藤井、史上二人目の六冠へ

藤井、史上二人目の六冠へ

ライター: 渡部壮大  更新: 2023年03月24日

 渡辺明棋王に藤井聡太竜王が挑戦した第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負。10連覇中の渡辺はここに来て最強の挑戦者を迎えた。タイトル戦での連勝記録を伸ばす藤井は六冠目を目指す戦いとなる。

第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局

 第1局は長野県長野市「長野ホテル犀北館」にて。角換わり腰掛け銀の攻め合いから、藤井がうまい攻めを見せて抜け出した。

【第1図は△4二同玉まで】

 ここから▲8六金△6六歩▲7五金が力強い反撃。自玉頭に拠点が残って怖いようでも、先手玉はすぐには詰まない。以下△7五同馬▲同歩△7三金に▲4一角△5二玉▲4二金と追い掛け、6一の飛を攻めに使わせないようにして自玉の余裕を作ることに成功した。後手も中段玉で粘るものの、しっかりと捕まえて先手が制勝。藤井が好スタートを切った。

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写真:中野伴水

第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局

 第2局は石川県金沢市「北國新聞会館」にて。先後を入れ替えて再び角換わりの激しい展開に。打ち込んだ飛車で敵陣を荒らした藤井が優位に立った。

【第2図は▲1一飛まで】

 △2四角打が先手玉を射程に入れたレーザービームだった。▲5八玉と角筋をかわしたが、△3六歩▲4七歩に△4五歩の攻めが間に合っている。最後は二枚の角を切り飛ばす形で先手玉を即詰みに打ち取った。藤井が2連勝で奪取まであと1勝と迫る。

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写真:武蔵

第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局

 第3局は新潟県新潟市「新潟グランドホテル」にて。またも角換わりとなるが、今度は渡辺がペースをつかんで抜け出す。勝勢に近付いた局面もあったが、藤井の粘りに手を焼き、手数が伸びていく。ついに形勢がひっくり返り、大逆転で奪取かとなったのが第3図だ。

【第3図は△1七同桂成まで】

 ▲2四馬と切って後手玉は即詰みになっている。実戦は△同玉に▲2六飛だったが、△2五香▲同飛△同玉▲3七桂△1六玉▲2五銀△1五玉▲1六金△同成桂▲同銀△同玉▲1九香△2六玉と進んで、▲3八桂は△2七玉で打ち歩詰めの形で逃れている。▲2六飛では▲2五歩と打っていれば後手玉は詰んでいた。藤井が詰みを逃すというドラマで渡辺が1勝を返す。6月から続いていた藤井の先手番連勝記録もついにストップ。

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写真:将棋世界

第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第4局

 第4局は栃木県日光市「日光きぬ川スパホテル三日月」にて。やはりの角換わり腰掛け銀から渡辺が研究手を繰り出す。難解な形勢ながら、藤井が少しずつペースをつかんだ。

【第4図は▲7七桂まで】

 図は▲7七桂と合駒をしたところ。ここは銀合をする手も考えられたが、桂合なので手番が後手だ。△7五桂が鋭い攻め。攻めの拠点になるので放置するわけにはいかないが、取るのも7六に空間が生じる。実戦は▲3一銀△1二玉と決めてから▲7五歩と手を戻したが、△7六銀とかぶせて先手玉は粘るのが難しい形になった。

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写真:将棋世界

 五番勝負を藤井が3勝1敗で制し、棋王を奪取。渡辺の連覇は10で止まった。藤井は羽生善治九段以来、史上二人目の六冠。両者は4月に開幕する名人戦七番勝負でも激突するが、こちらも白熱した勝負を期待できそうだ。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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