ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2023年04月06日
白熱した藤井聡太王将と羽生善治九段の王将戦七番勝負は藤井王将が4勝2敗で防衛を果たしました。そして名人挑戦権も得て、史上最年少名人の記録にも挑みます。
【第1図は▲7五歩まで】
第1図は第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第4局(▲渡辺明棋王△藤井聡太竜王)。直前の△7五桂が妙手で、後手が一気に勝ちに近付いた局面です。もう難しい手は必要なく、△7六銀▲6七歩△6八金と「寄せは俗手で」と迫って受けなしとなり、先手の投了となりました。以下は▲6八同金なら△8七銀打から先手玉は即詰みです。3勝1敗で藤井竜王が棋王を奪取し、ついに六冠となりました。
写真:将棋世界
【第2図は▲6五同歩まで】
第2図は第72回NHK杯将棋トーナメント決勝(▲佐々木勇気八段△藤井聡太竜王)。初優勝を懸けた決勝戦です。うまく後手が局面を動かし、ここで△9三角が「遠見の角に好手あり」でした。6六~5七~4八をにらんだ角で、▲6六桂と埋めるのは仕方ありませんが桂頭が狙われる形で、△8五歩と合わせて後手の攻めは止まりません。最後はピッタリ一手勝ちを収めて、藤井竜王が銀河戦、日本シリーズ、朝日杯に続き本年度4つめの棋戦優勝を飾りました。
写真:日本将棋連盟
【第3図は▲6九金まで】
第3図は第8期叡王戦挑戦者決定戦(▲永瀬拓矢王座△菅井竜也八段)。ねじり合いとなった挑戦者決定戦は振り飛車が抜け出しました。△5六歩が「玉は包むように寄せよ」の確実な手で、△8八角からの詰めろになっています。▲4六角にも△4五金と確実に攻めて、後手の勝ちが決まりました。菅井八段は久しぶりのタイトル戦登場です。
写真:銀杏
【第4図は▲3八飛まで】
第4図は第34期女流王位戦挑戦者決定戦(▲甲斐智美女流五段△伊藤沙恵女流三段)。△4四銀と飛車に当てて、▲3八飛と引かせたところです。△2七角が継続の手で、▲2八飛に△5四角成が「馬は自陣に引け」で、後手陣が引き締まりました。先手の持ち角や歩得も大きく、形勢はいい勝負です。以下は激戦が続きましたが、最後は後手が手厚く制し、伊藤女流三段が挑戦権を獲得しました。女流王位4期の甲斐女流五段は今期で引退するため、最後の女流王位戦の対局となりました。
写真:牛蒡
【第5図は△9九香成まで】
第5図は第94期ヒューリック杯棋聖戦決勝トーナメント(▲佐々木大地七段△糸谷哲郎八段)。ベスト4を懸けた一局です。▲3六香が痛打でした(他の打ち場所もあったようです)。「歩切れの香は角以上」の厳しい攻めで、△8九成香▲7八玉△6七銀▲8九玉△6九角と非常手段で3六の香を抜きにいきましたが先手玉が安全になり、先手は優勢をキープしています。
写真:夏芽
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段