△2六歩が好手となった。次に△2七銀で飛車を詰まされてしまうので▲同飛だが、△5九飛成▲同角△3五角▲4六飛打△4五歩で技あり。以下▲2一飛成△4六歩▲3六歩に△2六飛と、後手にばかり好手が続いて形勢に差がついた。こうなると陣形の差が大きく、後手の快勝となった。里見が逆転の2勝目。
写真:虹
第4局は徳島県徳島市「JRホテルクレメント徳島」にて。第2局同様、相振り飛車の出だしから里見が居飛車に戻す展開に。
【第4図は△7四歩まで】
里見ペースで進んでいたが、伊藤も粘って簡単には崩れない。第4図で金が逃げてくれれば後手陣も安定するが、▲7三歩が鋭い踏み込み。△同桂に▲8一銀△6二金▲5四歩△4二銀▲7二歩と絡み、ギリギリの寄せながらつながっている。△6二金では△7一金の方が粘りは利いたようだ。以下は後手の粘りを振り切って先手が制した。
写真:武蔵
里見は3勝1敗で女流王位防衛。5連覇で通算9期目の獲得となった。西山朋佳女流三冠とともに、二強は厚い壁として立ちはだかっている。
ライター渡部壮大