藤井が史上最年少名人に 6月上旬の注目対局を格言で振り返る

藤井が史上最年少名人に 6月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2023年06月20日

 名人戦は挑戦者の藤井聡太竜王が奪取。史上最年少名人の記録を更新するとともに、七冠となりました。また、白玲戦では2年連続、里見─西山の頂上決定戦が決まっています。

第81期名人戦七番勝負第5局

【第1図は▲3四飛まで】

 第1図は第81期名人戦七番勝負第5局(▲渡辺明名人△藤井聡太竜王)。先手が押している将棋でしたが、△6六角が迫力のある勝負手です。長考の末に「終盤は駒の損得よりも速度」と▲2三桂△2二玉▲3一銀と寄せにいきましたが、△同金▲同桂成△3三歩と受けられてみると、寄せ切るには至らず、後手の反撃が厳しく残りました。第1図では平凡に▲6六同金が良かったようです。藤井竜王は本局を逆転で制し、4勝1敗で名人を奪取となりました。

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写真:中野伴水

第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局

【第2図は▲3七金まで】

 第2図は第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局(▲藤井聡太棋聖△佐々木大地七段)。タイトル戦初登場の佐々木七段。本局はベトナムにて行われました。△4四桂が「桂は控えて打て」で、▲3六金を防ぎながら、5六の地点にも数を足しています。実戦も▲6二金に△5六歩が迫力のある攻めで、激戦になりました。

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写真:牛蒡

第34期女流王位戦五番勝負第4局

【第3図は△4二銀まで】

 第3図は第34期女流王位戦五番勝負第4局(▲里見香奈女流王位△伊藤沙恵女流四段)。先手が押し気味に進めていましたが、後手も粘って簡単には倒れません。しかしここで▲7二歩が「一歩千金」の決め手。7一の地点を受けるには△5一銀しかありませんが、▲5三歩成△同金▲4七竜△同竜▲7一角で綺麗に技が掛かりました。本局を制した里見女流王位が3勝1敗で防衛を果たし、女流五冠を堅持しています。

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写真:武蔵

ヒューリック杯第3期女流順位戦A級8回戦

【第4図は△3五歩まで】

 第4図はヒューリック杯第3期女流順位戦A級8回戦(▲西山朋佳女流三冠△伊藤沙恵女流四段)。挑戦権争いの大一番です。先手が押している将棋で、どうリードを広げるか。▲5九歩が「金底の歩岩よりも堅し」でした。通常は飛車に対して使われる底歩ですが、この場合は馬に対して効果を発揮しました。5八の金にヒモをつけて、将来の△6六歩のような攻めをあらかじめ緩和しています。以下は後手の徹底抗戦にあって、あわや逆転という局面にもなりましたが、最後は先手が制しました。8回戦で2敗勢が消え、1敗が西山女流三冠一人となったため、最終戦を待たずして挑戦権獲得が決まっています。里見香奈白玲へのリターンマッチとなりました。

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写真:紋蛇

第82期順位戦A級1回戦

【第5図は△8二玉まで】

 第5図は第82期順位戦A級1回戦(▲豊島将之九段△稲葉陽八段)。A級順位戦の開幕戦です。図は先手勝勢で、▲7二銀が「玉の腹から銀を打て」の決め手。△7五歩は▲7四歩があって受けがありません。実戦も▲7二銀までで後手の投了となりました。

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写真:名人戦棋譜速報

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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